2007年 03月 21日
週刊ダイヤモンド誌の今週の表題は『驚異のイスラーム』である。 3月20日はイラク開戦4年ということで、アメリカのイラクへの派兵の是非や、イラクの平和への道などTV・雑誌・新聞などで論じられたり、エピソードが紹介されたりしている。イラク開戦の時・・・つまり、ブッシュ政権絶好調の時よりは、アメリカ国民とアメリカのメディアの変容した今では、日本のマス・メディアもずっと表現しやすいらしい。 昨夜書いたアフガニスタンの少女の話もそのイスラーム特集の一環として取り上げられたのだろう。こういう時期でなかったらローカルなニュースにもなったかどうか疑問だ。 さて、『驚異のイスラーム』とは、何を驚異といっているのかというと、簡単に言ってしまえばサウジなど湾岸諸国のオイル・マネーだ。経済・市場・企業についての雑誌であるから、伝統文化などは取り上げるはずもない。また、一昔前のオイルマネーを持つお金持ちの国に何を売り込むかという視点でもあるわけはない。 このブログでも取り上げてきたようにドバイの急速な発展、そして湾岸各国がアクティブに欧米・日本など世界の市場と企業に狙いをつける。遅ればせながらエジプトも新しい視点で活性化してきている。株の世界にも企業買収の世界にも、世界的金融貸付の世界にもイスラームの力が厳然たるものとして現れてきている。これらを、この雑誌で30ページ以上にわたって詳細に書き綴っているのだ。最新のグラフや数値があるのがさすが経済誌で、そこが嬉しい。保険についてなど追々取り上げてみるつもりだ。 今日はまず、その雑誌でも取り上げていたドバイの開発をグーグルを使って確認しよう。 ↑現地のフリー地図より引用 この地図の海岸に沿って3つのパームツリー埋め立て地とThe World と呼ばれる世界地図方にいくつもの島を作る埋立地を見てみよう。 西側から ↑西の端のThe Palm Jebel Ali 埋め立てができてきたところで家まではできていない。 ↑最初にできた埋立地 The Palm Jumeirah ↑上の埋立地の拡大図 高級別荘地。海のきれいな様子までわかる。 (↑グーグルアースより引用) ↑The World まだ造成中。ダイヤモンド誌によるともううめたてはほぼおわったそうだ。半分はもう売れている。ちなみに日本に当たる部分を買うことになっているのはアラブ人だ。 地図中の東の端のThe Palm Deiraはまだ埋め立ては少しで完成には当分かかる。 このような開発を始めた経緯については、以前に述べたとおりだが、これだけに驚いていてはいけない。湾岸諸国がこぞって、オイル切れの後を考えて、極めて大きな商売を始めたのだ。 ラクダキャラバンでわずかなものを命がけで運んだ昔日とはもう比較さえできない。 ◆Webでつながった世界で有り余る砂漠の土地や海を使って魅力あるショッピングセンターや住居・世界で唯一の7つ星ホテルを作った。 この狭い地域に世界の重機の3割が稼動しているというと大げさに思われるだろう。 しかし、昨年実際にシャルジャー~ドバイ間をバスやタクシーで移動しながら、都市と都市の間の何もない空間にびっしりと重機が並び、ビルを作り続けている様子に度肝を抜かれた。この建築ラッシュの様を見てきたのでこの数値を感覚的に信じてしまう。重機が結集して、24時間休みなく稼動し続けて毎日新しいビルやショッピングセンターを建設してドバイは発展し続ける。 週刊ダイヤモンドによると、上の地図の西の橋にあたるところに世界1の高さの高層タワー(1000メートル)を予定しているという。 Webでそれを知っても客が来なければ経済は動かない。ならば客をドバイに集める。すなわちエミレーツ航空の世界主要都市への乗り入れであり、旅の途中で息に降りて見学するにはお金がかかるが、帰りにドバイにとどまるのは無料という小さなことを見ても、空港そのものが人を呼び、買い物させるという意図が見えてくるのだ。 ◆ここで、エミレーツ航空の戦略の一つであるもの、おそらくはドバイの首長の戦略でもあるアラビアン・エアパスを紹介しよう。 