写真でイスラーム  

mphot.exblog.jp
ブログトップ | ログイン
2013年 02月 02日

IAMMとPSTA・・・本田孝一氏作品クリスティーズで(2)

アラビア書道について学んでいくうちに意外なものが関係してくる。
 前回のアラビア書道がクリスティーズで評価されたという記事の中で作品がなぜ、日本からマレーシアへ、そしてドバイでオークションにかけられ、収益がイギリスへと行くのかという点について、不明瞭だったのでその続編。
 
1.IAMM(Islamic Arts Museum Malaysia)…イスラミックアートミュージアム マレーシア  
クアラルンプールの中心部の閑静な国立モスクのある一角、レイクガーデンの緑豊かな環境の中に立地し3万平方メートルを占める美術館がある。イスラムアート美術館といい、知る人ぞ知るという、イスラムアートを広くて美しい快適な空間で整理してみることのできる美術館である。
IAMMとPSTA・・・本田孝一氏作品クリスティーズで(2)_c0067690_16472384.jpg

 美術館の中から美術館のある街の様子。落ち着いた緑の多い一角だった。

IAMMとPSTA・・・本田孝一氏作品クリスティーズで(2)_c0067690_14495656.jpg

     外観

 近年アジアや中東各国も美術館に力を入れはじめているが、とくにこのイスラムアート美術館はイスラムの文化を見るに優れた場所である。

 ここに今、本田孝一氏のアラビア書道作品の大作が数多く集められている。なぜならば、アラビア書道を集約した新館をつくっているからだ。その計画が持ち上がってからこの美術館は本田氏の作品を4年ものあいだ、集め続けている。

 そして、あと1年くらいで他の書道家のと合わせてアラビア書道のための別館をオープンさせることになる。


2.PSTAとは・・・Prince's School of Traditinal Arts 
 イギリスの直訳すれば王子の伝統芸術学校となり、何やら伝統芸術を学ぶ学校でチャールズ王子設立の学校であることがわかる。

 しかし、これとイスラムアート美術館の関係があるようにおもえなかったのだが、学ぶ内容を見ると大いに関係あることが明らかになった。
IAMMとPSTA・・・本田孝一氏作品クリスティーズで(2)_c0067690_1344542.jpg
 
 Prince's School of Traditinal Arts(略称:PSTA)とは、2004年、英国のチャールズ王子がロンドンに設立した学院である。
 そこでは伝統工芸、手工芸及びその伝統的精神を教えることをカリキュラムの目的としている。

 その学院で有名なのは伝統工芸の分野の大学院教育プログラムを提供していること、並びに世界の多くの美術大学では提供していない実際の工芸技術の習得のための研修プログラムを英国内外において関心のある人々に提供」していることである。学院の設立の趣旨及び使命は、チャールズ王子の手工芸の再生・復活しなければならないという考えに基づいている。


  イスラムアート美術館が発行した美術本『DIVINE INSPIRATION: Seven Principles of Islamic Architecture』の冒頭のページに
IAMMとPSTA・・・本田孝一氏作品クリスティーズで(2)_c0067690_13362893.jpg

チャールズの署名のある寄稿があった。
そして、実際にどのような伝統工芸をここで実地に研究したり、技術習得の機会を与えているかが、そこに掲載されていた写真でうかがい知ることができる。

IAMMとPSTA・・・本田孝一氏作品クリスティーズで(2)_c0067690_1436493.jpg

IAMMとPSTA・・・本田孝一氏作品クリスティーズで(2)_c0067690_13444076.jpg

IAMMとPSTA・・・本田孝一氏作品クリスティーズで(2)_c0067690_14365168.jpg

IAMMとPSTA・・・本田孝一氏作品クリスティーズで(2)_c0067690_13443884.jpg

アラベスク・アラビア書道・モザイク・建築など(IAMMの本より引用)

こうしたものを実際に大学院レベルで提供し、実際に技能習得ができるというのは世界的に見てもあまり聞くことのないものである。
 そして何よりも驚いたのは、この学校の名前にイスラームとかアラブ・中東などの名前は何もついていないにもかかわらず、伝統技能の多くがイスラーム・アートであるということだった。
 英国の王子がなぜ、格別にイスラーム・アートをめいんとする学院をたてたのかはわからないが、職人の世界だけに残され、消えてしまう危険もある技能についてこのように研究し、実地に学ぶ場があるということは貴重なことであり、知っておきたいものだと思った。

 3.本田孝一~IAMM~クリスティーズ~PSTAの関連
 したがって、イスラーム・アートを体系的に集めているマレーシアの美術館とチャールズの学院PSTAに太いパイプがあることに不思議はなくなった。そしてイスラーム・アート美術館とからは学院支援が行われているということであり、その支援には経済的な支援も含まれるらしい。

 その一環として、イスラーム・アート美術館に本気で集められた本田孝一氏の作品をオークションにかけることでPSTAを支援したいがよいかという確認が本田氏のところに来たということだ。
 こうしてクリスティーズのオークションにかけられ、約5万6000ドルで取引され、落札者が誰かは明かされないのでわからないが、いまごろ、世界のどこかの美術館か宮殿か邸宅かに飾られているのだろう。

 
 今は、本田氏の作品が、まわりまわって、王子の学校でイスラーム伝統工芸が体系化されたり、その技術が残されたりするのに、一役買ったことになったのだという世界をめぐる話の大きさに驚いている。

 

                                                一日一回、ポチッと応援していただけると励みにもなります   

                                                                  
人気ブログランキングへ

by miriyun | 2013-02-02 14:01 | Fuad Kouichi Honda | Comments(6)
Commented by Lunta at 2013-02-03 09:49
PTSAのHPを覗いてみますと、国や宗教を越えて伝統工芸を学べるようになっているんですね。大学院なので高レベルなのでしょうが、内容を見るだけでわくわくします。
チャールズ皇太子は自身も絵を描く人なので美術に関心が強いんでしょうが、こんな素晴らしい学校を創設するとは「貴族の義務」をきちんと果たしている感じです。
あまり人気のない人ですけど、ちょっと見直しちゃいました(実は前々からダイアナよりチャールズに同情してたんですが)。
Commented at 2013-02-03 16:11
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 谷間のゆり at 2013-02-04 12:05
チャールズ皇子を見直すきっかけになる記事ですね。
そんな大学で学べる学生が羨ましいです。
戦争は色々失いますが、文化の交換は色々生み出されますから。
Commented by miriyun at 2013-02-06 18:42
Luntaさん、こういう伝統技術、とくに外国の文化を中心とした研究をするとことは少ないですね。
価値ある研究や学びのできる学院であり、
それとマレーシアの優れたミュージアムにこのような
相互に深め合うような関係があることに驚かされています。
Commented by miriyun at 2013-02-06 18:46
鍵コメ様、よみが深いですね。
チャールズ皇太子がというところがとても意外でしたが、
いろいろな意味で意義ある学院だと思います。
Commented by miriyun at 2013-02-06 18:51
谷間のゆりさん、いい言葉ですね。
ぶつけ合い、永遠に失うことより、新たな文化と接点を持つことでたくさんのものが生みだされていくことを望んでいる



<< 高橋大輔風”月光”へSP変更      本田孝一氏作品*今度はクリステ... >>