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2008年 07月 27日

「死者の書」は語る・・・パピルス(6)

 パピルスに書かれたものに何が多いかというと、「死者の書」、数学の勉強を教えている教科書タイプのもの、そして時代が下ってギリシア文明が現れてからは哲学や文学もあるし、もっと後にはキリスト教の聖書も書かれた。

 だが、エジプト文明の中で最も力を入れて描かれたのは冥界への道を示した「死者の書」であろう。では、どのように書かれているものであったのか。

1、パピルス文書「死者の書」は語る
「死者の書」は語る・・・パピルス(6)_c0067690_951218.jpg
          ↑パピルス文書を逆光で見る。
 縦横にパピルス繊維がはしっているので、水平に書くことなどには便利だ。
左側から右へと見ていく。
① この絵の前段階で36か条の否定の告白をおこなってきている。
 「人に対して悪事を働いたことはありません」
 「神を冒涜したことはありません」
 「家畜を虐待したことはありません」
 「人を殺したことはありません」・・・・・・など
                          (①・⑤は『ナイルの王墓』講談社より引用) 
② 36か条の否定の告白をした白衣のフ・ネフルはアヌビス神に手を引かれ審判の場にやってくる。
③ 天秤ばかりの中心には正義と真理を表すマアト神が描かれ、この女神の頭の上にある羽毛が右の天秤皿におかれている。また、左のてんびん皿には死者の心臓が置かれる。 
④ 中央に座ったアヌビス神は死者が申し述べた「否定の告白」が正しいかどうかをはかっている。
⑤ 文字の上の段に居並ぶ42の神が告白の真偽を最終的に判定する。
⑥ その結果天秤ばかりの右に立ち、葦ペンを持った書記の神トート神が記録する。
⑦ そして偽りを述べていたならば、死者はこれ以上進むことを許されず、天秤の下にしゃがんでまっているワニが襲いかかってくる。

  ・・・・・・・・かなり、リアルに感じとれる絵であり、まずいことをして生きていてはいけないと思うこと必定であろう。 

「死者の書」は語る・・・パピルス(6)_c0067690_952813.jpg

              ↑死者の書全体像を見る(写真は自己所有のレプリカを撮影したものである。) 

 続きを全体像で見てみよう。
⑧ 死者の告白が正しいと認められると次の段階に入っていく。死者はオシリス神の息子、ホルス神(隼の神)神に導かれて、祠堂のなかのオシリス神のもとに行く。
⑨ ここまでくると、死者はオシリス神に化して復活が約束される。

◆  これは、フ・ネフル(第19王朝、大英博物館蔵)の死者の書。時代は新王国、紀元前1300~1200年であるが、傷みも少なく優れたパピルス文書として所蔵されている
 多くの宗教書がそうであるように、ここでも善なるものだけが来世での幸福を約束される。こういった内容や呪文が延々と長くつづられているのが死者の書なのだが、この125章がもっともエジプトの審判と来世への希望を表しているといわれている。

 これを廟墓や棺の中において、死者が迷いなく旅立ち、オシリスに化して、いつか復活してくることを願ったのである。だから、未盗掘の墓からは発見されるべき物であるが、なぜか未盗掘のツタンカーメン王の墓からは発見されていない。

2、ツタンカーメン王墓の謎 
◆まず、謎とされること。
・ツタンカーメンの死因は?・・・・ツタンカーメンの父アンクアテンはアテン神への一神教への強引な変革と首都移転によって、神官から恨みをかっていた。そのあとをついだ少年王の周りは政争のまっただなかにあった。
・盗掘されかけてなぜかその後閉じている。・・・普通の泥棒はそんな放置の仕方はしないだろう。
・きちんと普通なら整頓して納めていたはずの日用品が乱雑に動かされている。・・・何かを探した後のようだ。
・一番目の厨子の封印まで開けられている。なぜ、ここだけなのか?ここまでで目的のものを見つけたのか?
・普通ならあるはずの死者の書がない。

