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2008年 05月 31日

クラスター爆弾全面禁止へ

NGO主導型の国際会議が、21世紀の型なのだろうか?

1.対人地雷禁止条約
 1999年発効の対人地雷禁止条約もNGOが主体であった。そうでなければ成り立つはずがなかった。それを見事にやり通し、賛成した各国もそれを守った。日本も数多く所持していた地雷をすべて廃棄した。そして、日本を含め多くのNGOがアフガニスタンやカンボジアなど多くの地域で地雷除去という静かで慎重な戦いをしている。

 注)手作業で一つ一つまいたり埋めたリした地雷でさえ、いまだに世界に掘り返すことができないほど(1億個)埋まったままである。アフガニスタンやカンボジアでの被害は報道されているが、最も驚いたのは、地雷残存数が最も多いのがエジプトであったことだ。エジプトには西部砂漠のなかに2千万という世界最大数の地雷があるという統計であった。しかも英独の争いの中で仕掛けたものであるという。

2.クラスター爆弾の禁止へ
 地雷であってさえ。除去が遅々としてすすまないというのに1個の爆弾が88もの子爆弾に別れるクラスター爆弾は危険極まりない。
(最近の使用例→ レバノン戦争の停戦直前の3日間にイスラエルがレバノン住宅密集地に投下)

 今回もクラスター爆弾の恐ろしさ・戦争終結後も残るクラスター爆弾による一般人の被害、子どもたちの被害を調べ示し説得したNGOが活躍した。それがクラスター爆弾連合(CMC)と赤十字国際委員会(ICRC)でクラスター爆弾被害者の体験を含めて根気強く訴えた。

 世界に75カ国程度であろうといわれているクラスター爆弾保有国のうちのほぼ3分の2の国がこの条約に調印することになるだろう。

 【クラスター爆弾禁止条約の一部】
◎ クラスター爆弾の使用・開発・製造・保有・移転を禁ずる。
◎ 条約発効から8年以内に保有するクラスター爆弾を廃棄。
◎ クラスター爆弾の残存物除去を技術的・財政的に支援。
 
 そして、最後に英仏独日が希望して条項に加えた21条は次の条項である。
◎ 条約不参加国と、条約が禁止する活動を伴う作戦に従事することは可能。


3、締結への障害を乗り越え
 当初、イギリス・フランス・ドイツ・日本は全面禁止は不可能といていた。この会議に参加していること自体で少なくとも規制に賛成しているのだが、全面は無理というグループだ。ここには参加をしていないアメリカとの共同作戦が取れなくなってしまうこともあっての反対でもあった。

 しかし、骨子の最後21条に共同して作戦参加ができることになって、この4カ国は次々全面禁止に動いた。これによって世界の有志国110カ国が全会一致でクラスター爆弾禁止条約案をこの国際会議において採択した。正式な締結は12月3日である。もちろん子の21条があるということ自体も問題なのだが、これがなければ全面禁止もなかった。
 議長国のアイルランドのマーティン外相は、「今回の条約は政府とNGOの協力で完成した。ICRC とCMCの、深い知識に基づいた疲れを知らない活動に敬意を表する」とNGOの活動を高く評価した。
 CMCの代表は、「人道主義は山を動かし、英独仏日も動かした。新しい外交の形が生まれた」と述べた。(読売新聞2008.05.31朝刊より引用)

4、不参加国こそが最大の問題  
 ただし、当然問題点は、とんでもなく大きなものが残っている。これに強固な姿勢で不参加としているのがアメリカ・中国・ロシアなどだ。こういった武器を大量に保有し最も参加すべきであろう国なのだ。これらが参加しないのには国の利益最優先、そして何よりもわが道をかってに行くという大国主義が見える。

 民主主義という言葉が全世界でもてはやされた頃、確かにリーダーだったし、ヒーローだった国がある。しかし、今もそうであるのか。それぞれの国民の中にも意識がとても高い人もいれば、国によっては情報が制限されているために、世界の人々を理解するための根底の知識がない場合もある。

5、新しい国際会議の持ち方
 国というものだけに頼ってきた国際社会が、国を背負ったままではどうしても国の利害が優先して、良いとわかっていてもそちらには踏み出せない。そういう時代になっている。そのためにしがらみがないNGOが、使うほうの立場でなく使われたほうの立場を知っているものとしてその武器なり危険物について警告し、国際会議を引っ張る。

 そういう動きがこれからの動きであるのなら、それも視野に入れて国際社会を考えていくべきだろう。国際交流もある程度おこなわれるようになり、こうして国民ではなく地球の市民としての時代を迎えている。国として参加しない国があっても、その中の意識の高い人々が行動していくことができる。地球市民としてのシティズンシップな考え方が必要な時代が来ている。

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by miriyun | 2008-05-31 11:10 | Comments(4)
Commented by Azuki at 2008-06-02 06:20 x
地雷残存数が最も多いのがエジプトというのには驚きました。21条もなんだか変なものに思えました。でもそれで動くことができるという難しさ。
ほんと難しい問題です。。。
Commented by miriyun at 2008-06-05 06:22
エジプトの砂漠には地雷マークはちゃんと立ててあるのでしょうか。西部砂漠の人がほとんど通らないところだろうとは思うのですが、遊牧民は知っているのでしょうか。あまり情報がないのでどうなっているのか気になっています。
Commented by kenta at 2008-06-06 15:17 x
やはりグローバル化したとは言え、国家の枠組みは依然として重要です。
現実主義的に見ると、やはりそれぞれの国の軍人や外交官は自国の利益を
最大化する方向で動くので、クラスター爆弾禁止条約に参加していない国々を
動かすのは難しいですよね。

しかし、NGOなどのNon-state actorが旗振り役になって、こうして世論を
変えていくことが可能になったというのは、大きな進歩ですよね!

グローバル化する力がある一方で、反対に、ローカル化する力があります
(例えば、イスラム世界の結束、外界と接する事でむしろアイデンティティーが強化されるなど)。
将来どちらに進んでいくのか、立場によって意見が色々なのでまとめが難しいですが、
クラスター爆弾などの非人道的な事はすぐにでも多くの国が署名して欲しいですね。
Commented by miriyun at 2008-06-08 08:27
kentaさん、この件についてkentaさんからコメントをいただけてとても嬉しいです。ありがとうございます。
 非人道的兵器について、次々と浮かび上がってくる新しい兵器に心を痛めずに入られません。とくにいま気になっているのは生身の兵士ではなくロボットを戦場にという研究がなされ、実際無人偵察機や小さいロボットが使われていることですあ。これまでベトナムもアフガニスタン・イラクもA国は自国民の被害が高まる中で母親たちや大学生たちから戦争反対の声が上ってきて国を動かしました。いつかロボット化したら、戦争はまさに他人事、そうなることが最も恐ろしいです。

 国を離れた声があり団体があることは21世紀の世界に必要不可欠のことと思います。今回のように国際会議の運びよう、そして現場で収集された被害の現状が報告されたことは歓迎すべきことです。まだまだ人間社会も捨てたものではないなんて思わせられます。すたれていく人道主義の中で勇気を与えられることは紹介していきたいと思っています。



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