最初は、旅をするものにとって何と便利なとしか思わなかったのだが、ドバイまで往復エミレーツのチケットを買う時に、同時にアラビアンエアパスを申し込むと中東各地への便が$50(ドーハ・マスカット)、$100(アレクサンドリア・クウェート・サナア・バハレーンなど)、$150(アンマン・ダマスカス・ベイルート・カイロ・テヘラン)で予約でき、その部分については後に変更できる場合もある。これは、どこか途中で旅が中断した時点ですべての格安チケットが無効になるのと異なり、大変扱いやすいものだ。(具体的にはエミレーツで要確認)。 例えばドバイ~ダマスカス~カイロ~ドバイなど、ドバイを基点に自由に組むことができる。食事も宗教はもちろん病人食まで完全に揃っているし、映像コンテンツは充実度NO.1である。別の航空会社の利用を考えていた人も、このアラビアン・エアパスの便利さに気づくとドバイ経由にしてもいいと思い始める。こうなると、ホテルは使う、買い物はする、いやでもお金が動く。 エミレーツ航空と開発を結びつけた戦略はお見事としか言いようがない。ただ残念なのは成田に乗り入れがないことと、マイレージなどのサービスに英文HPを見なければならない点だけである。 こんな手本を見せてしまったドバイ、エミレーツ(・・・カタール航空が関空に乗り入れ、今、サウジアラビアが成田就航に躍起になっているのがわかる。) ◆しかし、ドバイは追随を簡単には許さない勢いだ。ドバイ国際空港を現在の10倍の面積にし、滑走路は6本、年間旅客数1億2000万人の世界1の規模の空港となろうと計画している。
by miriyun
| 2007-03-21 14:56
| U.A.E.
|
Comments(6)
Commented
at 2007-03-21 22:11
x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented
by
miriyun at 2007-03-22 00:06
そうなんです。何気なく見てきたものが今にして思えばそれぞれパズルを埋めるようになっていたピースだということが見えてきます。オイルマネーがあってこそできることでしたが、日本がバブルの頃、莫大なお金で既存の古いホテルや土地、城、それに美術品を買いあさってきたことと比較するとビジョンのあるなしが見えてきます。砂漠に生まれながら新しい視点を持った首長によるこれまでにない形の発展と勢いを感じています。
0
Commented
by
orientlibrary at 2007-03-22 23:53
パームみたいな発想って日本では出てこないような気がします。もしも資金があっても、、とんでもないことを考えますよね。そして世界のお金持ちは、こういうとんでもないことを求めているんですよね。
私もイスラミックバンク(金融)は興味を持っていて、多少調べていたんですが、このところ遅れるな、とばかりにセミナーなどが開催されてビジネスマンが受講しているようです。でも、どんなところからでも、知らないとか無視よりもいいと思います。経済から文化への関心の動きもあると思うし、、湾岸諸国には問題も少なくないと思いますが、存在感を高めていくこのような動き、方向としては、興味を持っています。
Commented
by
miriyun at 2007-03-24 07:46
Orientさん、ドバイのシェイクのすごいところは欧米の後追いでない路線を若いときから考え続けていることではないでしょうか。知れば知るほど興味深く魅力ある人物です。
もうすでにバブル気味である湾岸の今後はどうなっていくのか世界がじっと見つめていますね。 日本の技術で食い込める部分はたくさんあるのですが、以前から進出している大手建設業や千代田などの会社はともかく、小さな新進の会社はイスラームとは?というところから勉強し始めてる・・・・それが今のイスラーム講座盛況につながっているのかもしれませんね。あとは定年退職の人たちの純粋な知識欲には頭が下がる思いです。
Commented
by
suusuu
at 2007-03-27 16:42
x
ドバイのシェイクを見ていると、「ある意味」アラブ男性の理想が見えるような気がしますね。HPとか興味深いですよね。
エミレーツ。便はいいしチケット代も安いから利用しやすいのですが、機材が小さいのが難ですよね・・・
Commented
by
miriyun at 2007-03-29 08:25
