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2006年 02月 26日
研究会があって、多文化共生をめざす中でのイスラームの埋葬と墓地問題について発表があった。これまでこの問題については、イスラームでは土葬であることは知っていてもそれ以上考えたことがなかったので、再認識すべきことがたくさんあった。 イスラームではクルアーンとハディースがすべての生活規範でもあり、その中で最後の審判のあと行くべきところとして天国・地獄についての記述がある。そして、地獄とはその身を焼かれる地獄として描写される。また、ムスリムは「大地から生まれ、大地に帰っていく。神から生まれた魂は神の元へ帰る」ということを望む。そして、火葬されることは完全にムスリムの意思に反するものであるという。 また、日本は世界の中でも際立って火葬の多い国であるため在日ムスリムにとって、安心して死ぬこともかなわないという問題になっているのだ。そもそも日本でも土葬であったし、今だってなくなったわけではない。ただ、一部の条件がそろったところでだけなのだ。発表者の許可を得ていないので具体的なムスリムの数などは表記しないが、実際には詳細な調査数字を挙げた研究発表だった。 具体的に聞いてみると知らないことばかりで、また、日本在住ムスリムの方々の切実な思いも知ることができた。 ☆ さて、イスラームの国々では墓地や埋葬についてどのようになっているのだろう。この分野については意識して資料収集をしたことはないが、わずかながら写真を探し出した。これを手がかりに自分の学びとして墓地と墓石についていくつかまとめてみることにしよう。 1、埋葬の向き いずれの墓地でも墓は同じ方位を向いている。 日本の墓地では背中合わせに区画を分けて使用するので向きはさまざまになりやすい。しかし、礼拝の向きを重要視するムスリムの場合は、当然のごとくマッカを向いて眠りにつく。体の右側を下にして横たえ、顔がマッカに向くように埋葬する。だから、墓は同じ向きにつくられることになる。 2、遊牧民の場合 遊牧民の場合、埋葬は実にあっさりとしたもので墓石も用意しない。たとえ、用意しても砂漠やワジが氾濫をおこす土地では石など埋もれてしまう。中央アジアなど敵の多い民族興亡の地では、なおさら墓の標識などおかない。その代表がチンギス・ハーンではないだろうか。あれほどの世界帝国を築きながら、その墓地の痕跡を残そうとしていない。 儀式や埋葬方法もあっさりしたものだといわれている。 3、定住民の場合 ① イエメン ![]() イエメン中部の墓地。手前のほうは並べた石が散乱している。したがって時代が奥よりも古いと考えられる。奥は、整然としており、最近の墓地と考えられる。 ・古いほうの拡大画像↓ ![]() 遺体を埋葬したあと土をかぶせ、その周りを石を四角く囲うように並べている。 更に拡大すると、ざっくばらんで石以外に装飾がないのだが、中に黄色の花が左右に咲き並んでいる墓もある。 石は並べても自然の力で、位置がずれ、割れてちらばる。結局古い墓はどこまでが誰の墓という輪郭線はわからなくなる。すると、土地の再利用の可能性も出てくる(実際は土地が十分あるうちは再利用しないが・・・)。 ・新しいほうの拡大画像↓ ![]() 大きな墓石を並べてあり、等身大の大きさのものに更にプレート状墓石を乗せてある場合もある。 ② チュニジア ・海岸地方の墓地 ↓ ![]() 真っ白な墓石がまぶしい。石が豊富な地中海沿岸ならではの墓地といえよう。 ・シディ・ブ・サイドの土手の上の小さな墓地↓ ![]() チュニジアの埋葬事情は知らないが、ここは小さな墓地で数箇の墓があるだけだった。景色のよいところなので故人の希望に沿わせたのだろうか・・などと想像した。また、墓標の変わりにクルアーンの形の石をのせてある。右ページ1行目には「慈愛あまねく慈悲ぶかきアッラーの御名において」、左ページには「アッラーは偉大なり」という語句から始まっている。敬虔なムスリムとしての思いから、言葉を選んだのかもしれない。また、1921~2000という生年・没年をあらわしている。マグリブはフランス語圏で文化的にかなり西洋風になっていることが多く、年号もヒジュラ暦より西暦を使っている。 ③ レバノン ・パレスチナキャンプ内の墓地 ![]() 狭い土地に大勢のパレスチナ人が密集して住んでいる地域である。まわりに見える家も壁が墓地に接している。きれいな墓石にクルアーンの語句や名を刻んでいる。 周辺事情は厳しく、狭い路地、窓の少ない家が続く町並みにはふつう、花がみあたらない。難民の家には生花はなく、造花のみ飾られる。そういう環境の中、花のある墓地は、ことのほか美しく見えた。 ただし彼らがほんとに葬られたいのは、パレスチナのふるさとの村だったにちがいないが・・・ 興味をもったら一日一回ポチッとよろしくお願いします。 blog Ranking
