2010年 04月 17日
冬のごとし!1 「12月、やけに暖かい日が続いて、菜の花など先、ツクシも生じ、陽気は3月のごとし。 翌春、さあ、本格的な春で尚更暖かくなるだろうと思っていたが、 冬と入れ替わって寒気甚だしく、その上雨の降る日が多く晴れの日はがまれだ。 さて、5月になれば暑気の季節になっていくはずだが、田植えのときになっても寒さがまだ消え去ることなく、 人は皆、綿入れを着て、火にあたる。」 ・・・・これは、じつは1782年の12月から1783年の5月までの様子である。(『農喩』より、意訳して引用} 冬のごとし!2 かたや、4月の日本では・・・ 冬のコートを店頭に出すとよく売れる。春・夏服が不調で売り上げが下がったユニクロ。ドラッグストアではホッカイロありますか?と言う客が多いので急遽店頭にホッカイロを並べた。灯油を買いに行く人がいて。灯油代も値上がり気味。クリーニングにだしたコートやダウンウエアをもう一度引っ張り出した。植えた菜園プランターのトマトが枯れた。野菜が高い・・・などと言う話が、この2010年4月の話題だった。 異常気象なんてものは長い地球の歴史からするとちょっとしたことで、異常異常と騒ぐほどのことではないかもしれないが、それが人間の生活や食糧に関係するとしたならば笑っていられる段階ではなくなる。花見の時期とゴールデンウィークが重なるかなどと言う段階ではなくなる。 だから、大分前から気になっていた。 アイスランドの火山噴火・・・エイヤフィヤトラヨークトル(Eyjafjallajokull)氷河 そこへ今月、4月14日のアイスランドの火山噴火。大規模火山噴火で噴煙が8000mまで上がり空の便が火山灰のため大混乱している。すでに17000機が運休した。各空港の閉鎖によって家に帰れない・仕事にいかれない、ヨーロッパ旅行はどうなるの・・・多くの方の悩みはこういったことではないだろうか。 噴火はアイスランドの南部、海岸に近いところでおき、その噴煙は南東に向かって流れ、北海上空に及んだ。そこからさらに風に乗ってイギリスはもちろんフランス・オランダ・ベルギー・ドイツ・デンマーク・フィンランド・スウェーデンなど22カ国に及んでいる。おそらく今後、物流にも大きな影響をもたらしていくだろう。 ◆アイスランドの火山 アイスランドは氷河が多いし、温泉が豊富で美しい国であると知られている。しかし、この国は火山学者にとっては特別な存在といっていいだろう。 北米プレートとユーラシアプレートの境にある中央海嶺の真上にある国がアイスランドである。地球の割れ目にあたり、そこから大量のマグマが噴出する。 人類が有史以来見てきた火山活動はローマ時代のポンペイや、神話の時代のできごとなど数え切れぬほどある。だが、人間が映像として残したもののなかで、とくに印象に残ったのはアイスランドの噴火であった。ヘリが飛んでいく先に一列にプレートの境そのもののように蛇のように連なるマグマの噴出口、あぁ、まさしく地球は生きていると思ったものだ。 そこでまた、噴火が起きた。昨年の夏からの噴火だと言うが、ここへきて火山灰の量が激しくなったものである。数ある世界の火山の中でも不定期に大きな噴火を起こす火山、その規模はほかの火山の規模とは全く異なる。 18世紀の冷たい夏・・・浅間山とアイスランドのラキ火山 アイスランドの噴火、小さく載っていた浅間山の警戒度を下げたと言う記事、今朝横浜に降ったアラレ、 これは、自分にとって『農喩』記載の言葉を思い出させ、次のできごとを思い出させるに充分な刺激だった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ◆1783年、冷たい夏◆ 寒くて冷害の予感に恐れおののいていた農民達にとっておどろくべきことがおきた、7月、いつもは小さな噴煙を上げている浅間山が数日に渡って大噴火をおこした。村を丸ごと溶岩が飲み込み火山弾が降りそそぎ、火山灰は高く高く吹き上げられ、太陽を遮り関東・東北に降りそそいだ。 太陽を遮断されたことによって、寒い夏におびえていた人々は絶望を突きつけられる。イネは曇天の中、育っても稲穂の中身は空であった。 ききんである。 こうして始まったのが◆天明の大飢饉である。 広域でのききんの怖いところは長期化することである。 農民はふつう食べたくても種籾だけは残しておくという誇りを持っている。ところがこういう大きなききんでは命が失われるわけであるから翌年の事など考えられない。まず今を生きるために種籾も食べる。もちろんのやまや海の植物・昆虫・動物は食べつくす。ふだんは大事にして消しいて食べない馬だって畳だってござだって、革製品まで食らってしまう。 東北を歩いていてたまたま見ていた学者がいる。「解体新書」の翻訳で名高い杉田玄白は『後見草』という手記に『食べられる限りのものを食べ尽し~』と言うように表現している。 それでも餓死していったのである。 こんな状況であるから、翌年も人ではない、種籾はない、藩からの救いはないということで農村は疲弊したままで数年に渡ってききんは続いてしまう。歴史上悪しざまに言われる田沼意次の改革、新田開発・新しい外交と貿易の道はこれによって閉ざされ、失脚した。 ◆ヨーロッパの冷たい夏 浅間山と同じ1783年7月、遠くアイスランドのラキ火山が噴火した。 この大噴火の規模は、まず噴火口が長さ25kmにわたり、そこから溶岩が噴出し続けた。それも8ヶ月もの長期に渡る。二酸化硫黄を含む火山ガスが高度10000mの成層圏まで達し、それがジェット気流に乗り北半球を覆った。 