2008年 01月 29日
中近東のタイルには次々といろいろな発見があって楽しい。日本ではタイルといったらキッチンや風呂場など水周りのイメージが強いタイルだが、かの地では神の居場所を表現するのに使われてきた。また、スルタンやシャーの宮殿生活の彩りにも使われてきた。水周りだなどと限定するのはとんでもない話なのだ。 ◆タイルの発展のとき 1、アフガニスタンからイラン、イルハーン国にかけてのタイルのなかに素晴らしいものがあるということを、イスラムアート紀行のOrientさんによって知った。 とくにスルタニエの鮮烈なデザインが湧き上がるように並べ立てられているのが、文化の隆盛する時っていうのはこうなんだろうなという感動をもって受けとめた。 2、自分が見てきたものの中にも、そういう時の勢いというものが感じられる場合がある。 例えば、モザイクタイルならサファビー朝のイマーム・モスク(昔の王のモスク)がそれにあたる。そして、絵付けタイルでは16世紀のトルコのイズニックタイルに細かな筆遣いの秀作があることを紹介した。イスファハーン以上に細かい筆づかいのタイルもあった。 組タイルもトプカプには数多くあるが、自分で見ることができた範囲では図柄が繊細さを欠く。本当はもっといいタイルがある可能性があるが、非公開であったり、ハレムの中はガイドがついて時間制限のある中で動かなければならないので、十分見たとはいえない。それに対してリュステムパシャ・ジャーミィはじっくり見ることができる。(《追記》修復中は見られないので、事前に調べたほうがいい。2019年に再度訪れた時も修復中で入れなかった) ここの絵付けのなかから、もっとも優れたものを見ていただこう。 カーネーション・バラ・ヒヤシンス・ザクロなどが咲き誇る花園,見事なトルコ絵付けである。 これがトルコ絵付けの実力だ。文様の意匠も配色にも冴えが見られる。美しい・・・・・・・・ ただし、壊れた後の修復が、どうもいけない。柄が全くあっていなかったり、ずれていたり、ここでも下から2番目と3番目のつなぎがおかしい。このような大雑把な仕事で修繕した一時期がかってあったのかもしれない。ここに限らずトプカプ宮殿などでもなんだかおかしい修繕が見られることがたまにある。 なお、ここのタイルが、トルコを代表する図柄であることをあらわしていたのが2006年愛と地球博であった。 トルコ館では、自慢のタイルの復元版をメインに飾って好評であった。
by miriyun
| 2008-01-29 23:06
| トルコ
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Comments(12)
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kazu
at 2008-01-30 06:58
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ココをみたことがあります。でもこのタイルは気がつかなかった。みればよかった~。きれいですね。
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orientlibrary at 2008-01-30 12:35
ソルタニエのタイル、ご紹介どうもありがとうございました。好奇心にあふれて新しい素材に向かっていた清新な感じが忘れられないタイルです。タイル史のなかではあまり紹介されないのですが、個人的にとても好きです!
トルコのタイル、16世紀くらいがイキイキしていて、なんとも可愛らしくていいですね〜!中央アジアやイランは外部壁面装飾のタイルが秀逸ですが、トルコの場合は、室内で鑑賞して見る、絵画〜インテリア的な役割があったのかもしれませんね。 以前紹介されていた巡礼のタイル、オスマン朝17世紀半ばくらにけっこう制作例が見られるようです。カーバ神殿、メッカ、ハッジの宿泊光景などが描かれていて、絵画的で繊細なタッチです。その後、ぐっとヨーロッパ的な図柄が増えていく印象を持っています。が、、このあたりは詳しくないので、よくわかりません。 愛知博での展示で中央アジアを初めて知ったという方に何人も会いました。私は行きませんでしたが、良い機会だったようですね!
