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2012年 05月 31日

ジャヤワルダナ大統領の言葉・仏陀の心

 高徳院は鎌倉大仏が鎮座する寺院。
大仏殿のあったはずのところの脇にひっそりと建つ石碑がある。

石碑に表された仏陀の心     
ジャヤワルダナ大統領の言葉・仏陀の心_c0067690_14261320.jpg


 その石碑は、1991年に建てられた。 だが、刻まれている内容は、その建立の40年前にさかのぼる。
私は十数年前に、この石碑によって、この知られざる国の元大統領の慈悲の心が現代の私たちに伝えられたと思ってこれを読み感じ入った。

 あの太平洋戦争という大きな戦いで大きな犠牲が伴われた現実、賠償金がいくらかでも手に入れば戦後の国を立て直しやすいという現実・・・
ジャヤワルダナ大統領の言葉・仏陀の心_c0067690_14262096.jpg

 その時、ジャヤワルダナ(石碑にはジャヤワルデネ)前スリランカ大統領(当時は蔵相だった)という人物は、そうしたことを考えなかった。戦勝国や被害国の利害がドロドロに混ざり合う国連の場で、また講和会議の場で、仏陀の心に沿って考え意見を堂々として述べた。そればかりか、自国の賠償請求権を放棄したのだった。
 そればかりでなく、アジア全体を視野に入れ、日本という国を国を分割してしまうよりも日本をアジアの平和で健全な国として迎えることの方が、この後のアジアのために大事なことだというのだった。

 これは日本人として知っておくべきことである。

 久しぶりにこれを見に行ったら、顕彰の内容をあらわした文章が雨風や台風などの木切れによるものか、いたく傷ついていた。木立の陰では読みづらいほどなので、とても残念だった。この文字のところが直されればいいのだが、この中村教授も亡くなられた現在、直される当てもない。せめて、これを作った中村 元教授の思いと、知っておきたい人物の言葉をここで紹介したい。

顕彰碑誌の写し
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ジャヤワルデネ前スリランカ大統領
        顕彰碑誌
この石碑は、1951年(昭和26年)9月、サンフランシスコ対日講和会議で日本と日本国民に対する深い理解と慈悲心に基づく愛情を示されたスリランカ共和国のジュニアス・リチャード・ジャヤワルデネ前大統領を称えて、心からなる感謝と報恩の意を表するために建てられたものです。


大統領(講和会議時は蔵相)はこの講和会議の演説にブッダの言葉を引用されました。
そのパーリ語原文に即した経典の完訳は次の通りであります。

『実にこの世においては、恨みに報いるに恨みを以てしたならば、ついに恨みの息むことがない。恨みを捨ててこそ息む。これは永遠の真理である。』(「マパダ5」)

ジャヤワルデネ前大統領は、講和会議出席各国代表に向かって日本に対する寛容と愛情を説き、日本に対してスリランカ国(当時はセイロン)は賠償請求を放棄することを宣言されました。
 さらに、「アジアの将来にとって、完全に独立した自由な日本が必要である」と強調して一部の国々が主張した日本分割案に真っ向から反対して、これを退けたのであります。
 今から40年前のことですが、当時、日本国民はこの演説に大いに励まされ勇気づけられ、今日の平和と繁栄に連なる戦後復興の第一歩を踏み出したのです。
 今、除幕式の行われるこの石碑は、21世紀の日本を創り担う若い世代に贈る慈悲と共生の理想を示す碑でもあります。この原点から新しい平和な世界が生まれ出ることを確信します。

