2011年 01月 23日
壁を這いあがる花々 花の列柱の回廊から一つの部屋に入る。礼拝堂に入るにしても女性用の部屋に入るにしても、だれもが通るこの部屋。 ↑ クリックすると大きくしてみることができます 花々がダイナミックに壁を這いあがる。イスラムの抽象の花が壁を埋め尽くすというものではない。勢いのある草は高く伸び、一番上にはオレンジの花を咲かせていた。蔓(つる)がなんという前触れもなくぷつんと切れたような絵柄もある。これまでのイスラームならば、先端はカーブする葉やらせん状の蔓になるところだ。それをあえて上昇する雰囲気のまま終わらしている。 壁は三分の一は白いままである。 これがイスラームの伝統の空間の埋め方と最も異なるところだろう。 反対側の壁もこのとおり。枝葉の動きがわかる。 そして、個々の花を見ると、 象嵌した石に厚みがある! とても厚みがあり、とび出しているので立体感や力強さが出ているのだった。 床に広がる花々 伸びて広がる床の文様、ここが靴で上がるところでなくてよかったと心から思う。 白地に白い花を象嵌する大胆さよ。 ここで朝顔におめにかかることになるとは思ってもみなかった。 それにしてもそれぞれに合う石をよくぞ組み合わせていったものだ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ この部屋は、花の列柱とは異なり、伝統の図柄ではなく、新しく写実を交えた花を自由に展開しているのが特徴だった。しかも床からそのまま壁に這い上がっていくような生命観のある展開である。壁のハイビスカス、床の朝顔などアラブ・ペルシア・トルコ美術でもあまり見なかったような花々も登場させている。(ハイビスカスはマレーシアでは使っていた) 同じテーマなので、色合いも蔓草の伸び方も共通性があり、そのため部屋全体がダイナミックな展開に見える。 違いは花の種類のほかに、象嵌の違いが見て取れる。 壁の花は厚みのある石を嵌め込み、さらにレリーフを入れた高肉象嵌である。床に広がる花は、象嵌した後で表面を白大理石ごと摺り切り、磨き、一面の絵となるように作っている。凹凸の全くない平象嵌なのだ。 実によく考えられた造りとなっている。
by miriyun
| 2011-01-23 12:24
| U.A.E.
|
Comments(14)
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orientlibrary at 2011-01-23 21:56
これはこの時代の湾岸の建物の工芸アートとして歴史に残りますね。
湾岸諸国のこと、よく知らないのですが、イスラム地域などの伝統的工芸技術を駆使してこんなにスッキリとモダンなものを作ったということ、その背景というか、精神性や嗜好を知りたくなってきました。 職人さんはどこの人たちでしょう。中東全域なのでしょうか。インドからパネルごと輸入とか?あ、こんなことばっかり、、 現代の工芸センスが息づくこのモスク、機会があればぜひ見てみたいです!!
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↓のシャンデリアも此のつる草の壁も、贅を尽くしているのですが、昔と違った華奢な感じが、一寸物足りなさを感じて仕舞います。此の技術のすごさが残されるのは好い事ですね。
日本では、昔の金持ちの様に才能に投資する人が少なくなった気がします。
素敵な床と壁ですね~。壁フェチにはたまりません。
モスクって保守的なようで建築などにもおもしろいものがあるし、こんなに自由なところもあるのを見るとうれしくなりますね。
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miriyun at 2011-01-24 10:19
orientさん、一番多かったのはインドの職人さんたちです。何といっても、これだけ象嵌があり、とくに貴石象嵌はインドですので、インドからは3000人もが働いたと聞いています。
各国の技術やモダンデザインも躊躇なく取り入れたという意味で画期的です。グローバルな考えで建築しているのでムスリム以外にも、見学可としています。 見学時間が決められているので、シリアのウマイヤドモスクほど開放されてはいませんが、湾岸では画期的なようです。技術的なものやデザインを楽しめるところなので是非ご覧になってください。
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petapeta_adeliae at 2011-01-24 12:36
壁の花は、完全な平面の床の花と違って半立体なんですね。
ザクロ、ハイビスカスと何かしら意味があると思うのですが、 朝顔はあまりにもはかない命ですよね。どんな意味あいで 使われているのか気になります。
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yokocan21 at 2011-01-24 20:14
高肉象嵌なんてのが、あるのですね~。素晴らしい技術です!やっぱり、インドの職人さんが大勢いらしたのですね。ここの装飾は、くねくね・ごちゃごちゃとしたアラブ風では全くないですよね。すっきり爽やか。
色んなお花が登場しますけれど、これら、ドバイゆかりのお花たちなんでしょうか。朝顔って、装飾にはあまり登場しないように思うんですけど。面白いです!
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miriyun at 2011-01-25 18:51
谷間のゆりさん、モスクの豪奢ということでは、イランにはそう言えるのが沢山あるのですが、それとは異なる新しい風をいれよう干しているのは分かります。隙間のない伝統の装飾と比べると確かに華奢と言えるところもありますね。
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miriyun at 2011-01-25 18:58
luntaさん、壁と床ってこんな風にデザインできるのかと目覚めさせられる気がします。これに限らず、この地域では斬新なアイデアをださないと採用されないという厳しさがあるので、デザイナーにとっては刺激的な湾岸地域ですね。
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miriyun at 2011-01-25 19:08
アデリーさん、そこが私も疑問だったのです。朝顔の品種改良や栽培に熱心なのは日本です。中東でもシリアで咲かせているよかいうのもきいたことがあります。でも水があるだけでなくほどほどのあつさでないとさかないのですよね。シリアは栽培可能でも湾岸の夏は無理ではないかとおもいます。不思議な世界です!
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miriyun at 2011-01-25 19:30
yokocanさん、朝顔がドバイやアブダビゆかりという事はありません。湾岸ではイメージできる花は、砂漠の花くらいなのです。一方、私たちのイメージする朝顔はうちわや手ぬぐいだったりで、ギャップが大きいですよね~!
シェイク・ザイード・モスクのシリーズを拝見してきましたが、本当に素晴らしいものを見せていただいていると感謝せずにはいられません。貴石象嵌で白い壁に蔦のように這っている蔓性の花々、不思議なパワーを発散しているような気がします。
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miriyun at 2011-01-26 07:59
madamkaseさん、シェイク・ザイード・モスクの存在は3年ほど前から気になっていたのですが、なかなか湾岸に行く機会がなくて思いをためていました。
見るべき所があり、職人さんが居並んで道具を扱う様子が想像される場所でした。なにしろ手をかけていない場所が見あたらないくらいでした。お楽しみいただけてうれしいです。
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asiax at 2011-01-29 23:41
派手さもなく、煌びやかさもないですが、でもすごいインパクトがある内装ですね。
植物の発する生命力を感じます。 イスラムというと幾何学模様の印象が強いのですが、このように植物をモチーフにすることもあるのですね。
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miriyun at 2011-01-30 00:55
asiaxさん、このように写実の植物文様を使うのは珍しいです。
幾何学文様と唐草がほとんどで、写実的なものは使われないことが多いのです。 かなり自由なデザインが盛んなトルコのでさ、デフォルメした植物でしたから、これを見て、とても驚いたわけなんです。 |
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