高橋大輔×プロジェクションマッピング

1.スケートとプロジェクションマッピングのコラボの難しさ   
 先日のTV放映で、紹介された高橋大輔のスケートとプロジェクションマッピングのコラボについて、自分の記憶のためにもまとめてみる。

①短い準備期間
 プロジェクションマッピングとのコラボの話は2月8日、話を受けて、プロジェクトの手順を打ち合わせて2週間後、深夜のスケートリンクを借りて宮本賢二先生とスケートを組み立てていく。そのスケートの軌道を受け取った絵師の神田さおりさんが軌道に沿ってイメージ画を描き、その原画をもとにプロジェクション・マッピング会社PMAJの石多さんチームのみなさんが綿密にマッピングしていく。残された時間はわずかで、その原画から動きをつけた動画を作成していく。寝る間もない作業になったとのことだ。

 そして撮影されたのは3月2日。
この仕事を受けてから23日目だった。その間の打ち合わせや各部署の動き、それがうまく連動しないと番組の放映に間に合わない。3月2日に撮影でそのあとは日本TV側の編集作業があるのだから、余裕はまったくない。その間に、高橋大輔は選曲・テーマ・衣装の準備をして、プロジェクションマッピングのできるまでに練習をする。

②映像上で練習できるのか?
 マッピングがいつもリンクに投影してあって、幾日でもそこで練習できるのか。
そうであったら、あれだけの音感と動きの中での研ぎ澄まされた感覚を持つ人なので、光の動きに合わせることさえもしてしまうだろう。

 ところが、それはできないのだ!

機器を多数使うプロジェクトって、機器と多数の人員、そしてリンクの連続した占有が必要なのだ。
(自分でも、ずっと以前に演劇と映像のコラボとかいくつかのちょっとした映像に関わったこともある。砂粒ほどに小さな仕事であったが、それでも機器を使うアートがいかに時間と労力と費用がかかるかだけはわかる。)

 マッピングは投影する映像のクオリティと被写体の広さとで費用が大きく変わってくる。
撮影リンクは銀河アリーナ。60m×30mのフルリンク。とんでもない広さである。そこにこれだけくっきりした映像を映し出すのにいったい何台のプロジェクターを使ったことだろう。

 普通ならフィギュアスケートの練習はリンクを借り、曲さえ持っていれば毎日練習できる。しかし、夜中にリンクを借りて、フルリンクに映写してやるなどというのは何度もやれることではなく、おそらくマッピングテストと撮影日など限られていたことだろう。

③光の動きの先をゆく難しさよ!! 
 3分間のSP並の作品なので、1日にそう何度もやれるわけではない。
 ふつう、3分間の新プログラムを滑るというのはその要素をこなし、音楽に合わせるだけでも大変なのだが、今回はマッピングの映像からずれないようにということも意識しなければならない。

 進む光のラインを追って滑るのなら高橋大輔ほどのスケーターには容易なことだろう。
ところが、こんなに光や色が氾濫する中で、光のラインのちょっと前を滑らなくてはならないのが、とくに難しかっただろう。
 今回の作品では。光の動きの先をゆく滑りをしなければならないのだ。
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 事前に、テンションが上がるとスピードを出し過ぎてしまうと言っていたが、それを気にしてスピードを抑えたところは光が先行してしまう。そのあと、あの一気に加速してその光の先へと滑って行ったが、やはり位置取りに苦労しているのがわかる。
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 映像が3分間目いっぱいに動き回る。
   スケーターは音楽に合わせつつ一つのスケート作品を滑る。     

 大輔さん、マーニーの撮影で経験があるから自分で作品のイメージを作り上げる助けにもなっただろう。
それにしても、今回のはリンクは広いし、 動きが速い!そして色が鮮やかで目がクラクラしそうだし、自分がどの位置にいるのかなんておそらくわからない。実際、手にiPhoneをもって確認しながら練習していた。
スケートの技術を駆使したステップやジャンプ・スピンとこなしながら、動くものどうしの中で、先を行く滑りをするのは難しい。
   いや~、難しすぎるだろう!  


④スタッフ70名、カメラ8台他集結した撮影日
 プロジェクションマッピングチームのでリンクへの映像の投影、
     日本TV側の撮影チームの撮影
        どれだけの機器がリンク脇に並ぶことか・・。
  『極限アート20選』の中で、紹介していたのはこの日集まったスタッフは70名、8台のカメラを駆使したという。これにマッピングチームの何台ものPCやプロジェクター・音響機器、そしておそら裏にはコードの山が加わる。これだけのプロジェクトを1日に結集してやる場面を想像するだけでトリハダものである。

 高橋チーム、マッピングチーム、神田さおりさん、TV局チームが一つになってアートをつくった。

 この日にかけるしかない厳しい状況のなか、高橋大輔は「決める!」と声にだし、実際やり遂げた。だって、彼は挑戦する人。宮本先生がふだんから、「ちょっと難しいことを入れて刺激するプログラムにしなければならないので振付ける方も緊張する。」とおっしゃっている。そして、高橋大輔は「難しい!」と言いつつ、何度もこけながら、しかし生き生きと練習する。そんな姿をいつも見てきたので、新たな挑戦が難しいことであるほどに静かに燃えていくのがわかる。

