写真でイスラーム  

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2008年 05月 06日

葦と竹(2)…葦笛・葦ペン

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 ペトラの強烈な日差しの中、よれっとしながらも緑が美しかった葦。ここで生息できるのだから、日本のとは種類が異なるようだ。

◆葦の多様な使い道
  日本での加工品としては葦を採集して、よしずに加工するのが最大の使い方であろう。なお、葦(あし)は悪しにつうじ、音がよくないためよし(良し)とも言う。したがって、よしずというのである。しかし、普段見るものは川の茂みにある細い草木という感じで特に注目されない。
 しかし、建材の少ない中東では何かというとこの葦を加工してものづくりをする。そして中東は水さえあれば植物が大きく育つところなのだ。葦は直径2cmにもなり何かと使いやすい。
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                           ↑シリアの子どものつくった葦笛
子どもたちは身近な葦を小刀でサッサと加工してわずかな時間で笛を作る。葦笛である。優しい音色で哀愁を帯びる。これをきちっと職人が作れば、ナーイと呼ばれる楽器となる。
  前出のマーシュアラブの家や敷物のように使用目的も多様であるが、それは日本のとは太さも丈夫さもかなり異なるからだ。
                                        
◆文字と筆 
 当初アラビア文字をはじめたばかりのころ、アラビア文字の形が筆記具を選ばせたのかと思っていた。しかし、ウィグルの人の清真寺などで,中国書道の毛筆でアラビア文字を書いているのを見ると、どうも違うように思えてきた。

 そして、歴史をふり返ると見えてきたものがある。
 まず楔形文字の時代から葦ペンは使われた。半分に割った葦であの楔形文字を粘土板に書くのである(詳細は後日)。エジプトと周辺地域では先端を細くした葦ペンでヒエログリフや民衆文字を書き綴った。
 そして読むこと・書くことがたいへん重視されたイスラームの時代となると、筆記用具としてていねに削り工夫をしながら使うようになる。したがってどのイスラームの国にも筆記用具の葦ペンがある。
 つまり、
アラビア文字は、葦の筆を使う伝統があるところで生まれ、それを使って書くものとして発達したのだった
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                              ↑イランの葦ペン
 
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                                   ↑シリアの葦ペン
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                                          ↑ イエメンの葦ペン

◆葦と竹しかし、丈夫な葦が身近にない日本では竹を用いる。

 アラビア書道は竹ペンでするものとしていたが、葦と竹どこが似ていてどこが異なるのだろうか。
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 まず葦と竹はイメージ的にはあまりつながらない。
 ←葦

 だが、2つの植物はある意味近いものではあった。 分類的には竹も葦もイネ目イネ科であり、その後の葦(アシ/ヨシ)属とタケ亜科に分かれる。

① 葦とは、2~6mの高さになるイネ科の植物の一種である。温帯から熱帯にかけての湿地帯に分布すると普通いわれるが、水があれば乾燥帯の国にも生育する。
 条件さえよければ地下茎は一年に5m伸び、適当な間隔で根を下ろし、暑い夏ほどよく生長する。 太目の葦ならば、各種生活用品に加工できる。チチカカ湖の舟なども葦舟である。

② 竹は気候が温暖で湿潤な地域に生息し、アジアの温帯・熱帯地域に多い。
 熱帯のバンブー種を除いては地下茎を広げることによって生息域を広げる。竹は成長力が強く、ピークの時は1日で1m以上成長する。
 乾燥が十分なされたものは硬さと柔軟さを備えており、さまざまな素材として利用される。

◆葦も竹もイネ科で地下茎でのび、成長力が強く、またさまざまな素材になる柔軟性を持つものであった。

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by miriyun | 2008-05-06 09:03 | Comments(6)
Commented by mitra at 2008-05-07 18:39 x
いつも驚きなのですが、miriyunさんは知識のリンクが本当に幅広いですね。
そういえば、まだ野生の状態で生えている葦って見たことがないです。
ペルシャ詩(有名なのはルーミーですよね)に、たくさん登場するので、見てみたいと思っているのですが。
シリアの子どもが作ったという葦笛、おどろく程きれいに綺麗に仕上がっていますね。
Commented by miriyun at 2008-05-08 04:36
mitraさん、葦は意外と見る機会が少ないというのは私も感じました。見ていても意識しないようなクサといっても良いかもしれませんね。
 ペルシアの詩をたくさん知りたいのですが、なかなかペルシア語と日本語が対訳になっている本がなくて残念です。
 ペルシアの感性はやはり詩の中にあるのかもしれません。
Commented by orientlibrary at 2008-05-08 23:05
そうですね、、葦ですか、、今までペンの素材について考えたことがありませんでした。視界が開ける思いです。旅行しても、もう少しいろんなことを意識的に見ていきたいですが、、そのためにも、知識って大事なものだなあとあらためて思いました。
Commented by miriyun at 2008-05-09 03:27
イスラームには家畜がたくさんいて毛筆になる毛もあるのにどうして使わないのかと思っていたのです。でも伝統的にペンといったら昔から葦ペンだったのだと思いつきました。やはり地元にあるものを便利に使っっていくものですね。
Commented by shintaromaeda at 2023-01-03 18:37
お久しぶりです。昨年中近東初となるW杯がイエメンで開催され、その延長でイスラム絵画に関心再び興味が湧いてきました。イスラム絵画で葦ペンが使われているとのことで調べたところこちらの記事を発見しました。まだまだ知らないことが数多くあったことを実感しました。
Commented by miriyun at 2023-03-21 15:28
shintaromaedaさん、
最近はスポーツで中東が話題になることが増えてきましたね。
葦ペンに興味を持っていただいての訪問、嬉しいです。


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