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2016年 09月 29日

『水の聖板』The Sacred plate of Water・・・アラビア書道作品

A Gallery of Arabic Calligraphic Works of Fuad Kouichi Honda
   ≪本田孝一氏Web作品展≫・・・ アラビア書道家・本田孝一氏の作品を紹介する特集



『水の聖板』The Sacred plate of Water・・・アラビア書道作品_c0067690_4181418.jpg


Web作品No.35
『水の聖板』The Sacred plate of Water
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・内容:Holy Qur’an Surah al- Anbiya’ 19~35
『コーラン』預言者たちの章 19~35
・書体:Thulth style スルス書体
・大きさ:縦306cm×横125cm
・材質/技法:(文字)レタリングゾル・ドローイングインク
      (彩色)アクリル絵の具
・制作年:2013年
・所蔵先: Islamic Arts Museum Malaysia
    マレーシア・イスラム芸術博物館

◆作者コメント:
 この章の中には重要な言葉が含まれている;「神はすべての生きものを水から作られた。」水はすべての生きものの源である。水から生命が生まれたことは現代科学が証明している。いまだ科学が発達していなかった時代に示されたコーランの中にこのように深い真理が述べられているとは。
作品は、水のほとばしりに見立てて下から上に文字列を5本並べて書いてみた。

                    以上、公式
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*<参考>
 ご質問がありましたので、ブログ主がご鑑賞の参考までに書かせていただきます。個人的鑑賞ノートといってよいものなので、興味のある方だけどうぞ。


 今回の作品は本田孝一氏による作品群の中でも異色の彩色のない作品である。
それは何を意味するのだろうか・・・。
 
 作者の「水のほとばしりにみたてた」という言葉の通り、伝統的スルス書体による文字列に圧倒される作品である。
 この文字列がどのように組み立てられているかを見ていこう。
右列から左列へと読み進む。水のほとばしりであるから、もちろん右下が最初の言葉にあたる。

右下から上へと次の言葉が連なる。スルス書体はもともと上に積み上げてあらわすことが出来る文字であるが、文字そのものの厳格なつくりを崩してはならない。その上で上へ上へとデザインして積み上げていくのであるから、作者自身の思いをあらわそうというエネルギーがなければこれだけの文字を完璧にデザインすることなどできない。しかも、この文字列がただ長く並んでいるわけではない。

 その文字群にリズムがあり、いのちが宿る。

 それは何故なのか?

 

ここで右の列に書かれた19節から22節までを並べてみよう。
(作品の中では19節の上に20・21・22節と上へと積み重ねられている。
『水の聖板』The Sacred plate of Water・・・アラビア書道作品_c0067690_13492651.jpg



◇この文字を見て、何を感じるか。
世界中の詩にも意図されてあらわれるもの・・・それは「韻」である。

読まれるべきものとして(まさにコーラン、クルアーンの意味)構成されたコーランはかなり多くが韻をふむ。
とくにこの章ではヌーンという文字が各節の最後に現れる。読み方はすべてヤ〇〇ウ~ナ

 横に2~5文字くらいが並んではその上にも積み重なっていくこの作品において、ヌーンだけは一文字で表わされ、そこが節の切れ目ともなり、また「ほとばしる水」の切れ目にもあたる。
 そのヌーンが美しく揃ってデザインされているからこそのリズムであり、美しさであり、いのちを感じるところなのだ。

 だからモノクロの文字列からなるアートなのである。



◇最後に気になる水の節について。
右から4列目の一番下の文字列があり、そこにはこの節が書かれている。
『水の聖板』The Sacred plate of Water・・・アラビア書道作品_c0067690_1041254.jpg

この中ほどに
  「神はすべての生きものを水から作られた。」という言葉がある。このことばのイメージが作品作りの基盤になっている。(この章の全体を知りたい方はこちら)
                    
                                                                                                                              
                                       
                                               

by miriyun | 2016-09-29 04:29 | Fuad Kouichi Honda | Comments(2)
Commented by petapeta_adeliae at 2016-10-01 00:27
今までにない構図ですね。
>神はすべての生きものを水から作られた
言語で理解できたら言葉の重みを感じられたのにと
ちょっと残念に感じました。
Commented by miriyun at 2016-10-02 10:34
ソーニャさん、
確かに、これまでにない文字だけで表わされた
モノクロのアートですね。
下から上への文字列のどこにアクセントがあるのか
、個人観賞の参考として追記しましたのでよかったら
ご覧ください。


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