2016年 06月 07日
1.壮麗 ミマール・スィナンがエディルネの地にセリミエ・ジャーミィを建築したのは、彼の晩年にあたる。 若くして目の前のアヤ・ソフィアという偉大なローマ巨大建築に圧倒され、自分の手でこのような建築を作りたいと思うようになった。 それだけに振り回されたらただの夢想家で終わってしまうが、彼は堅実だった。 スレイマニエ大帝に見出され、その期待に応える仕事を一つ一つ全力で打ち込んだ。 依頼主は大帝であれば、遠方からやってくる外国人たちがしの偉業を見上げて感嘆するような姿をつくり、皇女や重臣からの依頼にも常に新しい工夫を試しながらの477の建築だった。 依頼は幅広くハマムの建築にも本気で取り組みながら、3代のスルタンの信頼を得ての建築家人生。 晩年になっての大仕事に、アヤ・ソフィアを超えるジャーミィをつくったのは、彼の念願であるとともに、オスマン・トルコの悲願でもあっただろう。 絨毯を敷き詰めたジャーミーの内部。 こここそは全体像を入れたいところだが、全体像は魚眼レンズでもなければ写しきれない。 せめて床から天井までと思うが、これが限界。 カメラは諦め、中央に立ち、真上を向いてこの天井に向かって心を解放してみた。自分の身体がそのまま天井に向かって浮遊出来たらすばらしいだろう---と。 壮麗だが、アヤソフィアの重々しさは感じない。 スィナンが工夫した天井を支える柱、そして壁面は限界に近くまで窓となした。これらの窓が大建築の暗さや重さを一掃しているのだ。 2.力学を考えたうえでの窓の多用 その窓の一部。形を見ると、ローマ水道橋を思い起こす。 ローマ時代の水道橋は、力学的に重さを支える部分はもちろん頑丈な柱になっている。何層にも積み重なる水道橋の重量を緩和すべく、アーチの内側は空洞につくられる。つまり、重さを担わせる部分と、重さを軽減する部分がはっきりと分けられ、それが建築上の美にもなっていた。 そのアーチの内側は巨大ドーム天井を支える役割ではないので、壁でなく窓にしていいわけだ。それを実に効率的にしかも印象的に美しい窓の連なりに運用している。 窓がこれほどあり光があふれ、建造物としては力学的に計算されつくした安心感がある建築、そういう建築であり、アヤ・ソフィアを超える建築をスィナンは作ったのであった。 ↑ 一日一回、ポチッと応援していただけると励みにもなります 人気ブログランキングへ
by miriyun
| 2016-06-07 07:02
| トルコ
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Comments(8)
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hinagesi-k at 2016-06-07 10:24
中々自分では見る事のかなわない場所の画像を堪能させていただいて居ます。
美しい色と模様と建物の機能的なデザインに見惚れます。
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セリミエ・ジャーミィ、素晴らしいですね!
ドーム天井の装飾と言い、たくさんの窓と言い、うっとりするような美しさ。 477もの建築物を残したスィナンさん、どんだけ働き者だったんでしょう。 彼の残した建物を片っ端から見に行きたい所ですが、トルコはまたテロがあったみたいで、観光には一段と厳しい環境になってしまいましたね。中東、行きたいのに・・・。
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miriyun at 2016-06-09 07:45
谷間のゆりさん、
明るさがあるので、明るい色合わせの装飾がよく合っています。 アヤソフィアより大きいのにこの窓のおかげで威圧感は感じません。 観光客も少ないのでブルーモスクより落ち着いて見ることができました。
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radakku914
at 2016-06-10 10:45
素晴らしく美しいですね~。世界中に宗教施設があるのですが、やはり一番に心惹かれるのは
イスラム寺院です。憧れの「青」や幾何学の模様は他に類を見ない構図で 言葉もないほどです。 それでいて国によって少しずつデザインも違う・・・カシュガルのエイティガールや北京の イスラム寺院にも独特の形かと思います。 同時に必要である絨毯の発展・洗練にも役立った のでしょうね。 (霧のまち でした)
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miriyun at 2016-06-15 06:22
Luntaさん、
スィナンは進歩し続けた驚異的な建築術、 この時代に高齢までずっと第一線で建築し続けたこと、 また、設計図を残していないこと、いずれも今でもこれほどの人はいないと おもわせられる人物ですね。 一時代前、下調べはしながらもどんな国にも一人旅でも 行くことが出来た時というのは今思うと夢のようですね。今は世界中どこでも充分な下調べはもちろん、慎重な選択や撤退などかかせません。
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miriyun at 2016-06-15 06:30
霧のまちさん、
こうした建物は、各国の建築と工芸の力が結集された奇跡の建築物なので、やはり美しいですよね。 絨毯も実用品としての発展の中で今はもうアートになっているような素晴らしいものまであります。連綿と続いてきたアートの力も争乱の時代にはそれを引き継ぐ人がいなくなってしまうことが考えられます。 各地にある建築など、比較していくのが好きだったのですが、今はもう見に行かれないところがたくさんあって残念です。
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moccosan at 2016-06-18 20:18
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miriyun at 2016-06-19 18:45
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