 PMAJの石多さんにとっても、生身の人間の動きともマッピングという挑戦、神田さんにとっても高橋大輔のスケートと連動する花の動きをイメージして描き、その原画を石多さんに渡してPCテクニックで動きのあるものにしてもらうという新しい試み、そして困難な滑りに挑戦した高橋大輔、それぞれの挑戦を一つに融合するTVクルー。
 それぞれにとって挑戦であり、それだけに現場は熱気がこもり、そして高橋大輔の滑りでこのプロジェクトが完結したとき、かかわった各関係者から感嘆の声がSNSを通じて発信されたのだった。
 その後、編集作業を経て、3月15日に放映された。


2.ステップの軌跡が、いのちの花を咲かせていく 

最初映し出した額縁の中での絵画がスケートによって描かれていく。
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このスプリット・ジャンプをきっかけに、額が銀の色を砕けさせて散っていく。


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これで、額縁という枠を一気にとびぬけフルリンク映像になる。

広いリンクがすべて花で埋め尽くされる。

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スピンをすると花びらがそのスピンのまわりに舞う。美しい場面だ。

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 常々、どの一瞬も美しいといわれる高橋大輔だが、アイスショーで、ライトを浴びたときの影もよく注目されている。どの場面でも体幹がしっかりして、危ういほどブレードを傾けながらもギリギリのところでバランスをとっている姿は写真家の絶好の被写体であり、影もその中に含まれる。

 あまりにも大きなリンクサイズの絵の中で、伸びる影が効果的だ。


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 高橋大輔のスケートへの情熱と花の絵のエネルギーが交錯し高め合う中で、
そのエネルギーがいったん鳥の翼に凝縮され、次に発散される。
ここの演出は、神田さんの鳥の発想と、ここで羽根が舞い、場面転換にしていくマッピングチームの仕事が秀逸だ。もちろん大輔さんが翼のかなめに位置どっていることが大事。

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滑りに合わせてあらわれてくる花はまるで花冠のようだ。

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 ノービスのスケーターとのコラボもよかった。この演出でとてもやさしさ・いとおしさがでていた。

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 (以上、画像は動画からのキャプチャなので画質が粗いが、実際は氷の透明感もあって震えそうに美しい)

 これまでも光を使って、若干のプロジェクション・マッピング状のものはフィギュアスケートでもエキシビジョンのオープニングなどに使われてきた。だが、今回のようにフルリンクを使ってのコラボした一つの作品としては初めての試みだろう。


動画 高橋大輔×プロジェクトマッピング
   動画主様、感謝です、とっても感謝です!
   動画はこちら

 いつもと変わらず、ステップの一部である構えのないジャンプに最初から最後までなめらかな滑りは極上。指先まで神経がいきとどき表情も付けていて、最後のポーズの時の笑顔はさすがだ。美しさはもちろんだが、更に心にあたたかいものが残った。

 映像としては高橋大輔にピントが合わせ切れていないのが残念だった(マーニーは、監督が自分の描いたマーニーでなく高橋さんを中心にきれいに撮ってと撮影隊に指示を出していたそうで、見事な映像になっていた)。やはり、映像というものは何を的にするのか絞らなくてはいけない。また、せっかく振付に、額縁を出現させるきっかけとなるボーリングのように右腕を前に押し出す動きがあったのだが、演出としてかもしれないがスポットライトが暗くてよく見えないなど、照明も難しかったようだ。

 でも、このフルリンクサイズの映像は、やはりど迫力。
まだまだ使わなかった貴重映像があったなら、是非見てみたい。
(日テレさん、フル映像+制作過程でDVD発売してくれたら買いますよ!)


3.このプロジェクト依頼から見えるもの
 今回の『世界!極限アーティストBEST20』を見た中で、大きなアートとしてつくったのは2つ。大泉洋さんの根気と役者魂の「タイムラプス作品」、そして、日本のアーティストとしての全力参加で作り上げたのはこの「高橋大輔×プロジェクションマッピング」であり、この番組の目玉でもあった。
 こんな大きな完成してみなければ出来がわからないプロジェクトは、演者によほどの信頼がないとできない。
 だからこその高橋大輔なのだろう。また、マーニーをみてイメージしたプロジェクトだったのではないだろうかとも思う。

~~~☆~~~☆~~~ 
◆高橋大輔の仕事の選びようがいつも優れている。そして引き受けたらニコニコしながらも真剣な取り組みでやり遂げてさっと去る。しかし、あとでそれを見たものは(聞いたものは)、その印象がいつまでも残り、また何らかの形で魅せてほしいと思ってしまう(自分の頭の中はいまだにXmasで、耳には星の王子さまが住んでいる。さらに眼窩には滑りで花を咲かせていく姿が住みつくことになりそうだ)。

 高橋大輔は、いつもそんな仕事ぶりだ。

今回も撮影完了で、フジTVの仕事も対談もして、すぐに次の仕事を目指して、さっと渡米してしまった。
(次はTBSの密着 in NY 3/28放映) 


 仕事のキレが鮮やかなり・・・。
    ステップの中での身体のキレと重なるね~!


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by miriyun | 2016-03-19 10:47 | Comments(2)
Commented by shuklm at 2016-03-20 21:44
うわ~~採録有難うございます~~!!
眼福眼福。幸福感再生!!ウレシイです!!
Commented by miriyun at 2016-03-24 05:50
shuklmさん、いい滑りですよね~。
そして、新しいものに挑戦していく姿勢がたまらないです。


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