suusuuさん、かって世界が経験したことのないような勢いでの建築ラッシュで、今こうし書いている間にももう先に進行しているんだろうと思うのです。何しろ、グーグルに表された写真と現在が明らかに異なるほどというほどの変化・・・すごいものだと感嘆してしまいます。
|
アバウト
カレンダー
記事ランキング
タグ
高橋大輔・フィギュアスケート(345)
季節の風物・日本の光景(317) ★アラビア書道(153) ◆イスタンブル歴史紀行(142) UAE(ドバイ・アブダビ・シャルジャーなど)(139) シリア(86) イエメン(85) ◆料理とお菓子と(85) 本田孝一氏Web作品展(63) トルコ(63) ◆時の話題(62) Fuad Kouichi Honda(58) チュニジア(51) ◆ラクダ(50) マレーシア(49) ◆砂漠・砂漠化・砂・蜃気楼(47) イラン(ペルシア)(44) ヨルダン(43) サハラの情景(43) アラビア語のカリグラフィー(38) ペトラ遺跡(37) ◆各地のモスク・廟・メドレセ(35) 港ものがたり(34) 文様の話(植物文様・動物文様・組紐文様など)(34) 鳥(クジャク・ハト・カモメ・シラサギ・ダチョウなど)(32) ◆子どもたち(32) アラブ・チャリティー・バザー(30) イスラームの工芸(エブル・テズヒーブ・金彩・装丁)(29) オスマン帝国外伝(29) ◆砂漠の植物・その他の植物(28) ◆衣生活*民族衣装(27) ★ライオン紀行(27) 植物の話(葦・ザクロ・綿花・桑・オリーブ・ひまわりなど)(26) モザイク紀行(26) サラディン(26) 王ヶ頭ホテル・美ヶ原(25) ◆世界の家のつくり・材料(25) アル・マハ・デザート・リゾート(25) ◆人々と暮らし(24) 日食・月食・星・虹・幻日・ブロッケン現象・サンピラー(24) アブダビ(23) 絨毯・キリム(23) ウズベキスタン(サマルカンド・ブハラ・タシケントなど)(23) ◆国際協力(JICA・青年海外協力隊・NGO)(23) ◆象嵌(貴石・大理石・貝・金属など)(22) ◆ペトラ特集(22) クローズアップ人物(22) レバノン(21) ◆古代エジプト(21) タイル(21) ◆馬・牛・ロバ・ヘビ・家禽(21) 東京ジャーミー(モスク)(21) 桜(21) オリンピック開会式・他(20) ◆光の技・朝景・夕景(19) シェイク・ザーイド・モスク(19) ナツメヤシの話(19) 映画と史実・撮影地・エピソード(18) ◆ワディ・ラム特集(18) クイズ(18) ローマ帝国(17) 世界のフルーツの話(17) 水生植物(睡蓮・蓮など)(16) ◆レイクパレス(16) イマーム・モスク(16) 猛禽類(鷹・ハヤブサ・梟・鷲)・鷹狩(15) 東日本大震災(15) エジプト(14) ◆ミニアチュール(14) 航空写真(14) ◆飲み物(お茶・コーヒーなど)(14) カンボジア(14) デーツ(13) ミマール・スィナン(シナン)(13) サウジアラビア(12) アヤ・ソフィア(12) ◆ウマイヤドモスク特集(12) ◆トプカプ宮殿(11) トゥーラ・トゥグラー(11) アラビアン・オリックス(11) ブルジュ・ハリファ(11) 佐竹史料館(10) ペトロナスツインタワー(10) ◆結婚式・割礼式など(10) ◆古代文字(ヒエログリフ・楔形文字・ローマ・ナバテア文字他)(10) ◆水の話・水道橋・貯水池(10) ★刺繍・布・織りの世界(10) アラビア書道の年賀状・カード(10) ダマスカス(9) 熱気球の旅(9) 浴場・風呂の話・テルマエ・ハンマーム(9) ◆暦・古天文・科学(9) パピルスの話(9) ◆日本との関連(9) モスクのつくり(ドーム・天井・ミフラーブ・ミンバル・絨毯他)(8) プロカメラマンの話&写真展(8) ◆オアシスとその周辺(8) ミナレット(マナーラ)(8) 武士の文化(8) ◆タージ・マハルとアグラ城(8) 最新のコメント
お気に入りブログ
