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2007年 06月 10日

シールダール・マドラサ…ライオン紀行(10) 

 シルクロードの要衝であり、名だたるオアシス都市であるサマルカンドにはレギスタン広場と呼ばれる広場があり、一つ一つを見ても堂々たる構えのモスクが3つもコの字に並んで壮観な広場となっている。
 その中の シールダール・マドラサ(シェルドル・メドレセ)は上部左右にくっきりと絵がある。これはウズベクの領主ヤラングトゥシュ・バハトゥルが指示し、1636年に完成した。
シールダール・マドラサ…ライオン紀行(10) _c0067690_12313149.jpg
 
 モスクに偶像、とくに顔まであり、それも極めて濃い顔だちなのだ。これは日輪をあらわしているというが、それにしてもかなり東の地域の顔立ちのようでこれまで見てきたモスクとはあまりにも違う。実はブハラにも左右に鳳凰の絵・中央に太陽の顔が入っているナディール・ディヴァンベギ・マドラサがある。時代と支配者によっては具象もあったのだがこの二つほどくっきりと入れたのは他には聞いていない。とくに顔の大きさ・インパクトの強さではここ、シールダール・マドラサが圧倒している。

シールダール・マドラサ…ライオン紀行(10) _c0067690_10292247.jpg
 
 ところでシールダールはライオンの意味を持つという。しかし、この鹿を追う動物にはトラ縞のようにも見える文様がある。
  
    
これはライオンなのか、トラなのか?

☆ライオン像を追っていると、気になるのは【どこで実像から想像の動物になってしまうか】であるが、一般に言われる中国からではなく、実はこの中央アジアでもう充分あやしいのだ。

 アフリカライオンでも・インドライオンでも縞模様はない。この縞はどちらかというとトラに近く、この中央アジアではトラのほうを知っていたのだろう。

◆そこで、次のような仮説が考えられる。

1.王の権威を表すには、古代からライオン像だ。そこで想像力ででライオンを描いた。

2.力あるものとして、トラはもちろん、ライオンも伝わった文化で承知している。だからこそ、強さを表すために両者を合体させた。


◆では、まず中央アジアの人々はトラを知っていたのだろうか。
 今はほとんど絶滅してしまったカスピトラが中央アジアのとくにカスピ海周辺部にいたという。すると少なくともトラを知っていたことになる。そしてライオンの生息地ではなかった。

このとき建築した民族がシールダールといっていたならこれでライオンだと信じていたことになる。そうするとトラではなくてライオンであると信じさせるものがあったはずである。それは何なのだろう。

 それを探ってみよう。
        ↓    
○顔はやや細いがトラに近い。尾はライオンのような房になっていないからトラ?しかしかなり細いのでヒョウのイメージもちらほら。

○また、シマ模様といったらトラだが、スマトラトラやベンガルトラ・アムールトラはシマ模様が背中から腹まで30~50cmはありそうな長いシマ模様が特色だ。

 ところがこの絵のシマ模様は短い。そして、カスピトラの腹部のあたりのシマは他のトラに比べて短い。

シールダール・マドラサ…ライオン紀行(10) _c0067690_1375894.jpg


○最後にたてがみだが、これはふさふさくるくるしたライオンのたてがみを付けてある。カスピトラだってごく短いたてがみがあったというが絵に表すほどの長さはない。

したがって、カスピトラの身体にライオンのたてがみを付けて合体させ、これをライオンと呼んだのではないだろうか・・・。

≪追記≫
トラでなく、ヒョウにも見えるというご意見をいただいた。実はトラ説に確かな証拠があるわけではない。
 実はこの動物絵の中で白い斑点が気になっていた。もしやヒョウかチーターの可能性もありかと思っているところだったので、これを機会に第3の仮説として考えていたのを提示しよう。。
③ トラの顔、ライオンのたてがみ、トラのシマとヒョウ・チーターの斑点を持つ3動物合体

・・・古代より人々は、キメイラのようにいくつかの動物・鳥の翼を合体させてきた。スフィンクスやケンタウロスのように人間と動物も合体させてきた。
 ならば、この3動物の合体もありうる。
今後ともこの課題に興味を持ち続けていこうと思っている。皆さんのご感想・ご意見も楽しみにしながら・・・。
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ご来訪ありがとうございます。ぜひ一言でもコメントのこしてくださるととっても嬉しいです。


by miriyun | 2007-06-10 10:36 | 文様の伝播 | Comments(8)
Commented by ぺいとん at 2007-06-10 21:29 x
ライオンからは反れてしまっていますが娘はこれはチーターだと言い出すし、アジアにチーターがいたのかと疑問に思いました。 
するとムガールのアクバル大帝はチーターを飼っていたとか・・・ 
チーターの斑点が伸びたのでしょうか? 笑えましたが子供の想像力によって思わぬことも知りえました。
Commented by orientlibrary at 2007-06-10 22:56
このタイル、こういう視点で見たことありませんでした。というか、これだけのアップで見たことありませんでした。miriさん、これはどうやって!?!? 
ウルグベクマドラサの同レベルのところからでないと撮れませんよね。朝、行き(昇り)ました?? このアングル、タイルの本にもないですよ。ブハラの鳥はよく載っているんですが、、

