2007年 08月 12日
イスタンブル、アヤソフィアのモザイクはビザンチン時代に作られた。 ☆ イエスに捧げる姿のモザイク アヤソフィア天井や回廊にモザイクが目に入る。いずれも高い位置なので皆上を向いて歩いていることが多い。この上の絵は、歴史上名高い二人の皇帝がイエスに捧げものをしている。 二人とも大変大きな捧げものをしている。 ユスティアヌス帝がアヤソフィアをイエスと聖母に捧げる。この絵から、前回示したように塔がない建物だったことがはっきりと分かる。 コンスタンティヌス大帝がビザンティン(今のイスタンブル)を捧げる。狭間胸壁のあることから街を取り囲む城壁を表している。 この二人が左右から捧げる絵は何を表すのか。このビザンティウムをつくったコンスタンティヌス大帝をあらわさず、アヤソフィアを再建しただけのユスティアヌスだけが、これをささげたというのでは、いかにも僭越なので、それを考慮して街そのものを神に捧げたのは大帝であったと絵に表したものだ。(10世紀) ☆ 残されたモザイク 本来、アヤソフィアができた当初は十字架以外の聖像はなかったらしい。その後増やされたドームやアプス(半円形にくぼんだところ)にあった聖像は、8~9世紀の聖像破壊運動によって、キリスト教徒の手で破壊された。そのあと、つくられたのが現在残っている10世紀からの聖像モザイクである。 1453年、オスマン朝のメフメット2世はこの偶像を壊させなかった。 結果的にはしっくいで覆って隠すという方法をとった。だから、長い歳月、オスマン朝でも実際には強硬な偶像反対者が出なかったとは限らないが、見えないのだからおおむね忘れ去られた。19世紀にアブドュルハミドによって一端しっくいを剥がして調査がなされたが、感銘を受けたスルタンはもう一度それを丁寧にしっくいによって覆った。なぜなら、そこはモスクであったから、そのままにはおくわけには行かなかったからだ。 同じキリスト教徒のものに破壊され、異なる宗教のイスラームによってしっくいで隠され、結果的に1000年の歳月を経たものが美しいままに残った。皮肉な歴史上の事実である。 ヨアンネス2世と皇后エレーネ(12世紀) ☆ 金のモザイクとは ガラス下地に金箔を貼りその上にガラスというようにしたしたモザイク片で絵を描いていく。どうもこのモザイクはろうそくの火で照らして、ガラスのつややかな光、そしてその背後の金が華やかに明るく光ることを狙ったようである。今は博物館であるからろうそくの火などともされることはないのだが、何か光があたればまぶしいほどの輝きを持つのは確かだ。 左にコンスタンティヌス4世、右に皇后ゾエ(11世紀)。そして背後の金地が光る。 これがろうそくであるなら、ゆらめく炎に照らされてもっと神秘的な光り方になるだろう。 ☆ 最高傑作! 窓のすぐ隣においてイエスの顔に日の光があたることを計算したのもある。 イエスがマリアとヨハネからの話を聞くディシス(請願図)と呼ばれるもので、これをもってビザンチンのモザイク美術の最高傑作といわれている。何を請願するのかなかなか資料がなかったが、『昭文社のまっぷるトルコイスタンブール』では、マリアとヨハネが人類を救うようにイエスに請願している・・・と解説していた。(13世紀) 左上から光。窓脇の壁によってマリアの顔は影になり、暗くなってしまう。使徒ヨハネはもともと暗く描いてある。イエスの顔は色のうすいガラスを多用して光があたると明るくうかびあがり、それが見る人の心をうつ。 まことに優れた絵にも見えるが、これがモザイクなのであり、また、ガラスモザイクならではの良さを生かした芸術であるといえる。 ◆ランキングに参加しています。ここを押して応援してくださると嬉しいです。
by miriyun
| 2007-08-12 18:59
| トルコ
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Comments(10)
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ぺいとん
at 2007-08-12 21:43
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漆喰で隠す・・・クリスチャンとムスリムのある意味知恵比べでしょうか。
その先人達のお陰でどちらの宝も今私達の時代が独り占め出来るようでありがたくもあります。 「日本人観光客、アヤソフィアの中でロウソクを焚いて逮捕!」などという新聞報道があればそれは私のことかもしれません!