                1991年(平成3年)4月28日
                ジャヤワルダネ前スリランカ大統領
                顕彰碑建立推進委員会
                東京大学名誉教授
                 東方学院院長    中村 元    謹誌
                                        (以上、石碑の顕彰誌を忠実にうつした)
~~~~~☆~~~~~☆~~~~~☆~~~~~☆

ジャヤワルダナ大統領の言葉・仏陀の心_c0067690_14262535.jpg
                                                                                                                                                                                                           
                                       
                                                    
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by miriyun | 2012-05-31 07:07 | Comments(10)
Commented by ぺいとん at 2012-05-31 10:06 x
慈悲とはこのようなことにこそ当てはまる言葉だと感じました。 
本当に素晴らしい大統領ですね。 
いつか、必ずこの碑を訪ねます! 

大統領や中村元先生のような心の方が、あらゆる宗教の中にもっと多く居られれば世界は平和になると思うのに・・・残念です。
Commented by 谷間のゆり at 2012-05-31 10:10 x
知りませんでした。スリランカが戦時賠償を放棄し、日本の分割に反対した事を。
この精神が世界の為政者にあれば、世界が平和になるのにと思います。
このことをもっと大勢の人に知って欲しいですね。
Commented by Lunta at 2012-05-31 10:47 x
ジャヤワルデネ大統領のことは昨年スリランカに行って初めて知りました。日本の大恩人なのに知らないとは、恥ずかしいことですね。
ましてや鎌倉にこのような顕彰碑があろうとは。
慈悲はどの宗教もが説くところだけれど、それを実践するのが難しい。
スリランカは仏教が普段の生活に浸透している国だからこそ実践が可能だったのかもしれません(その国でさえ長年内戦が続いていたのが難しいところですが)。
Commented by Cisibasi at 2012-05-31 21:03
今晩は〜
仏教国であるはずの日本が、一番仏の教えと遠い所に有るのが情け無いですね。
戦争を起こした事だけで、過去の日本人を責めるが、
過去の日本人が居たから、今の日本が有ると言う事実を、
海外から見た目で、知らされると言うのは情け無い。
鎌倉大仏に、こう言う記念碑が有るのは知りませんでした。
一度訪れて見たいですね。
台湾や、沖縄に行くと、戦前の日本人の姿が、別の目で見れます。
一期一会(首相が言っている意味は全然違いますが。)以外にも、日本人が失ったものは多いと思います。
大正デモクラシーが、
戦争翼賛の昭和に変わったのは、閥族のエゴが大きい。
今、又、同じような状態に成ってきているのが怖いです。
(この方も入れて)先人の知恵を活かせる社会で有りたいですね。
Commented by ジョー at 2012-06-01 05:56 x
この碑が1991年いたてられているところが興味深いです。1991年と言いますと、私がちょうど高1の頃なのです。つまり鎌倉の高校に通い始めた歳です。良いご紹介を有難うございました。
Commented by miriyun at 2012-06-03 06:57
ぺいとんさん、鎌倉に行かれる機会があったらぜひ大仏の左手の木陰をご覧くださいね。
 じつは中村元教授についてはよく知らなかったので調べたらこちらもまたすごい人物でした。
Commented by miriyun at 2012-06-03 07:01
谷間のゆりさん、日本政府はスリランカへの気持ちは忘れてはいないだろうと思ってはいるのですが、世代交代が進む中政治家だって、国民だって、戦後の日本がどんなにたくさんの危機があってそれを日本人だけでなく他の国からの思いもあってこうして日本という一つの国としてやってこれたということを忘れてしまうことも考えられます。
 やはり、長く残る石碑にするというのは大事なことなのですね。
Commented by miriyun at 2012-06-03 07:03
Luntaさん、そうですか、スリランカで聞いてこられたのですね。
こうした歴史の分岐点ででの影響を持った国というのはもっと教科書にだって取り上げていいのではないかと思います。
慈悲という言葉がほんものの重さを以て感じた石碑でした。
Commented by miriyun at 2012-06-03 07:08
Cisibasiさん、仏教とは自分自身も遠くにあると感じているものでした。
でも、こうして仏教における慈悲の心を示されると、
仏教ってなんだっけという哲学的好奇心がわいてきました。
それとともにこう言い切った大統領の言葉にはほんとに頭が下がります。
Commented by miriyun at 2012-06-03 07:09
ジョーさん、鎌倉は歩き回るといろいろな思考につながってくるところがあります。
やはりそれはたくさんの歴史を培ってきた古都だからでしょうか。


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