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2008年 09月 04日

大砲と祈りと…イエメン史6

 北イエメンのイマーム・ヤヒヤは国を鎖国状態に置くことで支配を確立したが、1948年反対派によって暗殺される。しかし、ヤヒヤの息子イマーム・アフマドがすぐにその権力を引き継ぎ専制政治は継続した。かれは、国を徐々に解放。1950年代にはイギリス・アメリカ・エジプト・ソ連などと外交関係を結んだ。
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                 ↑1962年クーデターで、イエメン門にいまだに残る砲撃のあと

1962年、イマーム・アフマドがなくなると軍人グループが革命(軍事クーデター)を起こし、ついにザイド朝が崩壊した。
 そしてイエメン・アラブ共和国が成立するが、イマーム・アフマドの息子ムハンマド・アルバトルはイエメン北部の山岳地帯にこもって抵抗した。イエメン・アラブ共和国はエジプト・ソ連の援助を受け、アルバトルはサウジアラビアやイギリスの援助を受けた。こうして、北イエメン内戦が勃発した
 1970年、8年続いた内戦は共和国の勝利で終結し、サウジアラビアもこの年に共和国を承認した。

◆それに先立ち、アデンでは北のイエメン・アラブ成立後から対イギリス植民地抗争としてのゲリラ戦が始まった。
 
◆南イエメンの独立
 イギリスは独立させることを約束し、イギリス指導の下の独立をはかったが、2つの勢力に分裂。社会主義系NLFとエジプトの支持を受けたFLOSYが争ったが、イギリス軍撤退後、NLFが支配し、1967年アラブ社会ではじめての社会主義国としてのイエメン、後にイエメン人民民主共和国へ改称した。ソ連の援助で社会主義を推し進めたが政情は安定しなかった。

◆南北イエメンの国境を確認してみよう。
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  北イエメンでは再三にわたるクーデターが続く。南イエメンでは経済状態が破綻に直面していた。1970年代には2度にわたる南北間の内戦を経験した。この国境を挟んで、厳しい闘いの日々が続いたのである

◆南イエメンの首脳陣ははソ連の崩壊をきっかけに北イエメンとの合併を決意する。それとともに雪解けムードが生まれた。
 1990年ベルリンの壁が崩壊すると同時に南北イエメンは、南北統一を果たし現在のイエメン共和国となった。

◆南北の派閥争いが深刻化し、1994年に旧南側勢力が再独立を求め、イエメン内戦が勃発。だが、南側勢力は国際的な支持を得られず、約2ヶ月で鎮圧される。
 それ以後は大統領の選出、海外との交流などすすんでいく。

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 首都サナアの旧市街をぐるりと城壁が取り囲む中世と変わらぬ都市である。この城壁を挟んで1962年の革命も、南北の内乱もあった。しかし、今では城壁が不要とされ、都市の拡大とともに城壁や門の多くが取り払われた。
 その中でバーブ・アル・イエメン(イエメン門)はいまだ、中世の香りを残す門として唯一残された門である。ここの門扉の一部に冒頭に掲載した大砲のあとが残されている。 この砲撃の後をそのままにしておくことで人々は、平和であること、一つの国であることの意味を思い巡らすのかもしれない。

◎こうして1つのイエメンとしてイエメン共和国は安定していった。
 
 ここまでの長い南北分断の歴史・植民地支配の歴史に苦しんできた。内戦についての火種は消えたかに見えるが、もとの国境の周辺はいまだ警察が旅行者の車に付き添うことがあるし、
そればかりか歴史を背負った政府軍と反政府組織の争いはまだ一部の地域に残っている。

 イエメン人の気持ちに反して、外からのアルカイダの拠点のひとつが山岳地帯にあるとも言われている(真相は不明。)
 隣のサウジアラビアとのあまりにも大きな経済格差に愕然としている出稼ぎイエメン人の姿が見えてきている。出稼ぎによる家族制度やコミュニティーの崩壊もこれから問題になってくるであろう。
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 イエメンの素朴な人々は今、何を祈っているのだろうか。
            <イエメン略史*完>

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by miriyun | 2008-09-04 10:17 | Comments(2)
Commented by yumiyane at 2008-09-06 21:37
アザーンを聞きながら、miriyunさんのブログを見るのは不思議な臨場感が出てきます。
まだ最初の何ヶ月分しか読めていませんが、イエメンにいらっしゃるきっかけはどんなことだったのでしょうか。
Commented by miriyun at 2008-09-07 18:01
yumiyaneさん、最初から読んでいただいているんですか、うわ~っ、感激です。中にはこの文のように長い歴史まであるのに。
 アザーンを聞きながら、なるほど、ものすごく立派なBGMになりますね。
 イエメンはですね、人がまだまだ素朴で観光化されすぎていないのが魅力でいきました。そしてその通りでしたし、建物は予想以上におもしろかったです。


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