ソチのFS(2)・・・高橋大輔

1.大ちゃんが・・・
 ある放送で、今後のことを尋ねられて、世界選手権までは出ても、その先はまだ帰って休んで考えてみるけれど~、限界かなと微妙な言葉が出てきている。

 日刊スポーツの休養後復帰の可能性といったり、後進に託したしたとばかりに書くメディアもあり、全体に揺れている。そうなって初めて、引退について本気で近づいているのかもと感じてしまったら、止めどもなく落ち込んでいく自分を発見した。

2.これから
 迷える心で検証してみた。

◆今回の演技は引退しなければならないほどの演技なのだろうか。
否である。「高橋大輔」を単なる成績で測るのを良しとしないのだが、例え成績だけで見ても、初めてのオリンピックと世界選手権から這い上がってからこれまで、グランプリファイナルには出場し続けた。2013年は出場資格を取っていながら休場してしまったが、7回にわたって出場したのは史上最多であり、グランプリシリーズを通してずっと世界6位以内だったから出場できているのだ。そしてオリンピックは8位・3位・6位と後退したが、怪我を押して出ていて6位に入っているってすごいよね。
 世界選手権も1位から6位までで納まっている。

 もちろん彼の実力からすれば金メダル狙いでいるからダメだった~と大きな反省の言葉が出てくるのだが、
実は本人が惨敗と言っているときでも世界の5位・6位なのだ。2005-2006年のシーズンからで8位だったトリノオリンピックから世界選手権でもその順位より下がったことなどないのだ。
 
海外勢からすれば人もうらやむような安定順位なのだ。

今回のソチオリンピックの男子は完璧な演技はなく、熾烈な争いだった。その中での入賞だった。それ大輔さんは自分の実力だからという。
でも膝さえよかったら台のり大輔さんを容易に想像できる。

3.演技そのものを振り返る
 
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本来ジャッジ席が正面であり、カメラもジャッジからの目線を中心に撮影するものなのに、今回は正面がない。だから、大ちゃんの目線が正面にピシッと決まるところが全く入らない。他の選手の演技でもそうだが、アートの国としては残念な撮影であった。たしか、グランプリファイナルをここでやったときはそんなことはなかったはずだが・・・。

 仕方がないので、本来見えない方角からの姿を拾ってみた。

◆カム トゥギャザーのステップ

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身体をひねりながらかなり高く跳んでいる。これが変幻自在な高橋大輔のステップの真髄だ。
何気無く音楽に溶け込んでいるのでわかりにくいが、手足が別に動くというだけでない。
誰もが行う横移動に対しての縦への弾むような動きが音にピタリと合うので目にも快感なのだ。

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前傾姿勢でしかも背筋は綺麗にのびている。しかも足元はなんとも深いエッジ。
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手首のかえしだけとっても音をとっている。
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この辺のステップもまぶたに焼き付けられた。
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◆運命の扉を叩く
いつもすごいなと思っていた運命の扉、手の方に気をとられていたが、今回は足元がさらに進歩。

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                           ↑コツ

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                            ↑ コツ
 このコツコツ音に合わせて右足ブレード先端で氷を打つ新しい試みがなんとも素晴らしく、コツコツと叩かれてそこからこの音が出ていると思わせるほどだ。観客席からも歓声があがった。
 1月に来日したローリー・ニコルによる振付なのではないだろうか。
なにしろ、どこでどう切り取っても一コマ事が美しく無駄がなく、そして滑らかにつながる。
音楽を全身で表わすことのできる唯一の人だ。

 見るほどに感動が押し寄せてくる。
    バンクーバーのようにメダルを取っていないにもかかわらず、何度も見ることができる美しい演技である。

 この人を世界のフィギュア界は失っていいのか?と思う。
ここまで音楽をあらわす演技は心地よく美しくフィギュアの神髄でもある。
もう出てこない逸材に、どんな形であれ、競技に残ってほしいと思う。

