ラピスラズリの話1・・古代文明における金とラピスラズリ

昔から王家の使う石とされ、金と合わせると美術的にも素晴らしい貴石がある。
ラピスラズリである。
1.メソポタミア文明とラピスラズリ
◆古代メソポタミア、シュメールの時代に高度な文明があった。紀元前2500年ほどのころに、つくられてウルのスタンダードには人々が象嵌で表わされていた。
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その背景にラピスラズリがモザイク状に嵌め込まれていた。
 何とも贅沢なのだが、このころからラピスラズリはアフガニスタンから運ばれてくる岩であり、貴重な貴石で、更にアフリカのエジプトに入ると金よりも価値があるとされた。

◆紀元前5世紀、アケメネス朝のころのシルクロードの多くの国を睥睨したダリウスのころ、宮殿跡にはこのようなペグが発掘された。
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象嵌細工としてこのブログで既出だが、再度材料として確認。
青のラピスラズリという宝石級の石そのものをペグとしてつくっている。びっしりと楔形文字が金で嵌め込まれている。テヘラン考古学博物館の展示品だが、これの隣にこれと組み合わせになる一品が飾られていた。それを撮ってこなかったためにいまだこれがどのように使われたのか謎のまま10年にもなろうとしている。
ただ、素人目にもわかるのは非常に丁寧な仕事をしているものだ。

 2500年を経ても金と青の対比がくっきりとして美しい。展示がこの形で置かれていたが、読むには文字の向きが逆である)


2.ツタンカーメンの持ち物とラピスラズリ
 ツタンカーメン王は若くして亡くなった青年王であり、さほど権力をふるったわけではない。しかし、そのほとんど盗掘されていない墓には、副葬品が数えきれないほどあり、身近に身に着けるものの中にはラピスラズリも使われている。
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ツタンカーメン少年王の胸飾りだ。
重かっただろうに王の権威を示す時にはこのような飾りを身に着ける。
ファルコンはやはり神の領域であり、脚先には永遠の命を携えている。
大きく広げた翼や胸・顔の基盤や輪郭は黄金である。
赤は水晶の一種だという。そして空色はターコイズのトルコ石、濃い青はラピスラズリである。
顔のところがわかりやすい。初めてエジプトを訪れたときに装飾関係で知った一番が、このラピスラズリの青と金の組み合わせが非常に効果的であることだった。それ以来ラピスラズリとはどんなものか気になっていたのだ。

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王の腕飾り。いわゆるブレスレット。

砂漠のスカラベという虫を太陽神となぞらえていたので、王の持ち物にスカラベは欠かせない。
太陽を運ぶスカラベんぽ両脇には王としての地位を表すヘビが描かれる。

上段の腕飾りには名が浮き彫りになっている。
●左側のカルトゥーシュ(王名枠)の中に太陽にスカラベに三本の線と半円があるが、これで「ネブ・ケペルゥ・ラー」とあり、上下エジプトの王としての名前で尊称みたいなものだ。
●右端のカルトゥーシュの中には「アメン・トゥト・アンク、テーベの支配者」とある。アメン・トゥトアンクが私たちが普通呼ぶところの名前にあたり、読む順としてはトゥト・アンク・アメンだが、アメンは当時のエジプトの神の名であったので一番上においている。このトゥト・アンク・アメンをラテン表記してみると、なぜ私たちが今の呼び方をしているのかが分かってくる。
        トゥト・アンク・アメン
             ↓
        tutankamen
             ↓
        ツタンカーメン

ということで、文字のある文明はそれが3000年前だろうと4000年前だろうと特定できるのがいい。

さて、本題のラピスラズリに戻ろう。金よりも高価であったラピスラズリは主にスカラベに用いられている。貴重であるからこそ、太陽の化身であるこの虫に使ったのだろう。
 
ツタンカーメンといえば黄金のマスクや何重もの棺。
その黄金のマスクはそれこそ大量の金を使っているのだが、目のアイラインの青はラピスラズリを粉砕してそれを膠で固めてできているという。


伝説の宝石と硬度

 現代では宝石は希少価値の他に簡単に傷つかない固さも求められる。そのため、近代になってからダイヤモンドを硬度10とする基準で宝石に硬度という新しい基準も決まってきている。
 その硬度でいうと、昔から珍重されてきた真珠は硬度3くらいで弱いものであるのである。また古来から王の持ち物とされたラピスラズリは産地はごく少なく希少価値はあるのだが、硬度5.5であるためやや低め。

 しかし、ラピスラズリはシュメール人の昔から新王国時代のエジプト、聖書時代も含めて、またシルクロード沿いの国々においても珍重されてきた伝説の宝石といってもよい。
 貴重であっただけに、きっちりと象嵌細工などに使われ、数千年の時を経てもこのように立派な姿でラピスラズリの宝物は残っているのだ。

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by miriyun | 2014-08-03 12:39 | Comments(6)
Commented by petapeta_adeliae at 2014-08-04 12:30
ラピスラズは高貴な色だとは思いますが、
これだけが使われた理由は加工し易い、当時金よりも高価だった
からなのでしょうか?
病弱だったツタンカーメンの首と腕にこんなに重い装飾品を
付けた分、寿命を縮めた原因の一部のような。。。
Commented by moccosan at 2014-08-05 09:32
ラピスラズリの青は永遠の!あこがれ。深遠な青ですね。ターコイズも好きですが。
Commented by Lunta at 2014-08-05 17:12 x
アケメネス朝のペグは小さなものでしょうか。テヘランの博物館でまったく気が付かず、残念。Miriyun さんのような注意力があればねえ。
正倉院のベルトもとても素敵ですね。バックルがついていると中央アジアのにおいがする。
Commented by miriyun at 2014-08-06 00:38
ソーニャさん、いつの時代も王は身に着ける冠や装飾品で
埋もれるかのようですね。
エジプトでは普段は身軽な格好で儀式や合う相手によって装飾品をつけたようです。
このようなものを身に着けないときでも
座っている椅子でさえ金をふんだんに使って豪奢さは十分出ていただろうと思えます。サンダルが金だというのは重すぎるので本当にはいていたのだろうかと心配してしまいますね。
Commented by miriyun at 2014-08-06 00:39
moccoさん、ラピスラズリの青は単一でなく色に変化があるところが好きです。また金や銀の模様が入るのが何ともきれいですね。
ターコイズもよく組み合わされていますね。
Commented by miriyun at 2014-08-06 02:34
Lunta さん、ペグはラピスラズリの色に惹かれて撮影してきたものです。
深い青に金の象嵌はとても美しくて惹かれました。
テヘラン考古学博物館は収蔵品も多いので展示替えもあるかもしれませんね。
大きさはドアノブと同じかやや大きめくらいだっと思います。


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