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2006年 06月 10日

水の話(2)…水道橋の話

  水の話題をしばし・・・・

 チュニジアで、他国に比べ際立って目立つのがザグーアン水道橋である。カルタゴの繁栄の後、ローマが支配し、のちに古代ローマ帝国の四大都市の一つとして栄える。人口は30万人の浴場・飲料水・噴水など、ローマ市民にとって必需であった水を手に入れるため、ローマは大工事をいとわない。A.D.128年、水道橋の建設が始まった。ローマ皇帝ハドリアヌスの時代である。その後、ゲルマン民族の一部族であるヴァンダル族が一部を破壊してしまう。ビザンチンの時代に破壊された部分を再建し、さらにアラブの時代になってからもたびたび補修されて使われてきた。

 水源は標高1300mのザグーアン山。
そこから全長132kmに及ぶ、国を支える重要な水の動脈となる。
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 ↑この水道橋のずっと奥がザクーアン山。
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   ↑チュニスからカイルアンに向かう幹線道路の脇に水道橋がよく残っている。チュニスから最も近い町はラ・マハマディアで、そこからさらに3kmのところがよく見える。北東側からの景観。車との大きさ比較ができる。

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   ↑同じ位置の水道橋。西側からの景観。
 高さ20m以上の切り石積みの橋脚を、ローマ得意のアーチでつないでいる。現存しているのは20kmほどであるが、それでもローマの力を思い知らされる。水が必要という理由はもちろん実用としての建設理由なのだが、それ以外に殖民支配している人々への示威的な意味もあったことだろう。こんな建築物を一気に作り出されたら、抵抗する気力が失せてしまうだろう。
水の話(2)…水道橋の話_c0067690_22393075.jpg

  ↑その上に導水路が組まれている。形状は天井が半円形で、深さ180cm、幅は80cmある。つまり、橋の上部に人が立てるほどの水道管であるということなのだ。 
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 ↑少し位置が変わり、道路の東に水道橋。このように高さは低いものから30mまで様々である。

 なぜ、高さが様々なのだろうか?

 ★それは、水道橋が純粋に水を流すための設備であるため、傾斜角度2度ともいわれる微妙な傾斜をつけて、常に水が停滞することなく流れるように、土地の高低差に応じて、水道橋の高さを変化させているからだ。
 したがって、山があれば水道管は地下水道となり、低地に行くと橋となり、谷に行けば極めて高い水道橋となるわけなのだ。
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                        (↑ユーラシア旅行社からの資料を彩色加工して引用)
 上の図のA~Dについて。
A:地下水道となっている。
B:水道橋で、土地の高さに合わせて橋の高さを調整している。
C:貯水槽。水道橋の終点はラ・マルガの貯水池であった。
D:都市部の噴水・家・公衆浴場に供給された。
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 ↑カルタゴまで引かれた水道橋
チュニジアの場合、規模の大きなアントニヌスの大浴場がカルタゴがあったので、そこにあふれるばかりの水が常にザンザンと流れ来るように設計されている。その量は毎秒300リットルといわれている。
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↑バルドー美術館近郊には復元された水道橋が、昔のローマの栄光をしのばせるに充分な高さと美しさを持ってそそり立っている。


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by miriyun | 2006-06-10 22:17 | チュニジア | Comments(4)
Commented by amikajpn at 2006-06-13 00:13
圧巻です。一体どれ位の人力がかけられたものか…これだけの大工事を行う文明が既に2世紀にあったような土地に今住むのって、どういう感じなんでしょう? 日本は縄文土器の時代? ぺけ。
Commented by miriyun at 2006-06-14 22:21
このローマほどの力で建築に情熱をかたむける国は容易には現れなかったということですね。ローマの水道技術はきちんと計算されて建築されていて、ほんとのすごいものだと思います。
Commented at 2006-10-30 17:28 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by miriyun at 2006-10-30 21:35
ミュータスさん、チュニジアいいところですよね。見どころがいっぱいです。私も実はチュニジアはこれからまとめようと思っているんです。


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