写真でイスラーム  

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2008年 08月 03日

東西の旗・雑感

◆旗といってもさまざまあるがここでは軍旗・またはかって軍旗であった旗について書こう。

1、イスラーム地域の旗
 イスラーム地域では緑・または赤に星と月が付いているか、またはコーランのことばを書いたものがほとんどだった。
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      ↑サウジアラビアの国旗  これは緑の地色にシャハーダを刺繍で描いた豪華な旗
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 コンスタンティノープルで守るビザンチンの旗が城壁の上にあり、攻めるオスマンの旗は色はさまざまだが必ず月が描かれている。              
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 イエメン、サユーンの博物館に残された旗。時代は不明。

 また、キリスト教の世界では十字軍のところから何にでも一応十字架をつけるようになっていた。各家をあらわすには紋章があり、紋章も家同士のかかわりの中でどんどん文様が付け加えられたりしながら増えていった。


2、日本の旗
 日本でも宗教性があるものとしては南無妙法蓮華経と書いた旗を持った一向一揆とか、毘沙門天を信仰した上杉謙信の毘の旗もある。
 
◆源平の合戦では赤と白だけの旗でわかりやすかったが、しだいに紛らわしくなっていった。
 
 例えば、佐竹氏もれっきとした源氏であったので白旗を使う。ところが源頼朝が奥州征伐に出かけそれに参陣した常陸の国の佐竹氏も白旗であった。それにたいして、源氏嫡流家との区別が必要なので、頼朝から月を丸く大きく書いた扇をあたえられ、これを軍旗につけるよう指示される。
 以後、佐竹の家をあらわす「五本骨に月丸の扇」が使われ続けたのである。

 ★イスラームではなぜか、三日月よりも細い月が使われ、日本では月というとたいてい満月である。これについて何故そうなのか、以前から疑問に思っているのだが、解決に至っていない点である。何かご存知のことがありましたらお教えいただきたい。

 ではどのような旗を用いたのであろうか。
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このように色はさまざまになるが共通しているのは頼朝に授けられたとされる扇に月である。
佐竹氏は20万石のところに50万石の所帯で乗り込んだので台所は初期は苦しかったというが、実勢40万石の財力と金山の発見もあって、ほどほど裕福でもあったらしい。

 そのためか旗も見事なものが残っている。金箔の使い方でこんなにすごい旗は見たことがない。
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                                 ↑「佐竹氏の旌旗(せいき)」 
 『五本骨に月丸』の扇が3枚ずつ、3段にわたって計九枚縫い付けられている。普通は染めであるのに、ここでは縫い付けている。くっきりと頑固なまでに自己主張している。これは何なのか?
 これは皮革でこのような扇形を作製し、そこに金を塗ったものであった。しかもその金が慶長の金を使ったというから純度の高い上等の金による金彩であった。 

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 しわ状のものはかすかにあっても大きな傷もなく、金彩の輝きも強く戦場でも威風を放ったであろうと想像される。

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 旗に竿を通すための輪になった部分を乳という。通常綿布などでつくるが、佐竹ではこれも皮革に金箔で仕上げた金皮となっている。
 そして、タコ糸のように頑丈な白糸で旗に乳をしっかりと縫い付けている。
この縫い付けに陰陽道護身の秘術に使う9つの文字(臨、兵、闘・・・など)を縦四線、横五線でかがられている。また、「 ☆ 」の形の縫いが気になるが、これは安倍清明の印であるという。また漢字で「 叶 」の印も見える。
 命のやりとりの場である戦場は思った以上に陰陽道などが大事にされ、旗に関する作法が大事にされ、戦勝を願う気持ちも込められている。
 旗は、その大名の所在を明らかにする大きな役割がある。これは本陣の旗であるから、これがあわてることなくどっしりと立っていれば兵士たちも安心して戦えたであろう。

 主従の精神的シンボルともなり、旗は洋の東西を問わずどこでも使われてきており、そこにこめた意味や文様や言葉に励まされながら、君主と家臣とが旗を見つめながら戦ってきたものである。
 そう考えるとたかが布一枚と言うことができない重みを感じさせられたのだった。
                                   参考:展示解説・佐竹史料館の図説
                                                   
                                       
                                                    
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by miriyun | 2008-08-03 17:16 | Comments(4)
Commented by JOE at 2008-08-04 05:01 x
そう考えるとたかが布一枚と言うことができない重みをこ感じたのであった。
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Sono Nunowo Goshou Daijini Mamotte kitakotoga Sugoidesune.
Donoyouni Mamori toosite Kitanoka.
Sono Rekisiga kini Narimasu.
Commented by miriyun at 2008-08-05 08:47
ジョーさん、他の国へ売られていってしまうものがおおいですが、本来の場所で見られる遺物は貴重です。その精神性を郷土に、故国に残して生きたいものだと思います。これは日本に限らずどこの国もです。
Commented by horaice at 2008-08-06 12:13
miriyumさん こんにちは☆
ドラマなのでは見ていましたが、日本の旗、当時のものを見るのは初めてです。アップありがとうございます!
美しいですね。繊細で、シンプル 日本の美を感じました。

ものは 触れる人のこころで 存在価値が表れると思います。
想いが篭ったものは 生きているように見えてくる。
シンボル 意味を説いていくと 沢山の人の魂が感じられるようですね。
miriyunさんのこころが感じたこと ぐっと胸に響いてきました。
Commented by miriyun at 2008-08-07 11:26
horaiceさん、日本の美と魂を感じたとのコメントをありがとうございます。
 これまでほとんど日本の事は載せてきていないのですが、やはり物を知る上で幅広い視野で見つめていきたいなと思うようになりました。
 旗をはじめ、各種使われてきて長い歴史のあるものはすごく重厚で、時には圧力さえ感じるものさえあります。魂がこもる・・・そういうことが実際あるのだと感じられます。


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