 これについて、吉村作治教授の推理がTV番組で紹介されていた。
これらから吉村教授が予測したこと。
 ツタンカーメンは何らかの政争の中で命を失った。このとき、それを察知したアンケセナメン王妃は、この赦されない行為がおこなわれたことを「死者の書」に書き、それをこっそりと一番外側の厨子の中に人目を盗んで入れたのではないだろうか。それを察知した人が、自分の悪事を冥界の王オシリスや真実の神マアトに知られては自分の来世が失われてしまうことを恐れた。そのため、いったん墓を封印した後、盗掘のようにして、入り込み文書を探すがみつからず、第一の厨子まで探してようやく発見、これを持ち去り、他の宝物には一切興味を示さず、また埋め戻して去った。

 なにぶんだいぶ前にTVで見たことであり、言葉や解説が吉村教授の解説と異なってしまっているところもあるかもしれないので、おおよその紹介ということでお許しいただきたい。(詳しくは吉村先生の著書やレポートでご確認ください。)

3.語る 
 吉村教授の話を聞いて思った。
 「死者の書」が語る古代エジプト人の死生観、そして「死者の書」の重要性を知っている専門家ならではの発想である。それに考古学者には絶対必要な自由な発想、これがあってこその推理だと感嘆したものだった。

 「死者の書」は、エジプト人の来世への望みを語り、
    「死者の書が見あたらない」ことが、このドラマのような話を吉村教授に語らせた・・・
 
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by miriyun | 2008-07-27 11:06 | エジプト | Comments(8)
Commented by JOE at 2008-07-28 19:49 x
これを廟墓や棺の中において、死者が迷いなく旅立ち、オシリスに化して、いつか復活してくることを願ったのである。だから、未盗掘の墓からは発見されるべき物であるが、なぜか未盗掘のツタンカーメン王の墓からは発見されていない。
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Imato Nattewa Wakaranai Nazo.
Sokode Watasitatiga Donoyouna Kotowo Sou Zousuru Kamo, Gendai Shakaiwo Tokiakasu Hintoni Naruyouna Kimo Simasu.
Commented by Azuki at 2008-07-29 00:24 x
いろんなところでドラマがあるんですね。歴史が苦手な私もこうして描いてくださると興味がどんどんわいてきます~☆
死者の書、う~ん引き込まれそうです。
Commented by kiwidinok at 2008-07-29 05:14
風神雷神図の風神といい、このエジプトの神々といい、どうして神は時として「緑色」で表現されるのだろうと、不思議に思いました。
確かに「この世のものではない」感じはしますが、善良な感じはしないなぁと思うのは、私だけでしょうか?(笑)
Commented by miriyun at 2008-07-29 11:58
ジョーさん、遠い過去・・・それが3000年前であっても、いろいろな要因を考えていくとこんなに推理できるんだとわかりました。
 ジョーさんがおっしゃるとおり、今現在の複雑な世も読み解いていかなければならないことが多いですね。
Commented by miriyun at 2008-07-29 12:01
Azukiさん、絵画が持つ情報量ってすごいものですね。特にエジプトは一目でわかるように書いています。ヒエログリフと同じに絵画も伝達のために徹底的に様式化されているように思います。
Commented by miriyun at 2008-07-29 12:04
kiwidinokさん、さすが、色を良く見ていらっしゃる。
 そういえば、人にはありえないすごい緑ですね。人ではないということをあらわすのに古代の人もこれがもっとも印象深く残る色だったのかもしれません。色には敏感なほうでしたが、今回は言われるまで緑で共通していることに気がつきませんでした。
Commented at 2020-06-25 12:26 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by miriyun at 2020-06-29 23:33
鍵コメ様
これまで本ブログの写真や記事についていろいろな依頼を受けてまいりましたが、どの依頼も自己紹介、利用目的を記載の上、利用可能かどうか尋ねて、連絡先を書いて申し込んでくるというも内容でした。
ところが今回、主に”死者の書の写真の利用”・ ”記事も参考にする”という2点についての「連絡」ということだけで、返事をするべきメアドの記載もありませんので、お返事のしようがなく戸惑っております。
動画にすでに掲載されているのを見て、やはり連絡だけで許可を受けようとしているのではないのだとわかり驚きました。
このような手順でのご利用は認めることはできません。
ぜひ、メアド等お知らせください。よろしくご対処ください。


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