2014年 08月 16日
王者の印 シリア国立博物館には、ラピスラズリの至宝がある。 写真はすべて『シリア国立博物館』講談社1979年から引用 金を伸ばして渦巻き状にする。これは金の特性を知った、古代の人々が加工しやすい金を双渦文にして、その間に当時貴重な多彩な色の貴石をあしらった、見事な装身具である。 今、伝説の地であったり、運ばれてくるまでに何か月もの困難な旅をして来て初めてたどり着くものであった。だから、装身具は単に女性の胸元を飾るというものではなくて、支配者が被支配者に対して富と権力の違いを見せつける重要な要素の一つだったのだ。 このネックレスも、金の間にメノウにラピスラズリ・トルコ石などを集めた上の見事な装飾品であり、おそらく古代において、よほどの支配階級でないと身につけられなかったのではないだろうか。 そして、その中心にラピスラズリが置かれていることに注目したい。 ラピスラズリのブレスレット マリ遺跡から発掘された。金を打ち延ばしてから球形にし、そこに筋を刻んでいる。飾りの中心はやはりラピスラズリである。古代においてはラピスラズリは金以上に希少価値のある宝石にあたるものだった。 ◆シリアの東部にマリ遺跡(テル・ハリリ)がある。B.C.2900年(今から約5000年前)ごろ、メソポタミアの交易の要としてマリ王国が繁栄した。1933年からフランス隊によってマリ遺跡は発掘が続き、マリ王国は川を挟んで作られた円形都市国家だったことがわかってきている。 ここでは上記のようなラピスラズリを含んだ装飾品が多く発掘されている。 中でもシュメール人のウル王朝のメスアンネパダ王がマリ王国に贈った宝物がある。 その中でもシュメール神話上の伝説の生き物、ライオンの頭部に鷲の翼をもったアンズーが興味深い。 アンズーの顔はまさにライオン、身体や翼はラピスラズリでできている。翼をあらわす文様が刻みつけられている。そして尾がまた金であり、青に金が引き立ち、印象的な装飾品である。 アンズーは12.8cmもの大きさがあるが、頭と肩口と尾のあたりに合計6個の穴があけられており、後ろから皮ひもなどを通して首から下げたものと思われる。 このように青いラピスラズリは、どこでも貴重なものとして流通したのだが、産地は極めて限定されていた。それは昔も今も変わらず、アフガニスタンなのであり、他では上質のラピスラズリは採れないのだった。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ◆回想 ダマスカスのシリア国立博物館は優れた収蔵品が展示され、きちんと調べ終わったものは丁寧に保管・展示されていた。じっくりと見たらどれだけの時間が必要かと思ってしまうほど、すばらしい収蔵品を持っている。 平和な時代においても全くその整理が間に合わず、展示品に名前や時代をつけるのも追いつかないような感じだった。説明文がアラビア語かフランス語しかないものも多く、まだまだ整理は何十年もかけてやっていくのかと思ってみていた。写真撮影は認められていなかったので、素晴らしいメソポタミア時代やローマやパルミラやイスラム時代の文物がゴロゴロと言いたくなるくらいあったが、覚えているものが少ない。 ただ、この博物館の広い庭には鳥の造形と噴水のある池があり、緑豊かな木々の間でローマ帝国やパルミラの遺跡の彫像や円柱の一部がそこかしこにおかれ、穏やかな時が静かに流れていた。 最後にシリアに行ったのはもうだいぶ前だ。街に出れば穏やかな人々がのんびりと歩き、質問をすれば大勢で何とかしてやろうと助けてくれる。人が暖かく、親切が当たり前の国だった。 このシリア内戦で人々が難民となって他国へのがれ、残った人も困難を極めている。 世界各国からの外国人傭兵も入り込んでいる状態では、文化を守る学者たちもいかんともしがたい状況かもしれない。傭兵がその国の文化を大事にするとは到底思えない。 何が起きているのかもよくわからないシリア・・・ 大国と国連ともうどこが要なのかさえ分からなくなってきた。 わかるのは、正義が通らないことを認めてしまうと連鎖していってしまうということ。 国際社会に信義はあるのか、あまりにもいいろいろな要因が多すぎて・・、 ・・・シリアのことを書きだすとまとめられない・・・
by miriyun
| 2014-08-16 14:33
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Comments(6)
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petapeta_adeliae at 2014-08-17 17:38
2つ目なんてこの何年かでしている人をよく見ます。
流行は廻るって云うものかしら^^ 当時の金って24金ですよね?だと加工し易いですね。 シリア国立博物館に行っていますが、記憶にありません。(恥)
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miriyun at 2014-08-18 12:26
ソーニャさん、古代の装飾品の中には、
造詣や色合いが永遠の造形美をあらわして、いつになってもいいと思えるものが少なくありません。ここでも上のも華やかで美しい色合いだと思います。 シリアの博物館は収蔵品の大里写真に残せないことで、私も外にあった写真OKのもの以外は鮮明な記憶がないのです。とても残念ですよね。
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miriyun at 2014-08-19 11:20
Luntaさん、シリアがもともと怖い国であったような印象を持っている人が増えてしまっているようで残念です。
こんなにも傷ついた後、あの国の人々の温かさが元に戻れるのか、 いや、その前に見通しが立たない状況があまりにも不安で、 表現していくことが出来ないです。
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yoko
at 2014-08-20 19:19
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初のコメントです。
高橋選手の記事でこちらを発見して以来よくお邪魔してずっとロム専でありました。 シリア・・・以前ツアーでパルミラへ行った時のことが忘れられません。 夕食後の自由時間に同室の女性と二人でホテルから徒歩10分の遺跡へ行き、月の下であの場の空気を満喫していました。 夜の8時すぎ、付近には多くのツアー客もいるとはいえ、私がいた場所は他に外国人もいないところでしたがゆっくりとできたいい思い出があります。(10代の地元男子にナンパされかけたとか、カメラのシャッターが降りず無理やり押したら帰国後不思議な写真ができあがったとかは余談) 遠い日本から時々思い出しては早く平穏が戻りますようにと祈ることしかできません。 ラピスラズリの語源について、勉強になりました。また、アフガン産出だったことも驚きました。素敵な記事をありがとうございます!
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miriyun at 2014-08-22 02:12
yokoさん、初コメントをありがとうございます。
高橋大輔選手のファンで文化面を見ていただくことも増えてきてうれしいです! パルミラの夜、独特ですよね。 国の繁栄と興亡をまざまざと考えさせる残された列柱の佇まいとそれを照らす月と・・・歴史の中へ入り込んでいってしまいそうになる光景ですよね。 一端戦乱がおきてしまうと、関係ない戦争屋が集まってきてしまうのも怖いところです。 |
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