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2019年 09月 06日

ヒルエとは

1.Hilye-i Şerif ve Tesbih Müzesi 展示作品のカリグラフィーの形式    

 元シヤヴシュパシャのマドラサで、改修されて「高貴なるヒルエと数珠の博物館」となった博物館を紹介したが、トルコ語サイトまでいろいろ調べてもスッキリとはわからなかった「ヒルエ」。

コーランとハディースとカリフ名などからなり、一様に何らかの型があるようだとは想像しても、それが何なのかどこにも記載されていない。・・・と思っていたらアラビア書道家:本田孝一先生からのご指摘で「イスラム書道芸術大鑑」に記載されていることが分かった。
 

2.ヒルエとは   

イスラム書道の形式の一つであった。

日本語訳は「装飾書版」。
17世紀末、ハーフィズ・オスマンがハディース(ムハンマドの言行録)の中の伝承を使い、それを壁にかける板版に仕上げたのが最初といわれる。しかし板に張り付けられた作品は痛むことが多く、のちに大判の紙から厚紙を製造できるようになると装飾書版の制作も容易になった。19世紀には宮殿や家屋を飾る主要な装飾として人気を博したという。
  
ヒルエとは_c0067690_09034157.jpg
↑ 「イスラム書道芸術大鑑」をもとに説明用に作成。幅の設定などは大まか。


◆1~11の部分に何が書かれるのか要約してみる。
1.バスマラ(「慈悲深く慈愛あまねき神の名において」という聖句)だけが書かれる。
2.中心部分の円形(または楕円・四角形)。ここには伝承の文章。
3.三日月部分。金彩あるいは装飾文様。
 
*中心部分は太陽、三日月文様は月ととれる。
2と3を囲む四角部分は装飾書版ヒルエの中でも最も豪華な装飾で満たされている。

4~7 正統カリフ名 
8.コーランの章句
9.末尾部分。装飾書版の文章の続きで、「祈祷(ドゥアー)部分」と呼ばれている。書家はこの部分の終わりに名前と制作年月日を記入する。
10・11. 末尾部分の両脇は「コルトゥク」(肘掛け椅子、または肘の意)と呼ばれ装飾が施される。

一般的な形であり、常にその形というわけではない。
     (『イスラム書道芸術大鑑』〔編・監修〕IRCICA 〔訳・解説〕本田孝一 平凡社刊より要約、引用)


3.ヒルエがわかってから見ると・・。
わかりやすい!

例えば、先の「高貴なるヒルエと数珠の博物館」の作品で、この基本形に忠実な作品を見てみよう。
ヒルエとは_c0067690_10285321.jpg
上のヒルエの形式番号の位置と比べながら、
1.一番上にバスマラ、確かに・・・。他の作品も書体はいろいろだが確かにバスマラしか書いてない。
2・3.円形と三日月。文の意味は不明。三日月部分は装飾
4~7 確かに正統カリフ。しかも4~7の位置に正統カリフの1代から4代まで順番通りに置かれている。
8.コーランの文言。そういえば芸術大鑑にはここで使われることの多い章句の例が載っていた。
調べたら、ぴたりと一致。預言者の章107節「神があなたをお遣わしになられたのは万世への慈悲のために他ならない」

9.自分では読めないがドゥアー部分
ヒルエとは_c0067690_10531258.jpg
末尾に年号が見える。ヒジュラ歴だが、不鮮明で1421年か1431年か。
1421年とすると西暦2000年のころのこと。だから現代の作品が飾られていると分かる。

10・11.装飾 

一つの形式がわかるだけで、実に興味深くなるものだ。
美術館や宮殿でこうしたものを鑑賞の折りにはヒルエの形式を参考にしていただければと思う。

                                                                   

                                                                                                                                      
                                       
                                                    
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by miriyun | 2019-09-06 10:59 | アラビア書道 | Comments(2)
Commented by ぺいとん at 2019-09-06 11:45 x
形式図を見て曼荼羅と似ていると思うのは変でしょうか。
イスラームと仏教は美しさの形が似ているといつも密かに思っています。
Commented by miriyun at 2019-09-09 22:19
ぺいとんさん、
曼荼羅の円形の配置とか置かれている絵の意味とか気になります。こういう方のあるものって、とても深い意味が隠されていたりしますよね。
どんなところの思想も美しさと思想の表現に力を尽くしながら進化していくのでしょうか。


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