ヒンズー語ではありません。 中東イベント情報 アフガニスタン/パキスタ... イスラムアート紀行 はなももの別館 部族の絨毯と布 caff... Over the Blue アジアⅩのブログ 旅と絨毯とアフガニスタン トルコ~スパイシーライフ♪ にっと&かふぇ ギャラリーもっこ堂 アートなD1sk 前田画楽堂本舗 森の釣り人 アトリエサフラン トルコ... ツルカメ DAYS ソーニャの食べればご機嫌 - イスタンブル発 - ... わんわんぶー *********
・・・・・・・・・・
イスラームの自然や文化の写真はすべて自分の撮影したものです。ご利用になりたい方は非公開コメントにしてコメント欄に連絡用メアド等記入してください。 ▼△▼Ranking▼△▼ *応援ありがとうございます ◆It is prohibited to use the photograph, the image, and the illustration published in this blog without permission. ▼リンク集(エキサイト以外)▼ ◆こよみのページ ◆茉莉千日香 luntaの大きい旅小さい旅 いち子ばーばのお針箱Ⅱ 旅のミラクル 風と花を紡いで Kの庭 CROKO NOTE 地球散歩 エジプト大好きAnnyのひとりごと エジプト旅行カバン 中東ぶらぶら回想記 Asian Memories ETHNOMANIA 優しい世界の作り方。 のぶヒろぐ~漆喰について日々考える~ シンガポール熱帯植物だより+あるふぁ 実りのとき The Japanese Dubai ************* ☆日本アラビア書道協会(JACA) ☆アラビア書道とその周辺 ▼▼▼▼▼▼ ▲自己紹介▲ ☆写真・・・カメラを通すと新しい視点が与えられます。 ・TV番組や書籍に採用されています。(使用をご希望の方はコメント欄にご記入ください。) ☆文字・・・ヒエログリフ・楔形文字・マヤ数字・トンパなどにはじまった文字への思いは、アラビア書道に昇華しています。 ・アラビア書道 IRCICA国際競書大会 第4回・第5回・第6回いずれも Incentive Prizes 入選 ☆自然・・・イスラーム地域や日本の自然のささやきをひろってきます。ただし、最近はアジア・ヨーロッパなども含めて幅広く書いています。 ☆文化・・・いろいろな地域の文化比較や相互の関連を見ていきます。 ★これらが一つに重なって大きなライフワークになっています。 ☆また、スポーツの世界で稀有の芸術性を体現するフィギュアスケーター高橋大輔選手の魂の演技を見つめ応援しています。 ◆アクセス数(2006年5月ネームカード導入後のカウントで表記) 2017年 700万アクセスとなりました。 ご訪問ありがとうございます! ◆Welcome!! (2009.03.28より設置) ☆最新の来訪国等 ようこそ!(^_^)/ 183か国目マン島 182か国目セントルシア 181か国目マリ 180か国目バヌアツ 179か国目トンガ 178か国目バルバドス 177か国目キュラソー(オランダ領) 176か国目ジブラルタル 175か国目モーリタニア 174か国目ジャージー 173か国目セイシェル ▼▼▼▼▼▼ ◆こちらは自然と文化を一個人が自由に語るブログです。内容に関係のないコメントおよび販売を目的としたコメント、各種中傷、政治的発言等はこちらで削除させていただきますので、ご理解のほど、よろしくお願いします。 ブログパーツ
カテゴリ
全体 自然(砂漠・ラクダ・蜃気楼) アラビア書道 カリグラフィーを読もう サラディン紀行 Fuad Kouichi Honda ヨルダン イスラームの工芸 トルコ 絨毯・キリム シリア 東京ジャーミー(工芸) イラン(ペルシア) 日本の中のイスラーム 食べ物・飲み物 中東について レバノン イスラーム全般 写真館 中央アジア 数字・文字 チュニジア エジプト その他 インド U.A.E. 文様の伝播 マレーシア サウジアラビア 日本 動植物 カンボジア 空・太陽・月・星・雲 未分類 以前の記事
2023年 10月 2023年 09月 2023年 04月 2023年 03月 2022年 12月 2022年 11月 2022年 10月 2022年 08月 2022年 06月 2022年 05月 more... 検索
外部リンク
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||