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2009年 08月 01日

武将の時代の象嵌

1.トルコの兜に見る象嵌
武将の時代の象嵌_c0067690_234124.jpg

                              ↑ トプカプ宮殿
 16世紀のスルタンの兜。
アラビア文字と宝石による儀礼用兜。スルタンの道具についてはほとんど金の象嵌が行なわれていた。
アラビア文字の部分は金の象嵌が行なわれ、る。文字であるだけにその幅や曲がりしなり、難しいところが数多くあるはずだが、きっちりと仕上げている。

2.武士の鎧兜や鐙への象嵌

☆銀象嵌花菱内菊水之鐙(あぶみ)
武将の時代の象嵌_c0067690_2325627.jpg

 江戸時代初期、17世紀の作。鐙(あぶみ)を正面から見ると、鳩胸とよばれるふくらみがいくつかあり、その複雑な形に上に花菱が描かれている。
これが極細の銀の象嵌が行なわれた工芸の実際である。

ふつう、装飾はここまでで充分かと思うのだが、日本の工芸職人のすごいところは足を乗せてしまって見えなくなるはずの踏込(ふんごみ)のところまで、入念な銀象嵌をほどこしてしまうところだ。


武将の時代の象嵌_c0067690_2371043.jpg

                              (佐竹史料館の許可を得て撮影・掲載しています)
 
 文様は菊水、日本ならではの水の表現は数限りなくあるが、ここでは菊花浮かび小刻みにゆれるが穏やかな流れを華麗にあらわしている。

  そして、紋板の外側に、加賀藩の象嵌師として知られる勝九郎吉則の銘がある。江戸時代の作であるが、渡来した技術であった象嵌が発達したのは京都であった。しかし、その後大名家の武具などへの象嵌や金箔使いのものについては加賀が発達したのだった。

 武士社会における美意識と日本の職人魂が作り上げていった作品である。

                                                   
                                       
                                                    
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by miriyun | 2009-08-01 22:47 | Comments(2)
Commented by orientlibrary at 2009-08-02 11:06
日本の工芸の優雅さ、確かさ、美意識を、強く感じました。鐙ですか、、すごいですね。渡来の技術を、あたかも千年の歴史があったかのように、日本のものにしていますね〜。模様も本当に
洗練されていて、形もきりっとして、、
各地の博物館には、このような工芸がたくさん展示されているのでしょう。ちゃんと見ていないことを感じます。すばらしい日本の模様、工芸を、これからはもっとたくさん見ていきたいと思いました。
Commented by miriyun at 2009-08-03 06:16
orientさん、鎧兜はもとより、鐙や鞍は実戦におもむく武将にとって重要なものでした。だから想像以上にこういったものに気を入れて作らせたようです。鞍の装飾などいろいろな博物館で見た記憶があるのですが、照明が暗すぎる、解説の文字が小さかったり、名前だけで解説がないなどで、興味がわきにくい原因が何かしらありました。
 ほんとうはすごい、日本の工芸・・・先日のイランの子ども向きの絵本のように「わかる工夫や解説」を博物館も考えて行って欲しいものだと思います。


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