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2007年 06月 30日
ライオンの脚を立体感をもってあらわすことはメソポタミアでも早くから行われている。小さなものだがテーブルの脚一つを見てもおろそかな描写ではない。 ![]() ↑メソポタミア文明。アッシリア・ニムルドの遺跡(イラク)。B.C.9~7世紀。青銅の薄板を伸ばしてこのように立体的に作っていく。確かな技術とライオンの脚の確かなデッサンがなければできることではない。 このように脚一つでウ~ムと思わせるところは実際に身近にたくさんのライオンがいたはずだ。しかし、現在のケニア・タンザニアのようにまばらにいて双眼鏡でやっと生態を見られるというのでは写実には心もとない。 だから、精細な写実が行われているところは王権によってたくさんのライオンが捕獲・飼育されて、必要に応じてはべらしたり、ライオン狩りに引き出したりするところだ。 そうするとやはりメソポタミア・エジプト・アケメネス朝、そしてローマ帝国などが該当する。 さて、アッシリアの遺物にはニムルドには、いかにもアッシリアというものと当時の外来物・・・エジプトに発し、フェニキアやシリア地域を通って洗練されてきたライオン文様や技術がある。 ![]() ↑B.C.9~8世紀 ニムルド宮殿出土。青銅の皿 有翼ライオン像で頭に上エジプト・下エジプトの二重冠を被っていて、一見エジプト物ようのようだ。実はこの皿には、他にもスカラベ文様やパピルス文様が入っている。 しかし、本来のエジプトのライオンの神は雌ライオンであり、また、大地の神アケルは雄であるが双頭のライオンで頭を外側に向けている。このようにエジプトの壁画はすべてにきっちりした意味があって描かれているのだから、有翼のライオンに二重の王冠を被るなんていう考え方はなかった。 どうもエジプト風のデザインをフェニキア人が新しい感覚でつくったものらしい。当時の人々はこれをセンスがよい新デザインとして喜んだのではないだろうか。 もっとも新デザインといっても2800年前くらいのことである。ふーっ、まったく何て歴史の深い地域なんだ!! また、B.C.7世紀のニネヴェのライオンは描写が丁寧で、ライオンのレリーフの傑作ぞろいだ。(ライオン紀行(9)にも掲載) ![]() ![]() ←ふりむき咆哮するライオン 守護精霊のライオン像とスフィンクス型の王→ (ここまで、大英博物館蔵) なお、この時代の象牙の細工物としては最高峰といわれているのが次の像である。 ![]() ←人を襲う雌ライオン(イラク博物館蔵) (以上写真は大英博物館「アッシリア大文明展」図録より引用) 金・ラピスラズリ・紅玉髄などの象嵌で精緻な仕上がりを見せているこの細工物は家具の一部で、フェニキアの職人の手によるだろうといわれている。 ~・~・~・~・~・~・~・~・~・ 尚、一番下の人を襲う雌ライオンなど世界史上有数のメソポタミアの至宝が治められていたのがイラク博物館である。この博物館の貴重な収蔵品がアメリカのイラク占領下における民衆の略奪によって四散した。その後かなり回収して返されたと報道もあったが、果たして何が失われ、何が戻ったのか。そういったことはイラク博物館のHPも壊滅状態で見ることができないでいる。 また、当初から学者たちから警告を受けていたのに本当に防ぐことができなかったことなのかとういう疑問がそのまま残っている。 そして戦争・内乱が起こるたびに、これからも世界の歴史が消えていったしまう可能性があることが危惧されている。 ポチッとワンクリックお願いします。
by miriyun
| 2007-06-30 10:06
| 文様の伝播
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Comments(4)
ここ10年の技術の進歩には目を見張るものがありますが、2800年後にどれだけのものが残っているでしょう。
そしてそれに美的なものを感じてくれるかというと首を傾げます。 想像力、人の手の技術、美的な感覚…凄いものを人間は持っていたのですね。今は忘れてしまっているような気さえします。 青銅のお皿には何が盛ってあったのでしょう。 動き出しそうなライオンの筋肉。 襲うという中にもまるで恋のワンシーンのような美しさ。 大切なみんなの遺産です、形のあるものはいつかなくなるとは知っていてもたいせつにしていきたいですね。 どうも某大国は破壊が目立ち、古のものを大切にしないような気がしてなりません。
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お久しぶりです!
わぁ~い、ライオンだぁ。それにしても、恐るべしアッシリア文化!2800年前にこのような素晴らしいものを作っていたなんて。どのライオン像も躍動感に溢れていて、見ていてとっても楽しいです。 今住んでいる所もメソポタミアの端っこなので、メソポタミア文化は何だか親近感があるんですけど、こうして色々と拝見させて頂くと益々興味が湧いてきます。 ところで、イラク博物館の話はニュースで見たことがあるんですけど、もし仮に回収されてきたとしても、いつ爆弾にやられてしまうかもしれないという危険にさらされていますよね。あぁ。
ぺいとんさんの「襲うという中にもまるで恋のワンシーンのような美しさ」という言葉に感激。どうしてこのレリーフは心を打つのだろうと思っていたんですが、そこを言い当てたようなことばです。緊張感が身体に満ち、それをごまかさずに描ききっているから恋する人にも似た美が生まれてきたものでしょうか。
某大国がとくになりふり構わず方向転換したのは、ここ数年ですね。地球環境はもちろんですが、実は文化的にも危機の時代ではないかと思えて仕方がありません。
yokocanさん、これらの地域にすぐ近くですよね。メソポタミア文明のすごさは日本ではあまり知られていません。でもニネヴェのライオンは古代最高峰の壁画だと思っています。すごい作家がいたものです。平和であれば、この地域は歴史に思いを寄せて歩いて飽きることのない地域です。
それにしてもイラクの混迷・・・人間があえて作り出してしまった争い・・・悲しいばかりです。 |
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