2009年 08月 06日
1.日本の都市で知られているのは? 中東の人と話していて、日本がどこにある国か確実に知っているのは一部の人である。そして都市となると東京を知っていればいいほうで、それ以上ほとんど出てこない。京都もさほど知られてはいない。ましてや大阪も横浜も知られていない。近年は主な都市として京都・大阪・横浜・札幌などが載るようになったが。それ以前から、よく知られている都市があることに意外に気づいていない。 それは広島だ。世界初の被爆した都市として、また核廃絶運動の旗手としての知名度である。 これは、教科書に載る都市名なのだ。 だから、原爆を落とされたかわいそうな国というイメージは強く、同情が強い。そしてまた、それを落とした国と最も仲がよいという現実に首をかしげている。 2.被爆者 被爆者に対する政府の譲歩がようやく実現した。この8月6日という日に合わせて、原爆症について広く救済を認定した。 戦争の最大の被害者でありながら、直接の医療・生活補助が受けられればいいほうで、長い、ほんとうに長いあいだ、全く受けられなかった人たちが今尚いるということに驚く。 そして、経済的救済の有無に関わらず、多くの人々に困惑と苦しみを与えたのが、ケロイドなどの表面に見える傷跡からくる周囲からの冷たい目、見えない放射線障害へのおびえた。当初100年は木も生えないだろうと言われたこの地で、差別が人々を苦しめ続けてきた。 当初、その差別に苦しみから隠そうとする人が多かった。その苦しさを心配を語ることのためらいそういったものに口を閉ざしてきた人が多かった。 しかし、この経験を忘れてはならない声にしなければならないということが起きてきた。 3.原爆の歌とその背景 1954年3月の第五福竜丸の被爆であった。アメリカによるビキニ環礁での水爆実験でのマグロ漁船の被爆であった。死の灰をあびて、重篤な状態になった乗組員は清水港へ戻ったのだった。生死の間をさまよう乗組員を見守ったが、久保山愛吉さんはそれから半年を経てなくなってしまった。 ◆日本は世界で唯一の原爆被爆国であり、二度とこんなことがあってはならないという気持ちがあったのに さらに水爆被爆被害国の一つになってしまったのである。 このときに専門家ではなかった浅田石二さんが作詞、木下航二さん作曲で、この年の7月に作られた「原爆を許すまじ」という歌がある。自分ではこの歌を知らなかったのだが、師にこの歌についての話を伺った。 1.ふるさとの街焼かれ 身よりの骨埋めし焼土(やけつち)に 今は白い花咲く ああ許すまじ原爆を 三度(みたび)許すまじ原爆を われらの街に 2.ふるさとの海荒れて 黒き雨喜びの日はなく 今は舟に人もなし ああ許すまじ原爆を 三度許すまじ原爆を われらの海に 3.ふるさとの空重く 黒き雲今日も大地おおい 今は空に陽もささず ああ許すまじ原爆を 三度許すまじ原爆を われらの空に 4.はらからの絶え間なき 労働に築きあぐ富と幸 今はすべてついえ去らん ああ許すまじ原爆を 三度許すまじ原爆を 世界の上に ◆ 9月にとうとうなくなられてしまった久保山無線長の葬儀に際して、静岡大の学生がこの「許すまじ原爆」を歌って送った・・・、その場面を思うだけで、万感胸にせまる。 4.核廃絶への思い 「先生、お父ちゃんを助けてください。 あの実験さえなかったら、 こんなことにはならなかったのに こんなおそろしい水爆は もう使わないことにきめてください」 (当時小学校3年だった娘の久保山みや子さん) 「原水爆の被害者は私をさいごにしてほしい・・・」 (久保山愛吉) 第五福龍丸被爆によって原水爆禁止運動が一気に燃え上がった。 日本人の無念な思いが次につながった。そしてとうとう広島で世界初の原水爆禁止世界大会が開かれることになったのだ。こうして核兵器廃絶への動きが始まり、非核三原則に始まり各地方都市議会による核廃絶宣言となっていったのだった。 ◆花の物語 また、100年は不毛の地になるだろうといわれた広島は、しばらくすると焼けた木から新芽が噴き、強い街路樹、夾竹桃は白い花を咲かせ出していた。 上の歌の3行目にある「白い花」というのは夾竹桃の白い花だという。 以前にペトラの夾竹桃の話で紹介したように、この木は極めて環境の変化に強い木なので暑く乾燥し排気ガス、そういったものにも負けることなく花を咲かす。またこの木は毒を持っているので家畜に食べあらされることもない。そういった木であるからこそ、負けずにいち早く花を咲かせるにいたったのだろう。 それらの植物の芽吹きも被爆地再生への応援歌になったわけである。 ◆人々が伝えるということ 自分の身体・仕事・子孫への影響などに不安を抱えながらも、 人々はこの原爆の実態を伝えなければとある人は語り部になり、ある人は原爆の絵を描き、詩を書き、人に伝えようとしている。 さらに、先日のオバマ大統領の「核兵器のない世界の平和と安全保障を追求する」というプラハ演説は世界の原水爆禁止への動きに勇気を与えた。 日本、そして広島・長崎は核兵器の恐ろしさを発信できる貴重な地であり(今でも、世界には被爆被害を握りつぶされてしまっている地域はある)、世界の中で堂々たる発言をし、警鐘を鳴らし続けるという役割をもっているのだ。 ◆7日のNHK番組より、 (アメリカ在住・島田さんのことば)を紹介しよう。 「戦争をしない、友達と仲良くしなければいけない、敵をつくって戦うことになるとこのようになる。 子どもたちに教えたい・・・」 人を憎しみ、自分達のことばかり考え、他を排斥する・・・こんなことではいけないと身体で感じ、叫びを上げてきた人々がいる。 ◆もう一度歌に戻って――― 「今は空に陽もささず」と絶望し嘆いても、 「労働に築きあぐ富と幸、今はすべてついえ去らん」と実生活での窮乏、 からだがうごかない、苦しみにのたうつそれでも働かなければ薬も手に入らない。 ・・・・そんな生活を長いこと助けられることがなかった人もいる。すでに土に戻った人もいる。 それでも、今生きている人にわずかなりといえど救済が一刻でも早く届き、小さな幸とならんことを祈らずにはいられない。 ⇒ ⇒応援クリックお願いします。
by miriyun
| 2009-08-06 23:38
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Comments(2)
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yumiyane at 2009-08-08 10:08
偶然ですがmiriyunさんと同じうたをブログに書いていました。共感です。
秋葉市長が最後に英語でメッセージを伝えられました。そこでオバマジョリティとおっしゃったのが残りました。次回はオバマさんだけでなく、イランの大統領もいらしてほしいです。
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miriyun at 2009-08-08 11:46
yumiyaneさん、思いは同じですね。
これだけが戦争被害ではないのだけれど8月6日・8日・9日はやはり厳粛な気持ちになります。 オバマさんの登場が、この世界の歴史の中でどう作用するのか、これからも見続けていきたいとおもっています。 |
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