2014年 08月 12日
1.東洋文庫ミュージアム 国会図書館の分室でもある東洋文庫。 自分のところからは遠いという感覚でなかなか足を延ばせない。 しかし行ってみれば極上の思考空間。 上野の博物館のような巨大なものを展示できるような場所ではないが、落ち着いた空間と見る人の視点に立った展示に惹かれた。展示のうちでとくにどこがポイントなのかをはっきりと見せる。意味するところや古文書の特色ある読み方が目の前でパネルにしてあって読み取ることが出来る。そして、この写真のように写真を撮ることが出来る。もちろん、紙や絹に光は敵であるから、フラッシュ撮影はしてはいけない。 この美しいモリソン文庫も本そのものは触れないが、書庫の間に漂流民についての情報を本を開いた状態にして展示してあり、照明もついている。天井までぎっしりと詰まった貴重な書の山に久々に接して、そういえば最近はPCの液晶画面しか見ていなかったと改めて感じさせられた。 2.博物館の見せ方*雑感 ◆博物館についてはずっと以前から、このブログ上でも見る人の視点に立った展示をということで言ってきた。 展示品によって、フラッシュさえ使わなければ写真で写していいもの、いけないものをきちんと分けて展示してもらうことで見学に行ったお年寄りから学生・子どもまで、誰もが自分の視点にあった見学ができる。 カタログだけではわからないところまで、詳しく見たい人、夏の自由研究に使いたい児童・生徒、誰もが写真撮影できることにより日本や世界の文化・文明に一歩踏み込むことが出来る。いや一歩ではない、写真が手元にあり、確認できるということは三歩も四歩も深めることが出来るのだ。文化に触れるには一回だけ見たというだけでなく詳細をゆっくりと比較するという作業がどうしても必要になるからだ。 そういう意味で、展示品の一部でも撮影ができるようになっている博物館を好ましく思い、一方、いくら撮影したって傷むわけでもないし、希少価値もない寛永通宝の山や、掛け軸のレプリカ(本物は奥深くにしまってあって飾っているのはレプリカであるのに・・・)でさえも撮影禁止にしている旧来の博物館の発展性の無さには辟易している。 昔から撮影オープンな博物館としては大英博物館がある。世界の至宝が集まった博物館なのに写真に撮ったりスケッチができるというオープンさに驚いたものだった。国によって考え方が違うので、今でも大きな差がある。 ◆高齢化社会になって、博物館の見学者に高齢者がいることを否定する人はいないだろう。しかし、展示室の暗さと展示品の説明の文字の小ささが気になる博物館もよくある。暗くしなければいけないのは光に弱い一部の展示品である。光で影響を受けないものは柔らかな光が入るようにした明るい部屋が望ましいし、文字はいろいろな年齢層の人に見てもらってアンケートを取るくらいのことをしてみたらどうだろうか。 旧来の博物館で文字が小さすぎる、暗い、意味が分からないなど困ることがある場所ほどアンケートも相談口もWeb質問もできないところが多い。 本物を真っ暗な中で実態がわからない状態でみせるよりは、レプリカでも写真でも大きく引き伸ばして使ってわかりやすく展示した方がいい。 ◆また、機敏で柔軟な対応力も博物館に求められる。明らかに展示の向きが違ったり、説明が違っていてもすぐに直せる機敏さがあるところと、展示の最後までとうとう直せないところがある。 今回行った東洋文庫ミュージアムは、小さなことではあってもメールでお知らせした即日対応をされていた。これはさすがだとこちらがその素早い対応に感嘆した。 ◆確かに今のような情報社会においては、すべてインターネットを通して調べることが出来る。 しかし、人がまとめたweb情報を読むのと、自分が見て、比較して、思考して得られるものとは別の次元のものだ。 だから優れた博物館というのは展示品をチラ視させるのではなくて、見るー知への欲求ー思考へと導いてくれ、しかも帰宅後もその知への欲求が持続するようなところだと思っている。一人一人がそういう思いを持ってこそ、自国の文化を深く知ることになるのだ。 3.世界の知への憧れ この博物館の中庭や外に大きな壁のような石板が並んでいる。 石には世界各国の文字で知識に関する言葉がある。今回はその中から2つだけ選んでみた。 「知は力なり」(ペルシア語) 「知識を求めよ、たとえ遠い中国であろうとも」(アラビア語) アラビア語で古くから言われている言葉である。 中東から見て、遠い場所として、またシルクロードの果てである場所としてもシルクロード時代の中国を出しているが、 意味としてはどんなに遠いところにも困難な所にも知識を求めよということになる。 そんな知識と実物に触れさせてくれるミュージアム、やはり大切にしていきたい。 ↑ 一日一回、ポチッと応援していただけると励みにもなります 人気ブログランキングへ
by miriyun
| 2014-08-12 06:43
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Comments(6)
Miriyunさんの博物館雑感、深くうなずいてしまいました。
欧米の博物館や美術館はカメラOKの所が多くて、おかげで有名所蔵品はもちろん、他の人が鼻も引っかけないようなものまで反芻して楽しむことができる、それがありがたいです。変なものは絵葉書などなかったりしますものね。 日本の博物館は展示の方法も含めて古臭いところが多いですよね。 縁故採用でもなければ学芸員になれないという悪習のせいでしょうか。
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霧のまち
at 2014-08-14 09:14
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同感ですね~。 撮影などに関しては さして理由も無いのに
こう言うものだからと決め付けているのでしょうね。 触れてはいけませんと言うのも そうです。 先日も 知人の紹介で行ったパッチワーク展で 触れないように入り口で言われました。 壊れ物ではないし、裏の処理も見たいのに 従来からの常識?から逃れられない雰囲気を感じました。
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petapeta_adeliae at 2014-08-14 09:25
こちらの存在自体を存じませんでした。
HPを覗いたところ講座も、それもイラン書道を企画してるなんて マニアックで(^_^;)どんな人材が集まるのかちょっと興味津々 でもあります。 σ(・・*)んち、miriyunさんちから遠いし、残念なことに不便ですよね。
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miriyun at 2014-08-15 15:31
Lunta さん、一人でここで発信していても、他の方はどう思っていらっしゃるのか、細かな文字も見えないのは自分だけなのかわからないのですが、世界をめぐっていらっしゃるLuntaさんにご賛同いただけるととても勇気づけられます。
最近は、上野の博物館も常設展示については撮影可のものが多いですし、きちんとした学芸員のいるところから変化の兆しが見えています。 ただ、黙っていると、旧弊な博物館は変化しないのです。よそから特別展を呼ぶだけでなく、自分のところの収蔵品をいかに魅力的に見せる工夫ができるかも大事なポイントですよね。
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miriyun at 2014-08-15 15:44
霧のまちさん、前例の通りにとやっているところほど、入館料に対するコスとパフォーマンスもよくありませんね。
また、裏の処理をみたい、お気持ちわかります。 私も絨毯にキリムに民族衣装になど裏を見たくなります。 全てをというわけにはいかないと思うので、その仕組みがわかる程度に触ったり、裏返したりできるようになっているとよりよくわかるのにと思うことがあります。
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miriyun at 2014-08-15 15:49
ソーニャさん、東洋文庫ミュージアムだけでなく3か所が集中しているようですが、今回はミュージアムだけでたっぷり時間をとって見てしまいました。
柳沢吉保の庭園の跡である六義園もあるし、いいところなんですが、何しろ遠くて・・・。しかし、東京はやはり文化的な面で充実度が高いですね。だんだん、遠出ができにくくなってきているので、いくときにはまとめてと思うのですが、一つ見るので頭が満杯になってしまいます。 |
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