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2010年 05月 23日
T.E.ロレンスとヨルダン王家の誕生 トランス・ヨルダン王国の成立とT.E.ロレンスは密接につながっている。 ヒジャーズ地方のシャリーフ、フサイン・イブン・アリーには男子が4人おリ、長子のアリはそのままヒジャーズの最後の王となる。次男アブドッラー王子と三男ファイサル王子が1916年のアラブの反乱に参加した。そして、ファイサル王子のほうにイギリスからの顧問としてT.E.ロレンスがついていたのだった。 王子たちと、族長とT.E.ロレンスがアカバ攻撃やダマスカス入場を果たしてオスマン・トルコからこの地を取り返した。これが、英仏の帝国主義国に対してアラブが独立を要求していく力となった。つまり、影で動いた3つの密約等によって、大きな禍根を残すことになるのだが、この当時としては独立運動をして、それにはロレンスの考えや作戦も価値あるものであったのだ。 1920年、ダマスカスでのアラブ民族会議でアブドッラーはイラク王に、弟のファイサルはシリア王に選出された。同年6月フランスのダマスカス占領及び弟のファイサルのシリアからの追放が起こり、これに対して、アブドッラーはファイサルのシリア王権を支持するために軍を率いて北上した。このときもヨーロッパで開かれた国際会議にロレンスはアラブ側の事情通としてファイサルに付き添い王国維持のために援助している。 イギリスはヨルダン川東部の広大な乾燥地帯にトランスヨルダン王国の建国を認めると提案したために、アブドゥッラ-はこれを受け入れ、トランスヨルダン国王、アブドッラー1世となった。しかし、イギリスの委任統治領の地位であったため、正式な独立は1946年となる。1949年には今の国名ヨルダン・ハシミテ王国となる。 したがって、ヨルダンの祖、アブドッラー自身がロレンスと近かったわけではないのだが、ここまではともに戦う同士だったわけなのだ。 アブドッラー1世暗殺事件 アブドッラー1世はその独立からわずか5年後、エルサレムのアル・アクサー・モスクに孫のフセインをつれて礼拝しているところを暗殺された。そして、このときフセイン王子も撃たれたのだが、アブドッラー1世が孫につけさせていた勲章に弾丸が当たり助かった。 このあと、タラール1世が即位するが、わずか1年で、息子フセイン王子が地位を継ぐことになった。 映画『アラビアのロレンス』とフセイン国王のロマンス ![]() わずか、16歳で即位(正式には17歳になってから)しフセイン1世となり、少年王として難局続きの中東・国際関係を乗り切っていくことになった。フセインは19歳で6歳年上の女性と結婚させられているがすぐに離婚している。結婚は4回繰り返したが、同時に妻を持つことはしていない。離婚や死別によっての結婚だった。 ◆フセイン国王は、リーン監督の『アラビアのロレンス』撮影に当たって、部下達のエキストラ出演など、全面的に協力したのはなぜか。 ――――それは建国の流れとこの映画が関係あるからだ。まさに1918年のアラブ軍の砂漠の反乱(アラブ側からいうとアラブ独立戦争)を描く映画であり、祖であるアブドッラー1世については映画でほとんど触れないとはいえ、ヨルダンの歴史に大きく関わるからであろう。 熱心な国王は撮影現場に何度も足を運び、部下達がエキストラとして働く現場を何度も視察のために訪れていた。そのとき、撮影現場で秘書アシスタントとして働いていたイギリス人、アントワネット・アヴリル・ガーディナー20歳と知り合う。王は26歳だった。適齢期だったのだ! 彼女は1961年5月25日のフセインとの結婚後、ムナー・アル=フセインと改名し、1962年の第一子アブドゥッラー誕生後は「ムナー・アル=フセイン王妃」と称され、離婚してもその称号を認められている。(Wikipediaを参照した) フセイン国王は長くきわどい中東の国際問題の中で手腕を発揮し、優れた王であった。兄弟を跡継ぎとしていたが、国王は晩年、このムナー・アル=フセイン王妃、つまりアラビアのロレンスの撮影で知り合ったイギリス人女性との間に生まれたアブドッラーを跡継ぎに指名して世界は驚いたのだった。 アブドッラー2世 ![]() そして、今そのイギリス人女性との間に生まれたアブドッラー2世は、パレスチナ人のラニア妃とともにヨルダン王室をしっかりと運営している。 そればかりではなく、若手の王族・政治家の中で群を向いて活動的で、各地での演説等を聞くとこの人物には確かにあの嵐の中東を乗り越えてきたフセイン1世の血が流れていると思わせられる。たびたび来日しているのにほとんどこの若きリーダーのことを報道しないメディアにいつも物足りなさを感じる。