2006年 01月 06日
イエメンの男たちは朝早くからよく働いている。アラブの国としては朝の動きが早いほうだろう。そしてしばらくすると市場で植物の束をよく吟味した上で購入する。 カートの束をかかえた男たちは満足そうにそれを抱えて、歩き出す。自分の家か、知り合いの家に集まってカートを楽しむ。午後は彼らのカートタイムなのだ。客間にあつまり、くつろぐ。カートの目的はそのくつろぎでありおしゃべりをすること・・・すなわち社交の一手段であるわけである。他のアラブ諸国では禁止されているが、イエメンでは合法であり、タバコやコーヒーのような嗜好品として認められているのだ。 カーとの枝から若い葉だけをむしりとり10枚20枚と口に含んで噛む。噛んでいるうちにしみだしてくる葉のエキスに軽い覚醒作用があるといわれる。このとき、噛みかすは飲んでしまったり、吐き出したりせずに片方の頬の内側にため込んでいく。 片方の頬にため込む葉は300~500枚と言われる。すると、最初はピンポン玉くらいに膨らみ始めた頬が時間とともに野球ボールのように膨れ上がっていき、果てはぷっくりとしたこぶとり爺さんとなってしまうのだ。これがイエメン中の男たちの習慣であり、毎日の楽しみであるわけだ。 ↑ 豆の乾物屋だが午後はもう売る気なし、カートを噛みながらゆったり読書 ↑ 毎日カート習慣で頬はゴム化してしまうのか!? (ジャンビーアベルト屋) 通常、昼の休みの後、そのままカートタイムになっていくが、店は3時には再開する。スークの商人や職人さんたちは、仕事をしながらでもカートを噛みつづけ、こぶとりじいさんだらけのイエメン特有の風景となっていくのだ。 ↑ カートの木見つけた! カートは4mほどの茜科の木で年に3回は収穫できる。だから段々畑でコーヒー栽培をしていた農家が高値のつくカート栽培に変わる傾向が続いている。新鮮な朝積みのものをトラック輸送で毎朝確実に運び、カート・スークで取引される。他のスークより熱気のある取引で、イエメン人のカートへの執着が感じられる。古くなると、覚醒作用もなくなってしまうので、新しいもの程よいとされる。品質や産地で値段は100リアル~数千リアルまで様々であるが、300~500リアルは毎日カート代として使っている。 残念ながら、彼らの嗜好品カートは、どんなに生産しても輸出品となることはなく、国を富ませるものとはなっていかない。外国人はこの習慣が仕事の非効率の元であるからなくすべきだと言っているが、イエメンの実態を見るととてもすぐにはなくなるとは思えない。 イエメン人は、この上なくカートタイムを愛している・・・
by miriyun
| 2006-01-06 06:19
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Comments(4)
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orientlibrary at 2006-01-06 22:54
あけましておめでとうございます。久々にお伺いしてみると、濃い内容の新着記事がたくさん。すごい充実した内容で素晴らしいですね。私なんかが見ていないところを見ていらっしゃるものが多く、他の方の視点というのは、とても興味深いです。理科系の視点というか、きちんと調べていらっしゃるのが素晴らしいです。イスラムについてはブログでもマイナーな話題と覚悟していましたが、同じ興味を持って、しかもきちんと伝えようとしていらっしゃる方があることに、とても励まされてきました。今年もどうぞよろしくお願いいたします!
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miriyun at 2006-01-07 09:34
ありがとうございます。・・・励ましの言葉をいただいて昨年も頑張れました。 今年もシリアからイエメン・イランまであちらこちらにとびながらの書き方ですが、よろしくお願いします。
Oriさまとの出会いがあり、たくさん教えていただくことがあり、とても嬉しかったです。これからもたびたびおじゃましまーす。 では、本年もどうぞよろしくお願いいたします。
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SuuSUu
at 2006-01-10 18:17
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イエメンの人たち、カート大好きですよね。
はっきり言って美味しくないですよね!?(少なくとも私には・・)これ食べた?(噛んだ?)あとはお腹が気持ち悪くて夜ゴハンは食べられませんでした。 歯のないおじいさんの為の携帯用カート裁断機があるのにもビックリしました。やっぱり社交の場に居るだけではなく参加しないとダメなんですね。。。
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miriyun at 2006-01-11 01:42
おいしいものではないし、コーヒーを飲むほどの効果しかないように思いました。SuuSuuさんもいろいろお試ししてますね。カート裁断機があるとは知りませんでした・・・そこまでしても参加したいという気持ちがすごいですね~。
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