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2006年 02月 12日

「つづれ織り」考…模様とスリット

 キリムや絨毯の端などに使われるの最も基本の織りをつづれ織りという。別にキリム用語ではなく、日本でも使われる一般的な用語である。
 基本のつづれ織りとは次のようなものである。
「つづれ織り」考…模様とスリット_c0067690_0514031.jpg

まず、単色あるいは染色していない糸を縦糸として、そこに横糸を上下交互に通していく。そして、縦糸の端は織機から外した後、このように端の始末をしていくことが多い。これで、単色の敷物やバッグ・テントなどができる。
 つづれ織は平織の一種で経糸より太い横糸で縦糸を包み込むように織り込むものだ。この写真は打ち込みが弱くて縦糸もしっかり見えているのでただの平織といったほうがよさそうだが・・・
 
 ☆では、複数の色を使って模様を入れるにはどのようにするのだろう。ワディ・ラムの素朴な織を見てみよう。古代も今も簡単な織機のつくりはあまり変わらない。
「つづれ織り」考…模様とスリット_c0067690_2257947.jpg

                           ↑ 水平織機
 遊牧民族は移動することを前提としてすべての道具をつくる。織機も組み立てが簡単で、移動の時にもラクダの背に載せられるように作られる。固定は前後の横材を支えるようにくいを地面に打ち込んだりして固定する。そして、縦糸をピンと張るその縦糸を交互の上下する仕組みにしているところは日本の機織と同じようだ。必需品は横糸を通した後その目をつめるための木の櫛と鋏だ。
「つづれ織り」考…模様とスリット_c0067690_23324173.jpg この織機にかかっている織物ではいま、三角やひし形の模様を入れようとしている。三角形だけ、たとえば、黄色の横糸でつづれ織りをしていく。模様の最後のところの縦糸を巻き込むと向きを変えて巻き戻っていく。こうやって模様をいれ終わる。この色の継ぎ目のところは一目分つながらないところがでてきてしまうが、三角などを表す場合は隣り合う縦糸がつながらないのは一箇所だけなので困ることはとくにない。

 しかし、気持ちのおもむくままに岩絵のように自由奔放に絵を表したくなることもあるに違いない。

 その時に実はちょっと困った問題がおきてくる。縦の線をあらわそうとすると一目つながらない箇所が連続するためにスリット(切れ目)ができてしまうのだ。トルコのカイセリキリムを見るとスリットが入っている。あれはオシャレで入っているわけではなく、この色分けの結果としてどうしてもスリットができてしまうのだ。

 ☆次につづれ織りのヨルダンのキリムを見てみよう。
「つづれ織り」考…模様とスリット_c0067690_23543346.jpg


 まあ、すぐに気づくのはラクダの色が途中で変わっていること・・・これは余り糸で練習しているのか、あるいは必要な毛糸の量がよみとれなかったか、いずれにしろあまり熟練していない人が素朴に絵を表したという感じだ。
 次に気になるのはいくら自分の自由な発想とはいえ、ギザギザの草、ギザギザの窓、鳥の形、何か造形が不自然なことだ。

 この織りは何織なのかときになった。触ってみる。縦に色が違うところもつながっている。スリットはない。では同じ縦糸を異なる色糸がそれぞれで巻き込んでいくつなぎ織りキリムか。しかし、そうならばもっと色が混ざってこんなにくっきりした模様にはならない。異なる色の横糸同士をつなげていっているのか、しかしその兆候も見えない。

 ここで、はたと気がついた。絵柄に気をとられて、縦糸がどちらの方向か考えていなかったのだ。
「つづれ織り」考…模様とスリット_c0067690_0153690.jpg

このキリムはこの方向で見なければ特色が見えてこない。

 縦線で色の切り替えがないのかに注目してみる。

あった!建物の屋根の基底線が縦糸と平行だ。

「つづれ織り」考…模様とスリット_c0067690_0503867.jpg

屋根と家の壁との間を探ってみると、他にはなかったスリットが見つかった。大きく開きすぎてしまわないように、隣の縦糸に糸を巻き込んでいたが、明らかにスリットが存在する。つまり、このキリムの織り方はスリット織キリムだとわかった。

 こうして、織がわかるとこの絵の不自然さのなぞもわかってきた。何とやしの木の根元もラクダのお腹も窓枠の下側も家も、普通ならまっすぐになるべきところがすべて斜め線になるようにして大きなスリットが現れないようにしていたのだった。

 いや~、初心者とかいって失礼であった。人知れず苦労をしてスリットの入らない丈夫さを追求していたわけなのだ。



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by miriyun | 2006-02-12 22:33 | 絨毯・キリム | Comments(2)
Commented by yokocan21 at 2006-02-17 07:18
はじめまして!
私の大好きなキリムやじゅうたん、はたまたカリグラフィーなどなど、丁寧に説明していらして、すごーく楽しく読ませて頂きました。
イスラムの芸術品って、繊細で色めも綺麗し、見るもの見るもの、はまってしまいます。
このヨルダンのキリムも素朴でいいですね。素朴なほど、キリムらしさがあるように思いますが。
これからも、素敵な芸術品、色々と教えて下さいませ。
Commented by miriyun at 2006-02-17 18:22
yokocan21さん、ようこそ。イスラーム文化が好きな人とお知り合いになれてうれしいです。素朴なキリムにも関心を持っていただきありがとうございます。
 日記ではないので時系列関係なしで、テーマもいろいろ変わっていきますが、よろしくおつきあいください。
 


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