写真でイスラーム  

mphot.exblog.jp
ブログトップ | ログイン
2008年 03月 20日

★聖母子像…博物館としてのアヤソフィア(1)

 アヤソフィアはギリシア正教会の要として誕生し1000年、モスクとしての500年という歳月を乗り越え、現在は近代トルコの父、アタチュルクによって博物館としての位置づけとされている。

 博物館としての存在なので、偶像崇拝をしないイスラーム時代に漆喰でおおわれていたモザイクは姿をあらわし、同時にイスラームのモスクとしてのミフラーブもアッラーにムハンマド・カリフの名も置かれたままに飾られる、他ではない配置になっているのである。

 
★聖母子像…博物館としてのアヤソフィア(1)_c0067690_16454365.jpg

 教会のアプス(後陣)といわれるところ。上の窓はイスラーム関係のアラビア語のカリグラフィーがデザインされたステンドグラスとなっている。このステンドグラスの底辺までですでに数mの高さがある。右下にミフラーブの頭部分が見える。
 さらにその上を仰ぎみると、聖母子像がモザイク画として残されている。見事なモザイクといわれるが非常に高い位置で暗いので見えにくく、実際は見事かどうかわからない。

 そこで、今回はその像をじっくりみられるように撮ってきた。
★聖母子像…博物館としてのアヤソフィア(1)_c0067690_16464465.jpg

                         ↑後陣の頂点にある聖母子像
 聖母マリアの表情がいい。アヤソフィアには他にも聖母子と皇帝の像などがあるが、これが最も人間らしい。つまり人形のようなかたい表現でなく内面性がでているような表情がいい。キリスト教の教会の人間の表現がとても苦手なのだが、時にいい表情の聖像に出会うことがある。これはその一つである。
 背景は金のガラスモザイクであり、ライトアップして光を当てれば美しい。電気照明のない時代はどこまでこの像を見ることができたのだろうか。
 もっとも昔の人は視力がいいから苦はなかったのかもしれないが、視力のよくない自分はこうしてはじめてじっくり見ることができたのだった。

 ☆アヤソフィア・・・・その長い歴史を現役で語る建物としてまれにみる価値ある建物といえよう。

 もっと古い遺跡はあるだろう
      もっと大きい建築物だってあるだろう
   
 しかし、建造されて以来、廃墟となることなく、常に人々の祈りの場であり、現在でも博物館として歴史の証人としてその存在が歴史を語っている重みのある建物・・・それこそがアヤソフィアである。

 そういう意味で、イスラーム・キリスト教のみならず、仏教・ヒンドゥー教・ユダヤ教の人々も大いに見て、宗教にこだわらずに素晴らしいところは素晴らしいと感じてほしいところだ。