太陽は覆われた火山灰やガスの向こうにうっすらと存在が確認できる程度で、しっかりと陽が当たることがなくなり、平均気温が下がり、農作物は壊滅的な打撃を受ける。アイスランドはもちろん欧州各地でききんとなり、フランスでは小麦の不足・高騰により、「われわれにパンを~!」という主婦や市民の運動になっていく。 王と王妃の処刑にまで及んでしまうフランス革命である。 ・・・火山噴火は体制まで変えてしまうものなのだ。 国民を飢えさせないこと 天明のききんでもフランス革命でも、感じることは政治家は国民を飢えさせないために全力で戦わなければいけないということだ。使命感を持って、あらゆる障害を排除しても飢えさせないための対策を事前に重ねていかなければならない。 天災はどうにもならない仕方がないことだと思ってはならない。信念を持った政治家は対策を練るものだ。ききん対策のために米保存を呼びかけた策はそのあとやってきた中・小規模のききんには役に立った。名君、上杉鷹山のひきいた極貧の藩は、農民から武士、そして君主まで粗食であったが、君主自ら作らせた野草の食べられるものを書き出させ農村に配布し、家の垣根には食べられるものを利用し、ききんにおいてその後、餓死者を出さなかった。 また、江戸時代全般にわたって幕藩体制の中で、物流への配慮と米を販売する商人への対策を積極的にやらなければならなかった反省点も残る。 マニュフェストに縛られこね回し言い訳を考えるより、国民を飢えさせない、国民を守る――そういう確かな理念に基づく政策が今後求められる。 長い歴史のある日本は、見習うべき史実に事欠かない・・・。 ⇒ ⇒応援クリックお願いします。
by miriyun
| 2010-04-17 09:33
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Comments(8)
飛行機が飛ばないと不服を言う前に、もっと大切な事に思いを寄せなければ活けないのではと思って居ましたら、天明の飢饉の時にアイスランドの噴火が有ったということ、政治家は基地問題より大きな問題に気を向けて欲しいですね。
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asiax at 2010-04-18 06:20
大規模火山噴火による噴煙の拡散と太陽遮断による気温低下、それによって飢えや略奪がおきて国の治安が乱れるという、一連の出来事が歴史の中で登場するということは聞いたことがありましたが、まさにこのことだったのですね。
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miriyun at 2010-04-18 12:15
谷間のゆりさん、アイスランドの噴火も含めて気になることが続いています。想像以上にいろんな影響があるでしょうし、冷静に事実を判断できる人がいないと先を見越した対処をできないで、ほんとうに植えることから安全保障まで不安を感じてしまいます。
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miriyun at 2010-04-18 12:18
asiaxさん、噴火の影響はEUだけでなくもっと広い範囲になる可能性もあります。
そして、1780年代はラキ火山・浅間山だけでなく世界的に火山の活動が激しかったといいます。地震も含めて気になるところですね。
考えさせられる記事です。
一般市民も、国を治める者も、自然災害に備えて、柔軟な頭が必要とされますね。いざという時に、あたふたせずに済むよう、普段から対策を考えないと。 最近、大地震も多いですし、何かの前兆.....? ところで、火山灰、遂にトルコにまで達しました。黒海沿岸で観測されています。明日はイスタンブルに達する予報です。空港、大丈夫なんでしょうか。心配ですね。
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miriyun at 2010-04-20 06:58
yokocanさん、
トルコまで達しましたか、一カ国ごとの情報が報道されていないので、それぞれの詳細はわかりませんでした。今回火山ガスが多いということですが、目に見える形で火山灰が落ちてくるものなのか気になるところです。1~2年前の浅間の噴火では横浜まで火山灰がきました。 政治の不安定な時代に不安定な自然、危なっかしいですね!
こんにちわ。しばらくです。
私のブログにコメントを付けてくださって有難うございました。 アイスランドは北海道より少し大きいくらいの島で、人口は31万だそうです。こんな小さな島にあれほどの火山が集中しているとは驚きです。 また、少し前にはアイスランドは金融危機で大騒ぎになったこともありましたね。なにかと騒ぎが多い国ですね。 では、また。
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miriyun at 2010-04-21 23:32
雄平さん、アイスランドは思ったよりも小さいのですね。
そして、世界的な大噴火、でもアイスランド国民は達観しているのと、もう一つは210ページにも及ぶ防災マニュアルがあって、噴火・洪水そのほかいろいろな災害に備えているので慌てることがなかったそうです。 |
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