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miriyun at 2007-08-12 23:33
ウフフッ!ぺいとんさんらしい反応で、思わず頬がゆるんでしまいました。漆喰は防火・落下防止・ひび割れ防止など結果としてはいいほうにばかり働いたようです。
『勝利者メフメト』といわれながら寛容な精神を発揮したメフメト2世がいまとても気になっています。
私が訪れた時、このモザイク画は薄暗い中にぼんやりと見える状態でした。だから写真も薄暗い写真になってしまったのですが、蝋燭の炎で照らすと一番きれいに見えるように作られたものなんですね。私も次は蝋燭持参で行きましょうか(冗談ですが)。
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miriyun at 2007-08-14 17:02
ちょっと位置が高いので撮りにくいですよね。照明器具・ろうそく・ストロボ・日の光それぞれに対して異なる輝き方をすると思いますので、見比べてみたいものですよね。
とくに通路の上のはじっくり止まってみることができないのが難点です。
サン・マルコ寺院でモザイク細工みてきました!内壁一面がゆらめく金色。大変にみごとなものでした。金のガラスモザイクは大昔はヴェネツィアの主要な輸出品だったそうですね。アヤソフィアのものはヴェネツィアから行ったのか、地元の工房産か、考えるだけでも楽しいです。
ヴェネツィアのガラスアクセサリーにも技法の一端が受け継がれて、キラキラきれいで欲しくなってしまいます(もっと安かったらいいのにな)。
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miriyun at 2007-08-20 19:03
Fujikaさん、ガラスモザイクはいつから盛んだったのでしょう。古くはウマイヤドモスクのグリーンの木々と街を表したモザイクがあります。これが8世紀はじめごろ、アヤソフィアで最も早いのは10世紀のものです。
サンマルコの再建が12世紀だったということなので、そのころには確立して輸出していたのでしょう。 細かいことはわかりませんが、オリエントの世界に始まり、ローマが発展させたガラスはそのご各地に広がっていき、12世紀からのヴェネツィアが徐々に他を寄せ付けないガラス技術を誇るようになったのには、このダンドロらが地中海貿易における覇権をヴェネツィアにもたらし、最高の材料をシリアなどから集める財力があったということのようです。 物の歴史も面白いですね。
現代のヴェネツィアの街にもガラス細工があふれていますが、今や輸出額は大したことないだろうなーと思って、つい「大昔」なんて適当なこと書いてしまって恥ずかしいです。ちゃんと勉強しなくては。
上から4つ目と5つ目のモザイクでは衣装や本の上に白く丸いものがありますよね。これって真珠を描いたということでしょうか。養殖技術がない(?)時代、真珠はどこの特産だったのかしら、お値段は、などとまたもや想像をふくらませています。
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miriyun at 2007-08-24 08:41
Fujikaさん、真珠のように白いですね。真珠だとしたらオマーンですね。日本の養殖真珠がミキモト・パールの名で知られる以前は、真珠といったらオマーンの天然真珠が主でした。
アラビア海の真珠とりが廃れたのは日本の養殖真珠が世界に広まったためです。世界と日本、いろんなところで繋がりがありますね!
当時はオマーン産だったのですね!色々教えて下さいましてありがとうございます!
今は廃れて・・・ということは、いまアラビア海に潜りに行くと、誰も採らない天然真珠がざっくざく・・・・ばかなことばかり言ってすみません。
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miriyun at 2007-08-25 01:19
Fujikaさん、真珠は古い時代からオマーン・U.A.E.カタル・で取れていたのですが、中心的だったのはドバイです。自分で前回打ち込みながら、アレッと思ったのです。なぜなら、オマーンは外海に面していて条件が良くないからです。ここで訂正します。オマーンでも取りましたが、中心だったのはドバイで、日本との競争に負けたのもドバイ・カタルの話です。慌てて書いて失礼しました。
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