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ *最後にヨルダン・ハシミテ王国の王を再確認すると、 ①アブドッラー1世・・・②タラール1世・・・③フセイン1世・・・④アブドッラー4世と、続いてきている。 フセイン王は若い時、今のアブドッラーに近いかんじがした。またアブドッラーは年を経るごとにしまってきて、フセインに似てきている。 ◆ ヨルダン・ハシミテと書いてきているが、実際はハーシム家のヨルダンと言う意味でムハンマドから続くアラブ世界きっての由緒正しき家である。 オスマンの支配下から抜け出ようとして、イギリス・フランスの思惑の中でに利用されながら、それでもイギリス人ロレンスも関係して建国した国であり、その位置からパレスチナ問題にがっぷり組み込まれている宿命がこのときからある。 そんな宿命ともいうべき難しい立場にありながら英邁で行動的なリーダーである国王がイギリス人の后とをもち、その人を母として生まれた現王がいて、現アブドッラー2世は、パレスチナ人の后を持つ・・・。 ここまでの歴史を見ていくと、大きな歴史の渦の中で翻弄されつつも、国籍と民族に関わらず人間そのものを見つめて進んできたヨルダン王家が見えてくる。3代目が日和見といわれつつも、この渦中におかれた小国を維持し、4代目が新しい秩序を模索し続けていることが頼もしく感じられる。 ⇒ ⇒応援クリックお願いします。 ![]()
by miriyun
| 2010-05-23 09:48
| ヨルダン
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Comments(10)
現国王の母上がイギリス人なのは知っていましたが、フセイン国王とのなれそめが「アラビアのロレンス」の撮影だったとは!
ということはデビット・リーンが仲人さんてことになるのでしょうか。 miriyunさん、いろんなこと、よくご存知ですねー。いつものことながら感心してしまいます。
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アラビアのロレンスからヨルダン王家へ。歴史、社会、文化、人は、それぞれが絡み合っているのですね。
とくに中東は複雑でわかりにくく難しく感じるのですが、映画から解きほぐして現実の国王につなげていただくと、血の通ったものになり、有り難いです。興味がわいてきます。
こんにちはおばばです。
miriyunさん、久しぶりに元ヨルダン国王フセイン氏の写真をみました。 おばばは、いっときこの国王に恋していた時期がありました。 勇敢で優しくソフトでおばばの理想の男性で憧れていました。 ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
luntaさん、王様はあの熱い岩山と赤い砂の地で恋を語ったのでしょうか。
デートにはお砂糖どっぷりのシャーイがのどと心を潤したことでしょう。 デビッド・リーンを初め映画関係者はきっと結婚式に呼ばれたのではないでしょうか。
orientさん、アラビアのロレンスへの評価は様々ですし、とても簡単には語れないですね~。
でも、中東の歴史をひも解けば、やはりアラブ独立戦争はアカバとダマスカスが要だったと思います。 アラブの力をアラブの中にアラブの衣装をまとって入って牽引していったことは否定できないし、ここから始まる王家の存亡も激しいものですね。
えるだーおばばさま、
フセイン国王、かっこいいですよね、年をとるほどに尚更エレガントで、魅力的な人ですね~。 そして、心は獅子ですが、女性に対してはとても優しそうです。 世界中であこがれていた人が多いのではないでしょうか。
私の知識は小学校の頃に見聞きしたときの物なので、
4度の結婚があったことまでは知りませんでした。 となると私がヨルダンで購入した国王と王妃のはがきの 王妃は誰!? 国王の年からいうと最後かな? イギリス人の嫁だと思っていたんですけど。。。 ヨルダンに行った時に、国王の容態が悪いと聞きましたが、 その年に亡くなったんです。物価が高いのには驚きましたが アンマンが想像を超えて開けていたのにビックリでした。 ラニア王妃が結婚した時にアメリカのドキュメント番組で 取り上げられていましたが、パーフェクトですよね。 フセイン国王を素敵だと思ったのは私だけではないんですね?!
adeliaeさん、フセイン国王のファンはおそらく世界中にいると思います。
でも、adeliaeさんのように小学生にして、この渋さがわかるのは珍しいですね~! なお、お后ですが、フセイン王の晩年、王に寄り添ったのはシリア生まれのアメリカ国籍をもつヌール后でした。 |
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