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2013年 08月 19日

パピルスは巻物・・・パピルスの話(9)

1.青々としたパピルス    
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青々とのびやかに育ったパピルス
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  茎は切り口でいえばふっくらした柔らかなカーブを持つが、
形としては丸でも四角でもなく、完全に三角形をしている。

 夏のパピルスは本当に勢いがあって緑の茎も美しい。


2.パピルスは光を通す 
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パピルス草を薄切りの短冊形に削いでそれをタテヨコに並べただけのパピルスは
繊維の熱いところ薄いところがあって、光を通す。つくりも透かして見れば一目瞭然なのだ。
と、ここまでは以前にも書いたことがある。

 ここに絵やヒエログリフをあらわしたものが古代エジプトの公文書や本・手紙になっている。
今回はちょっと異なる視点から
死者の書の中の王様がアヌビス神に手を引かれて審判の場に行くときの有名な場面がある。

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暑い夏場の服装は古代エジプト人も随分と風通しの良い薄手の透けるような服を着ていたらしい。
王のそういった服装がよくあらわされている。

その王の足である。

それをこのように日にすかしてみると、べったり平面的なエジプト絵が妙にセクシーに見えたり、涼しげであったり異なった見え方が出てくる。
 絵にした場合のパピルスの見方として、こんなのもありだろう。

3.巻物
エジプトの文書として、ヨーロッパでも使われた紙として、パピルスはヨーロッパをも席巻していた。紙が伝わるのは何とヨーロッパでは地中海沿岸で13世紀である。
 それまではパピルスと重くて高くて効率の悪い羊皮紙とに頼っていたのだ。


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 パピルスは通常このように置かれた。
本と違って場所をとる。重ねにくい。題名を書いたとしてもいっぺんには見渡せない。
それでもこんなに軽い素材で王国の歴史も経済も建築もこどものための算数から死後の世界まで全部記録できたのだからすごい。

さて、その保管をしていたところで最も規模が大きいのはエジプトのアレクサンドリアの図書館だ。



4.アレクサンドリア図書館
 アレクサンドリア図書館は、紀元前300年頃、プトレマイオス朝のファラオ、プトレマイオス1世によって建てられた。世界中の文献を収集することを目的として建設され、古代最大の図書館と言われる。

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                       ↑ 後世に書かれたアレクサンドリア図書館の巻物の様子 (Wikipediaより引用)

 所蔵文献はパピルスの巻物であった。図書館でも、王の文書室でも、パピルスは巻物として保管されていた。もともと長いうえに、断裁して綴じて、ページを毎回めくるというような動きには植物のパリパリしたような繊維は弱いのだ。

 歴代の王は文学、地理学、数学、天文学、医学などあらゆる分野の書物を様々な手段と財力を投じて収集し、ヘレニズム文化における学術研究にも大きな役割を果たした。その数は70万巻に及ぶとされた。
 このアレクサンドリア大図書館および併設のムセイオンなどの学術施設は当初からプトレマイオス朝の手厚い保護を受け、同王朝がクレオパトラの時に滅亡し、その後はローマ帝国による同様に手厚い保護のもとにあった。

 そして、本も弱いが植物であり、空間の空いたパピルスは火に弱い。虫害にも弱い。更に戦役で火災になることもあった。カエサルがエジプトへ侵攻した際に船からの延焼として焼失。しかし、ローマ帝国は他の地域でもせっせと図書館をつくっているのでわかるように書物を大事にし、復興させている。
 だが、保護をしてくれる権力者がいなくなってからが大変だった。4世紀末以降のキリスト教徒による継続的な攻撃である。5世紀には当時のキリスト教徒大司教の使嗾のもとにヒュパティアの虐殺などの蛮行を繰り返し、大図書館やムセイオンをも破壊しつくされ、ヘレニズム学術の貴重な成果の大半が失われたのだった。

◆ エジプトでは実に滅亡までの3000年余り文書をつくってきたのだから、想像できないくらいのパピルス文書があったのだ。昨年だったか、東京で何十かのパピルス文書の展示があって、その文書の細かさ、実用度、長持ち具合など素晴らしいものだと感じた。

 こんなパピルスが70万巻もあったら、どこまで古代エジプトや・ギリシアやアレクサンダー大王のことなどの詳細が分かったことか・・・。

 戦火や内乱・迫害は大量の文化遺産の完全消滅をもたらしてしまう。


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by miriyun | 2013-08-19 05:46 | Comments(0)


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