 ショーで活躍すればいいじゃないかという人もいる。しかし、大輔さん自身競技生活には意欲を持っていても、ショーを中心にという考えはないようでもあった。
 アリーナ席に観客席を入れ込んだ狭いリンクでは大輔さんの演技のスピード感とのびのびとした演技は見られない。わかりやすいのはin the garden of soulだろう。あの中でリンクを斜めにとてつもなく早くさまざまなステップを入れて突っ走るのは、ショーでは表せない。ブルースのストレートラインだって、ビートルズメドレーの最後のコレオシークエンスだって、60×30mのリンクあってこその演技なのだ。

 だから、大輔さんのスピードと激しい動きを組み合わせたキレのあるステップはジャパンオープンにでも出ない限りは見られないのだ。

◆バンクーバーへの歩み以来、全く休んでいない彼が、ルール変更とジャンプ競争の中で疲弊していったのは確かだ。
 バンクーバーの上位8人を振り返ってみよう。
 ライサチェクはずっと休養、競技復帰を目指しては怪我で欠場で今でも現役のはず。
 プルシェンコはナショナル大会とヨーロッパ選手権だけに的を絞って他は出ないで、ソチオリンピックを目指し、団体戦までは頑張ったが、個人戦は怪我で棄権、そして引退。
 ランビエールは2度目の引退(一度引退宣言をしてから復帰しているので)。
 パトリック・チャンは疲れたときは思い切り休養を取って英気を養った。
 ジョニー・ウィアは2010-2011シーズンの競技を休業して再構築すると宣言して休んでから復帰。ひざの故障で引退。
 織田信也はひざの故障で、2011年の全日本を欠場して次のシーズンまで治療に専念して復帰。2012は今一つだったが2013年になってジャンプも4回転を小気味よく跳ぶようになる。
 小塚は2012年に右足の腱鞘炎により全治1ヶ月となり、3か月後のB級大会から復帰した。

◆一流どころはほどほど休みを取ったり、身体の治療に専念していたのに、けがをしてグランプリファイナルを欠場するまで大ちゃんはずっと全力だった。
 体中悲鳴を上げているだろう。
練習も試合も、そしてフィギュア界の先輩としても団体戦のキャプテンとしても・・・。(そう、昨年の団体戦は脚が具合が悪くて無理と言っていたがスケート連盟からは出場のダメ出しが出たことも思い当たる。)
 やりだせば、エースとしての立場なりの動きを必死でするので、マスコミ対応にしろ演技にしろ、ほんとに休む間もない生活が続いていたのだ。

 実際のケガを知らない私たちが全治2週間なら何とかと思っていた怪我は実際は1か月安静を要するものだったらしい。三日ほどしか練習できないまま臨んだ全日本。

 今にして、全日本のときの歌子先生の「あとせめて1週間あれば」という言葉が胸に迫る。

 オリンピックに出場するためには何があろうと欠場できなかった全日本。そして決まってからも調整時間があまり取れなかったオリンピック。3年間の思いを込めたソチに向けてあまりにも過酷な状態での中、本当によく頑張って4回転以外の演技を美しくまとめてくれたと思う。アスリートとして確率が低くても4回転を跳び続けたとも思う。

 今聞けば、あまりにも過酷な状態でやってきた身体を抱えて、精神的にもギリギリのところで彼らしい表現で思いを込めて滑り、SP4位、総合6位入賞を果たし、世界の実力者の一端を示すことができたので、もう~と考えてしまうだろう。

 11月からの重く厳しい時を重ねてようやくときほぐされた笑顔。膝の具合もある。休めばよくなるのか、休んでももう4回転などという無理をしてはならないのかもしれない。
大輔さんが引退を望むなら、それでもかまわない。
どんな大輔さんにもファンはついていく。
でも、大輔さんがほんとにやりたいのはショーではなくて競技だと知っているから、ほんとにそれでいいの?とおもってしまった。

 メディアが次々と聞いてくると思うが、まだ決めないでもいいのではないだろうか。
世界選手権で様子を見てもいい。1年休んでからでもいい。休養して足が復調したらやってみたくなる、歌子先生も世界のスケーターの例を出して言っていた。