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Azuki
at 2008-01-30 19:54
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トルコのタイルはかわいらしさがありますね^^左右対称に作りたくなりますが、この微妙な違う動きが心躍らされます。すてき~♪
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miriyun at 2008-01-30 22:34
kazuさん、ありがとうございます。うっすら汚れもかぶったタイル、ともすると見過ごしてしまいそうになるときもありますが、よく見ると内から輝くようなデザイン性に気付くことがあります。
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miriyun at 2008-01-30 22:58
Orientsさん、トルコはそうですね。外壁は灰色だったり、縞々だったりしますが内側は華麗に飾っていることが多いです。私にとってもタイルの美しさはやはりいきいき&清新さですね。勢いがあって出てきたものは、後の世になってから見てもそれを感じることができます。そういうところを感じとってみるのがいいですね。Ori様がソルタニエをみて感じるものがあったというのがわかります。
カーバの神殿タイル情報ありがとうございました。
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yuki
at 2008-01-31 13:41
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こんにちは、初めてコメントさせて頂きます。
地球博・トルコ館に飾られていたタイルが、先日こちらのブログで紹介していたリュステムパシャ・ジャーミィーのタイルだったのですね。こんなに身近なところで見ていたとは!何度も見に行って、タイルの写真も沢山撮ってましたよ。そのころは飾られていたタイルを、ただ綺麗だなと見ていましたが、背景を知るとまた違って見えてきますね、実際にどのように装飾されているのか見に行ってみたくなります。
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miriyun at 2008-01-31 17:37
Azukiさん、このタイルはことにかわいらしいですよね。色合いといい、意匠といい私たち日本人は左右対称でないものに心動かされることが多いような気がします。
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miriyun at 2008-01-31 17:54
yukiさん、ようこそおいでくださいました。地球博、じっくりご覧になれたのですね。トルコ館はとてもセンスのよい展示でしたね。かなり早足でしたがトルコはタイルにカリグラフィーなど楽しんで見ました。
歴史の中で輝いたときのタイル、今見てもなかなかいいものですね。 イスラームの文化興味を持っていただきうれしいです。また、お寄りくださいね。
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yuki
at 2008-02-01 11:34
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イスラームの文化や芸術は一般的に紹介されることが少ないので、こちらのブログに出会っていろいろ知ることが出来ました。ありがとうございます。
以前からイスラーム美術に興味があったのですが、資料がなかなか見つけられず、歯がゆく思っていたんです。これからも文化・芸術いろんな方面からイスラームの事を教えて下さい。 実は地球博は地元だったので、某イスラーム系外国館に潜入してお仕事をしておりました(^-^;)それなのにイスラームの文化をあまり知らないのは何とも情けない話ですが・・・
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yokocan21 at 2008-02-01 19:50
私もトルコのタイルはあちこち色々と見てきましたけど、リュステムパシャ以上の豪華なものって、お目にかかったことがないです。オスマン朝の中でも、この時代がタイルにとっては最隆盛の時だったのでしょうね。
この、生命の木にも似たデザイン、楽園の様子が素敵~♪ 現在のイズニックで作られている、リュステムパシャのチューリップタイルを持っているのですけど(私のブログのロゴに使ってます)、復刻版とはいえ、素晴らしいなぁ、といつも眺めています。ジャーミで売られていたタイルの写真集も、勿論持っています。リュステムパシャさん、よくぞ、こぉんなに素晴らしいジャーミを建ててくださった、と感謝です!
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miriyun at 2008-02-02 11:16
yukiさん、地球博でご活躍されていたんですね。入場者が多くて大変ですが、反面興味深いものもいろいろ見れたのではないでしょうか。チャンスをつかんでいろいろな体験をするのは素晴らしいことだと思います。
イスラーム地域についてはもともと情報が少ない上にメディアを通して入ってくるのはよくないニュースばかり目に付きます。私もすぐに「こわくないの?」などと聞かれてしまいます。 そのようなメディア報道と実際に見た現地の様子との差がありすぎることに疑問をもちました。そこでイスラームの文化・芸術・人々・自然などあまりメディアが取り上げない内容について、一人でも多くの方に知っていただければという思いでこのブログをはじめています。 何か興味あるところから見ていただければうれしいです。
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miriyun at 2008-02-02 11:34
yokocanさん、このデザインはトルコのタイル全体の中でもとくに秀逸なものだろうと思います。この左右対称でなく、それでいてバランスが取れている。色あわせが柔らかで美しいですね。
見事な赤いチューリップ、どこかで見たようなと思っていたらyokocanさんのロゴだと私も気がつきました。そこでこちらでは全体像など異なるアングルでのせました。でもどこから見てもきれいですよね~ |
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