by miriyun
| 2006-02-26 06:37
| イスラーム全般
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Comments(13)
墓地および埋葬のお話とても興味深く拝見しました。確かに遊牧民のお墓というのはあまり見たことがありませんでした。モロッコへ行ったとき道端に、うえの写真のような石が積んであって、なんとなくそうかなと思い現地の人に聞いたらやはりそうだということでした。実にシンプル。何事にも執着しないのだなあ~とその時思いました。それに比べると騎馬民族系は結構墓にこだわるようですよ。スキタイ(サカ族)などはかなりリッパな墓を作り豪華な絨毯なども埋葬品としています。その騎馬民族の流れを汲んだのか、日本の古墳時代後期の前方後円墳はその最たるものだと思います。東方ユーラシアに広がるクルガン古墳などもその一例でしょうか?それにしても取材するのに難しそうな貴重な写真を堪能?しました。
鳥葬のゾロアスター教やチベットの天葬なども不思議ですよね。
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おっしゃるとおりなんです。これを書きながら、中央アジアでもスキタイとかイスラーム以前のは違うよね、と思いました。黄金の装飾品で、全身を覆ったあの黄金人間ともいわれるものは、墓にこだわりつくした中国との関連を調べたくなるような・・・。
あっ、中国どころか、日本の前方後円墳に関係するとは、すごい! イスラームになってあっさりとしたとするならイスラームの考え方がやはり重要。日本のムスリム協会の方も、埋葬そのものは大変簡素なものだとおっしゃっていました。なんでも、サウジアラビアの王様の埋葬場所もわからなくなっているそうです。徹底していますよね。イスラームの中でも遊牧民と農耕民との違い、時代と地域の違いがあるし、シルクロード沿いって本当に何でも調べがいがあります。
そうなんです。余り意識していなかったのに、思ったよりしっかりした墓石もありました。でも、定住して、農耕にたずさわる場合ですね。ウィグル族の一般の人たちはどんな埋葬ほうほうなのでしょうか。
日本はかなり墓石にこだわるほうかもしれませんが、最近少し変わってきましたよね。
へえ~。
大統領、ウイグルについては無知なのでなんともいえませんが、ウイグルの貴族の人たちの立派なお墓は観光地になってますよね・・・。←高価そうな墓石・・・ 回族の場合、イスラームの「流派」(いわゆる宗派はスンナ派が大多数・・・便宜上の分類やけど)のようなものによってちゃうようです。 もちろんすべて土葬なんですけれど、土饅頭、土もり、墓石・・・などの形状をはじめ、墓に対する観念、解釈、儀礼・・・・ちゃいますねえ~。同じ民族であっても。←ウチの過去記事で紹介したかも
うわ~っ、すぐにとんで行ってみたら、大統領のところで回族の習慣・墓・埋葬おまけにアラビア書道までみつけちゃいました。やはり、どこでも土葬に関しては譲れないということがわかりました。クルアーン朗誦のところなんてとっても貴重だと思います。ここのページからそのページにリンクなんて考えたら迷惑でしょうか・・・
★miriyun様
あの写真、ど~ぞ~♪ ブログではあまりええ写真を公開できてませんが・・・。 あれは中国のアラビア文字書道独自の書体らしいです。 たしか書体の名前はSini。 くどいのですが、ウチは、ウイグルやのうて、回族のご紹介をさせてもうてます・・・。ウイグルはテュルク系。回族は漢語が母語。 ←ややこしいのですが
写真書体の名は、Siniというのはそのまま中国書体という意味のようですね。お写真ありがとうございます。嬉しいです。
それから、中国のイスラームというと頭の中にどっぷりとウィグルと入っていて、しかも中国のことが全体的にもわかっていないので、混ざってしまって失礼しました。ふり返ってよんでみると・・・「こやつ、アホか?」って言うくらい混ざっていますね。直せるところは直させていただきました。ごめんなさ~い!