で、アップで見てみると、トラ的な縞模様ですね。ライオンだと思っていましたが、、それにこれって、たてがみなんですか。私は日輪だと思っていました。ダブルイメージかな??
ライオンの前にいる、振り向いている動物も、なんだろうなあと気になってきました。シカ?? アップで見ると、発見がいろいろありますね!
Commented by miriyun at 2007-06-10 23:13
ぺいとんさん、動物文様についてお嬢さんも一緒に考えてくださったんですね。実は腹部のシマリ具合がライオン・トラのようにぼってりしていないことからヒョウやチーターのほうが近いかなと思ってはいました。各地の王家で飼いならして狩猟に利用するため所有していたといいますから関係はあります。。しかし、顔にはチーター独特の涙の流れたような黒いラインがないのでやはり顔はトラです。

 体のシマ模様については、トラにしては短すぎ、ヒョウやチーターにしては長すぎ、ということではっきりしません。ただし、実はこの絵には丸くて白い斑点がぽつぽつと見ることができるんです。これをもって、実はヒョウかチーターの斑点を持ち、トラの顔とシマ模様があり、ライオンのたてがみがあるという三種の動物合体説も考えられなくもないわけなんです。いろいろな可能性があるから、結論を急がず興味を持ち続けて生きたいと思っています。

 
Commented by miriyun at 2007-06-12 03:42
Orientさん、ここのところ、Exciteブログ不調なんですが、Orientさんのところは大丈夫ですか? 単なるうちのPCの不調のためかもしれませんが、ログインしにくいし、写真がうつらないことも・・・。ハードがいっぱい過ぎるかも・・・壊れないことをいのりつつ・・。

 ライオンの写真のことですが、普通に下から撮っていますよ~。望遠で200mmだったか。ズームでなく交換レンズだったもので重くて大変でしたがこういうのは撮りやすかったです。純正レンズで切り取るのでそんなにゆがみはないのです。あえて言えば2度分位ののゆがみがありました。普通ならそのまま使うところですが、たての線が気になったのでゆがみの修正をしたという訳なんです。白い動物も奇妙な顔ですし、日輪の顔・ブハラの鳳凰も含めて奇妙なものだらけです。そして、東からの風を感じます。
Commented by orientlibrary at 2007-06-12 09:15
え〜、miriさんのところもですか?? エキサイト、入りにくいし、こちらにおうかがいするのも、4回くらいチャレンジしてやっとだったんです。写真もクエスチョンマークが出るんですうよ、、。私もうちの回線のせいかと思ってました。メールも調子悪いので、、(これは改善傾向)。なんなんでしょう。。

写真、下から?! こんなまっすぐに撮れるんですか。びっくりしました。でも、私にはできない気が、、どうして撮れるんだろう???

東からの風、、本当にそうですよね。そのへんが私にとって、とても魅力的です。
Commented by miriyun at 2007-06-16 06:45
Orientさん、エキサイトまだまだ本調子ではないですが、まあ、動くようになりましたね。お返事遅くなりました。望遠レンズで撮った写真は思わぬ発見をもたらす楽しみがあります。視力がいいほうではないので、肉眼ではわからないことを後で気づくことがよくあります。
 ブハラ・ハーンの芸術ずっと気になっています。これからも調べていきたいです。
Commented by petapeta_adeliae at 2010-07-19 17:13
このライオン?!よく覚えています。
あまりに中途半端な上、背中の顔がまるでハナ肇を思い出せて
くれたので覚えていました(笑)
中途半端なので、中国・インドの影響で、中国における
麒麟のようなものかと自己解釈していました。
Commented by miriyun at 2010-07-22 01:32
adeliaeさん、このライオンは、古いペルシア王朝からの流れで使われていることがわかっているのですが、なかなかコノマドラサを作った王や国のことがわからないのでつながりを確かめられずにいるものなんです。
背後の顔も、この動物の顔もすごく印象的で気になりますね。


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