鹿野苑(1)

1.鹿野苑(ろくやおん)

 釈迦の初めて説法をした土地を鹿野苑(ろくやおん)という。現在のサールナートである。サールナートという言葉も鹿たちがたくさんいたことによる命名であるという。
c0067690_11425178.jpg

 ここで釈迦は初めて説法をするのだが、初めて聞きに来たのが鹿であった為に、鹿は仏教の世界では特別な生き物になっている。もっとも釈迦はすべての生あるものを大切に思われたが・・・。

 初期の頃から鹿野苑を意識していたのであろうか。奈良公園には2008年の統計で1128頭の鹿が放し飼い状態で生息する。近年では怪我や病気に対する治療・保護のセンターとして鹿苑という場所も設定したという。。

2.鹿が紙を食べる!

 ここに住まう鹿たちは可愛いというよりもまず食欲の旺盛なることに驚かされる。
 
 鹿せんべいに頼る鹿たちが観光客が売店からせんべいを買うのを周辺部で待っていて、買ったと同時に数等の鹿に囲まれている。目の前にニュッと顔を突き出されて大きな鹿まで集まってくると、怖くなってしかせんべいに帯封がしてある状態で投げ出してしまう人さえいる。
c0067690_1145585.jpg

 せんべいを高く上げれば、頭を下げてこんにちはをする・・・などと教わってきても、実態はそんなものではなかった。数頭が集まったときに頭など下げていようものなら、あっという間に奪われてしまうのだろう。頭を下げる鹿など見なかった。

 まあ、鹿しかせんべいをやるのも大変になったことと驚きつつものんびりと楽しんでいた。

 すると、

なんだか私のバッグを引っ張るものがいる。

昼のさなかに、こんな人通りのあるところで、バッグをさわるのはだれだ~!

視線を後ろにやったら、何と鹿がいた。
バッグからわずかにはみ出した大仏殿で買ってきたばかりの資料が入った茶封筒にくらいついている。

c0067690_11461711.jpg

                                              ↑ 左下がかじられたところ
一瞬きょとんとして。山羊が紙を食べるのは見てきたが、
                               え~~?

 かろうじて、資料を奪い返したが、疑問が残った。

◆そういえば、鹿も草食で反芻(はんすう)動物だった。
                      ↓
 つまり胃袋のつくりが山羊や牛やラクダと同じ仲間なのだ。草食動物は植物の繊維を消化する酵素は持っているが、とてもかみ砕き消化するには時間がかかる。
 のんびり食べていたのでは肉食動物に狙われたり、厳しい自然に負けてしまったりする。そのためだろうか4つの胃袋があり、1つ目の胃袋にクサでも木でもトゲでもみんな飲み込んでしまう。のちに時間のあるとき、安全な場所に行ったときにゆっくり口の中に戻してモグモグと噛み、別の胃に送り込み消化するという。

 紙は本来、草木からできていた。加工してあっても草食でしかも丈夫な反芻できる胃を持つ場合、昔からの和紙を食べても草と同じだったから食べても問題がなかった。実は鹿せんべいの帯封も純粋な植物からできているのだろう。食べさせても大丈夫だということだ。

 ラクダの仲間なら仕方がない・・・資料はちょっとクシャッとなったが餌に見えたんだから仕方がない。
c0067690_1146534.jpg

c0067690_114788.jpg

 頼みもしないのに超接近してきた鹿君に、こちらもカメラで超接近してみた。
草食動物の目はやはりいい。目の周りの文様はロバといっしょではないか。そしてまつ毛の変形のような長い毛が生えていた。すごく長くて、眉毛というより触覚という感じだ。
 鹿よ!君の目は何を見て、何を感じているのだろうか?

◆それにしても、鹿は本来のクサを食べずに鹿せんべいばかりを狙っているのだろうか。そうだとしたら自然に反しているのではないかと心配してしまった。また、これまで見たことがないくらい、鹿せんべいに群がる様子が、食糧難の人間社会の未来図みたいで怖かった。

 紙を狙って食べていることも、鹿には植物だけで作った安全な紙と印刷インクや紙そのものに石油をもとにした合成物質が入っていても全く区別がつかない。先ほどのかじられた茶封筒にしても、東大寺という印刷文字は合成インクだろうし、材料は植物系のように思うが、糊は合成だろう。
 近年、持ち合わせたお菓子を上げたり包装の銀紙やビニル系のものまでいっしょに鹿にやってしまう人がいて、奈良では厳重にこれを戒めている。これによってたくさんの鹿が消化できなくなり死にいたるという。

 そういえば、人間の食べ物も見ただけでは何が入っているかわからない。昨年来言われている食の安全性、しばらくすると忘れ去られて、安全への取り組みが弱っているような気がする。

 鹿の餌あさり・・・新型インフルエンザ騒ぎで、大仏殿までスカスカにすいていたので観光客が少なく、せんべいをくれる率が低かったことが影響していそうだ。
 これも人間社会で言うならば、自国の都合で、援助してくれていた各国NGOがみな引き上げてしまったあとのような感じだ。

~~~~~~~~~~~~~~~
奈良公園の鹿は、人と共存している。
本来完全なる野生であるはずの動物が、人の生活と共にあるという世界にも類例のない存在であり、
それができる環境を古来から鹿のために整えてきた日本の社会が素晴らしいと思っていた。
ところが、食の問題と安全の問題を抱えていることを初めて知ったのだった。

                                    応援クリックお願いします。
                                                        人気ブログランキングへ
by miriyun | 2009-06-21 12:03 | Comments(4)
Commented by ぺいとん at 2009-06-21 19:49 x
中学生のとき追いかけられたので個人的にココの鹿は好きではありません。 
鹿せんべいを買って来てこっそり自宅で食べましたが非常にまずかったです。エサの一部だと確信いたしました。 
Commented by miriyun at 2009-06-23 02:42
ぺいとんさん、鹿に追いかけられるのって怖い思い出ですね。こういう体験をしたことが、苦手の原因になってしまうことがよくわかりました。
 鹿せんべい・・・味はないんですか。。かなり食べてみた人の確率は高いようです
  ところで、
Commented by mitraさんより転送 at 2009-07-05 23:15 x
鹿に「詰め寄られている」miriyunさんを想像したら、思わず噴出してしまいそうでした!まだ奈良公園に行ったことがないのです。しかし噂以上にアグレッシブな鹿くんたち。
そして、ドアップのサービスショットに感謝!いや~、素晴らしい!
つぶらな瞳と長いまつげはロバくん、ラクダ君に通じますね。
穏やかながらも引き込まれてしまいそうな深い目。
そうそう、イランでは「鹿の目」は女性に対する褒め言葉の一つで、やはりつぶらな瞳を指します。
Commented by miriyun at 2009-07-06 00:54
mitraさん、「鹿の目のような」と女性に言うことがあると聞いたことがあるのですが、やはりそうなんですか。アラブではアラビアオリックスを例えにも使うのですが似ていますね。
 奈良公園の鹿には今回は驚かされました。野生のはずなのに人になれすぎた感もありますね。目の前10cmまでコンパクトカメラを近づけても大丈夫なほどでした。
 今回はコメントが入れにくくたいへんご迷惑をおかけしました。


<< シルクロード渡来の6月の花 ナイルの眺め&アガー・ハーン >>