タージマハルが好きで、大変興味深く拝見させていただいてます。
墓や死の考え方はなかなか面白いなぁと思いました。 イスラム教では墓は簡素なものがよいとされるそうなんですが、一方でムガル朝なんかでは立派な墓廟建築が残りますよね。 インドも基本墓はつくらないみたいなのに。 (ほかの国でも、墓廟建築は残るのかな…?) それはどのようにつながるのかということを最近考えているのですが。 なにか考えておられることがあれば是非教えていただきたいのです。 よろしくお願いします。
tikiさん、実はこの課題はかなり大きな課題で、私自身調べて歩いているわけではなかったので充分な資料がありません。たまたま撮影してあった国のだけでもこんなに多様性があります。
ですから、学術的にどうかということには程遠く、ほんのすこし見てきたことだけお話させていただきます。 まず、何ら墓のあとさえ残さない意識のところはサウジアラビアです。スンナ派の厳格なところですからここがもっとも厳しいところです。 一方、聖人の廟に取り付き泣くほどに祈っているのはイランです。そしてこれは4代アリの聖人として考えるところから大きく分かれたのでしょう。しかし、それ以外でも墓はつくりますし、それが石を一つ置くだけかもしれませんし見事な白大理石の箱型である場合もあるわけです。 (下に続く)
(続き)
シリアではサラディン廟をずっと人々が大事にしてきていますし、トルコ人も墓は作りますし、代々のスルタンの廟はモスクの一角にあるのが一般的です。ウイグル人の聖人廟(マザール)へ詣でるのもごく普通のことです。 そして、また日本のムスリムが山梨県に墓所をもっていますが、今後どんな墓がつくられていくのでしょう。 インドのガンジーは自らの望みによって遺灰はガンジス川に流されました。しかし、人々はその亡くなった地に廟にあたる黒大理石の記念碑を置き、人々はそこにもうでます。(ガンジーはムスリムではなくてヒンディーですが、廟というもののでき方の参考として) なお、ムガル帝国の立派な廟の起源を辿れば中央アジアに向かいます。ムガル帝国の起源でもあるティムールは立派な廟作っていますし、その前のサマルカンドには廟がたくさんあります。どうも埋葬・大きな廟づくりの鍵は中央アジアにあるように思います。 参考になれば幸いです。 ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
鍵コメさま
大変なお仕事ですね。 山梨のはすぐに足らなくなるとだいぶまえにききました。その後どうなったのか知りませんでしたが、やはり土葬というところがネックですか。昔は日本も田舎では土葬でした。現在はもうないものなのでしょうか? 写真はお使いいただいてかまいません。ただ、石の棺を使っていることは土葬ではないということにはつながらないです。 ムスリムは確実に土葬ですので、これを見ても理解に繋げるのは難しいのではないでしょうか。 写真を上手くとれない場合や詳しい話などありましたら、コメント欄にメールアドレスを入れて、コメント欄の左下の非公開の枠にチェックをいれて連絡をしてください。この分野はあまり多くをしりませんが分かる範囲でお答したいと思います。 |
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