写真でイスラーム  

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2006年 03月 04日

リスの毛で描くミニアチュール

 ミニアチュールの定義が今どうなっているのかは知らない。だからここでは自分の感ずるままにかきとめていこう。
 ミニアチュールはじっくり見ると、風俗・人物・物語はもちろん、天幕の模様から生えている草木にいたるまで、絵が語りだす。絵のみならず、使われている絵の具や筆づかいのひと筋まで気になってくる。

 それを次々と見つけながら進むのは、いまでいうなら、「ウォーリーを捜せ」という本の1ページに見入って、細部まで描かれた町の絵の中からウォーリーという人物を探そうとする子どもの気持ちに近いかもしれない。

 ミニアチュールを見るようになってから、日本の絵巻物もよく見るようになった。日本の絵巻物のじっと見ると面白い。もっと見たいのに本物を見る機会が少ない。また、一番みたい筆の運びまでわかるような展示はしていないところが残念でならない。

 さて、インドには、ヒンドゥー教の神に関するものと、ペルシアからの影響を受けて始まったイスラームの世俗的な王や暮らしを表したムガル風のものがある。
 ジャイプールで描かれたムガルのシャー・ジャハーンの絵を見てみよう。
リスの毛で描くミニアチュール_c0067690_189581.jpg


この絵から、ムガルの王の衣服・ターバン・宝石・習慣など見えてくる。壁の装飾・カーテンの様子までわかる。
 更に、ミニアチュールならではの細かな表現を見てみよう、インドのミニアチュールは、とくに細かくあらわしたいところにリスの毛を使うと、かの山田和氏の『インドミニアチュール幻想』にあった。その後、旅の中で、確かにリスの毛の2~3本かあるいは1本で描いたと思われるミニアチュールに出会った。それが上の絵だ。
 では、目の周辺の横幅1.3cmを取り出してみる。
                           
リスの毛で描くミニアチュール_c0067690_1812378.jpg

 しかし、このまま眺めていてもそれはわからない。ここで愛用のレンズを通してみることにする。
 
リスの毛で描くミニアチュール_c0067690_18123596.jpg

 この目の部分の上にある目盛りは1目盛りが1㎜を表す、すると横幅は1.3㎝ということだ。すると、シャー・ジャハーンの額の毛の生え際のあらわし方、また、まつ毛や眼球をみてみよう。1㎜の中にいかにたくさんの線が引かれていることか?
 
 リスの毛一本の超極細の筆・・・・納得してしまった。

                                                                                                                                                                                                           
                                       
                                                    
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by miriyun | 2006-03-04 16:57 | イスラームの工芸 | Comments(6)
Commented by orientlibrary at 2006-03-07 15:01
山田和さんファンです。写真も文章も。『インドミニアチュール幻想』のリスを捕るシーンは印象的でしたね。親子の暮らしのディテールも好きでした。
ご紹介されているムガルのミニアチュール、なんか劇画とかアニメを連想してしまいました。上品で優雅なイランやトルコなどと少し違いませんか?やっぱりインド入ってますよね!? メリハリとパワーと人間くささ、あります。
細かく見てしまって思ったのですが。椅子の花柄がどうして横向き(右から左へ)なのかな・・ ほんとにそういう模様だったのを写したのかな?イヤリングがステキ ・・・とか見ちゃいますよね〜。。
Commented by miriyun at 2006-03-08 17:50
なんといっても、ミニアチュールも絨毯もぺルシアがきれいですよね。インドはまた別という気がしますし、自分の範囲外・・・。でもイスラームの流れを汲む文化の中ではやはりムガル関係も欠くことのできないところだと思います。
 花柄ほんとにそういう向きがありますね。これは現代の作家の作ったものなので、技術はあっても、王宮に飾るというような緊張感のある作品ではないのです。だから、すごく世俗的で、ネックレスなどは宝石クズを直接つかっていたりします。芸術性は弱いものですが、ただインドらしい筆遣いを見ていただければうれしいです。


Commented by orientlibrary at 2006-03-09 00:25
インドLOVE!でムガル偏愛の私、愛があるあまり、なんか文章が「暴言系」になってしまってました。インド・イスラムの技や世界、もう大好きなんです。現代の絵も、見入ってしまいます。あの暑さのなかでの超細かい仕事、すごいですよね!ミクロですね。リス!、、、だからリス取りに真剣になるんですね。
Commented by miriyun at 2006-03-09 22:52
ミニアチュールの世界に飛び込んできてくださったのはやはりorientさま!ムガルがお好きだったんですか、そういえば、イスラームの前はインドだったとかがったような・・・、ヨーロッパのポストもみてらしたんですよね。幅が広~い!そしてタイル道にふか~いOrientさまの生き生きとした言葉楽しみです。
Commented by maririn at 2006-06-21 09:29
なるうほど、、凄く細かい作業技術なんですね、、しかし同見てもアジア人に近い目ですよね、、う~んどうしてだろう、、又来増す更新頑張らないとね~ポチッ
Commented by miriyun at 2006-06-22 15:17
ミニアチュールも案外その場ではじっくりと見れないものです。家の中で静かな時間にのんびりと眺める。そうするとそれまで知らなかった世界が見えてきて楽しいものです。


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