 そしてつくらせたユスティニアヌス皇帝、つくったイシドロス・アンテミオスの二人の学者、修理した人。征服したが破壊せず温存したままモスクへ転用したメフメット2世、次の建築の手本をして仰ぎ見、実際にここ以上の大きさのモスクをついには建てたスィナン、それぞれの時代の粋を集めた工芸品を作った技術者たちの息吹き、を感じられればと思う。
                          一日一回応援ポチッをよろしくお願いします
~~~★~~~~~★~~~~~★~~~~~★~~~~~★

≪追記≫・・・高い位置の絵の描き方に関する考察
  聖母子像の顔ばかりに注目していて、他を見ていなかったのだが、ありがたいことに「ジョーのこころの縹渺(ひょうびょう)」のジョーさんから「聖母の指が長い」とご指摘を受けた。イエスの横の白い巻物がぼけているのが気になっていたので修復が良くないためかと思っていた。それにしてもこの手は醜いほどであるのでおかしい。そう思い、ある実験をPC上で始めた。
 そうしているうちに「イスラムアート紀行」のOrientさんからも「下から見ることを想定しているのではないか」というマトを射たコメントをいただいた。

 実はこの聖母子像の描かれた場所は一番上の写真にあるように左右にも曲面であるし、上下にみると途中までまっすぐで、急にカーブが激しくなる超曲面なのである。

 そして上に紹介した私の撮ってきた写真は下から撮ったものではなく2階の回廊から無理な姿勢でできる限り正面から撮ったものである。また、もとはフィルムであり画像修正もコントラスト以外は行っていない。つまりまっすぐ見ればたしかに指は長すぎ全体の様子も不自然さが際立つのである。

◆そこで、これを下から見るとどうなるのか?壁のカーブにあわせた画像シミュレーションを行った。

 ほぼ直立していた壁面が腰の辺りから急激に曲がっていることに注目する。直立面は短く見えるものだからこのあたりは大きく圧縮した。また、イエスの手のあたりもまだ曲がり方が大きいところなので最下部から手の辺りまでをさらに修正した。マリア像の顔のあたりは変化しないかと思ったがやはり若干カーブがある、その曲面のカーブに応じた画像シミュレーションを行った。
★聖母子像…博物館としてのアヤソフィア(1)_c0067690_1441824.jpg

5段階にわたって画像に修正を加えた結果、下から見る人がこう見えるはずだという像がほぼできた。これで、手は若いマリアにふさわしい華奢な手になり、イエスのほそ長い身体も幼児らしい体型に近づいた。

 普通は高い位置にあっても遠くから見れば激しいカーブを感じることなく見ることができる。しかし。アプスはやや引っ込んだ半ドームでどうしても下から仰ぎ見ることが多い。したがってそれを想定し、かつ平面や曲面にあわせてどう描けばどう見えるということを徹底して科学した原画となっていたのである。古代からよく見せるための遠近法は存在しており、建築家や工芸家はそれを考えながら製作していたということを今回のことで強く感じた。

 皆さんのコメントで気付き、実験することで、高い位置のしかも超曲面に置く画像は早くからこんなに工夫がされていたということがわかったのである。
 ふ~っ、意義ある時間が持てたのがうれしい。感謝!
 
                           一日一回応援ポチッをよろしくお願いします

 

by miriyun | 2008-03-20 17:11 | トルコ | Comments(8)
Commented by horaice at 2008-03-20 19:41
アヤソフィアの母子像、改めてじっくりみせて頂きました。
横目の先にはなにがあるんでしょう。ちょっと気になりました☆
ほんと人間らしいですね。
Commented by ジョー at 2008-03-21 23:22 x
いいものはいいと素直に感じられるようでありたいと、私も常々思っています。
聖母様の左手の指でしょうか。
異様に長い様に少し驚きました。
ピアノを弾いたらさぞ、良い音色を奏でるのでは...(笑)。
良い週末を!
Commented by Azuki at 2008-03-22 02:48 x
浮かび上がるような姿にため息が出ます。
まわりを金のような明るい色で薄暗い中で人の目に飛び込ませて印象的にみせるような工夫に思えました。当時はもっとはっきりしてたでしょうからその印象は強そうですね。すごいです。
Commented by miriyun at 2008-03-22 08:01
horaiceさん、目線の先は何でしょう、何を思っているのでしょうと想像の余地のあるところがおもしろいでしょ!わたしもこの目まで確認できてとても好きになったんです。
Commented by miriyun at 2008-03-22 08:18
ジョーさん、よくご覧になっていますね~。
 聖母の手、異様に長いです。この絵の原画を書いた人がこんなアンバランスなことはしないと思うのですがどうでしょう。それに左手の周辺部はモザイクの滑落した跡があり、そこを修復したように見えます。そのときにイエスの手にあった巻物風の白いものと聖母の手がアンバランスに、そしてぼやけた感じになったものではないかと思われます。
Commented by miriyun at 2008-03-22 08:41
Azukiさん、気に入っていただけてよかったです。
 修復があまりうまくない様子が見えているので、完成当時はもっと美しかったものと思われます。うす暗い聖堂ではたしかに金を使うと目立つようになりますね。
Commented by orientlibrary at 2008-03-22 09:33
ずいぶん以前に行ったので記憶があやふやなのですが、このモザイク高い位置にありませんか??水平に撮っていらっしゃるのが謎!?
指の長さという話題であらためて写真を見て思ったのですが、、全体的に下にいくほど縦長になっている気が、、これって下から見上げることを想定して計算しているのかな?超あいまいな記憶ですが、バランスの良い聖母子像に見えたのですが、、もしももしも、その比率を考えて原画を作ったのだとしたら、、やはりすごいなあ!
Commented by miriyun at 2008-03-22 11:48
Orientさん、下のほうほど長く、下から見ることを想定したとおっしゃる通り名のです。ドンピシャです♪
 私もジョーさんに指摘されてからこの長すぎる指について考えてある実験をしてみました。壁が曲面であるためあるからかという仮設をたてて、ではその逆をやってみたのです。そのシミュレーション結果は長くなるので本文に載せますね。ご意見ありがとうございました。


<< 大天使ガブリエル…博物館として...      ベドウィンの生きる土地&親子ラクダ >>