 インタビューに答えた「明日ゆっくり考えてみる。ただ、僕自身限界だと思うので・・・。」

 それはそうだ。
   今の大輔さんは確かに限界なのだ。
何事にも全力の人だから、今回の重圧を背負ったソチで限界までやってくれたことがひしひしとわかる。
そしてその重い役割を終えたばかりの大輔さんに今後のことを聞いたらこういいたくなってしまうのは当たり前だ。こんな時に聞くんじゃないと思ってしまった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~
 大輔さん、ぜひ残りのオリンピックを楽しんでください。楽しむと言ってもいつものように女子の応援に行ったりなんでしょうが、楽しんでください。
 貴方は世界に愛されし日本人です。
あなたに憧れ、あなたに触発された世界の選手たちが声をかけてくるでしょう。

 その中で生気を取り戻してください。
  それからチームとともに先を考えればいいと思うのです・・・。

  

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by miriyun | 2014-02-17 06:36 | Comments(8)
Commented by 谷間のゆり at 2014-02-17 19:39 x
競技後のインタヴューにはイライラしました。
私が感じていた事はmiriyunさんが十分に書いてくださっているので他に足す言葉は有りません。
只私が感じたのは、何時もより小さく見えた事、
体調が十分でないからかな?と思っていました。
でも、演技を終わった時の笑顔がとてもよかった。
Commented by tsurukame_ko at 2014-02-17 23:36
miriyunさん、ありがとうございます。
記事を読んで、わんわん泣いてしまいました。
あの美しい高橋大輔の演技を、もっともっと見ていたい。

だけど、膝がどんなにひどい状態だったのか、
その中で、できることすべてを注ぎ込んだのがあの演技で、、、。

今は休養が必要。と、吹っ切れたような笑顔で語る大ちゃんを見ると
何もいえなくなってしまうのです。
どんな結論にせよ、ただ高橋大輔選手の決断を支持します。
Commented by yumiyane at 2014-02-18 23:56
フリーの演技が終わって、ほっとした表情の笑顔の彼が
「終わった!」と言ったように見えたのは私だけだったのでしょうか。
解き放たれたような透明な笑顔がそこにありましたね。
Commented by 通りすがり at 2014-02-19 04:59 x
高橋大輔選手のことすごく詳しくかかれて
いますね。
フィギュアの選手は引退が早すぎますね。
なぜなんでしょう?
他のスポーツに比べても早すぎます。
フィギュアは完璧に近い演技を求められて
それが点数に出てくる。
だから体力の衰え、思うように身体が動かない=引退と思えてくるんでしょうか?
Commented by miriyun at 2014-03-02 12:35
谷間のゆりさん、体調が良くて自信たっぷりの時とはやはり見え方が違っていましたね。特にSPの時は私もそう感じました。
極度の緊張にあったと聞いています。
こんな時にどんな質問にもにこやかに応対していても積み重なって
苦しかっただろうなと思ってしまいます。
Commented by miriyun at 2014-03-02 12:49
tsurukame_koさん、解き放たれたような透明な笑顔・・・そうなんです。
あの笑顔を見たら、それまで背負っていたプレッシャーの大きく重いことが並大抵でなかったとわかります。
広いリンクであのすばらしい演技する姿を本人も見せたいでしょうし、ファンもいつまでも見ていたい・・・。
でもそんなすごいプレッシャーを負わせて、ひざを酷使してまでとは言えない。
体調を考えるとつらいですし、負けず嫌いの大輔さんとしては納得していないだろうし・・・、難しいですね。
Commented by miriyun at 2014-03-02 12:52
yumiyaneさん、ほんとに極度のプレッシャーを背負ったかれが、
無事に終わったとき、「おわった~」と言ったように、見えました。
ことばの正確さはどうかわかりませんが、気持ちとしてはそこまでがせいいっぱいだったのでしょう。
時間を経てこの後どうなっていくのかが気になるところです。
Commented by miriyun at 2014-03-02 12:56
通りすがりさん、フィギュアは美しさをも求めるものですが、スポーツとしてとくに軸足や脊椎にも影響を与える過酷なスポーツです。また、休むことによってジャンプの感覚もなかなか元に戻りにくいので多くの選手が休むことを恐れているかのようです。
特に日本の選手はあまり休まないですね。身体のメンテナンスと休養と
そして長期にわたってできるスポーツになっていってくれればと思います。


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